タイトルを見た瞬間、ひとつの言葉に多層の意味が重なっている気がして興奮した。表記が『
成る程』という漢字になっていると、ただの「なるほど(納得)」よりも「成る(なる)」と「程(ほど)」が合わさった、成長や変化のプロセスを強く意識させる。だから私はまずそれが作品のテーマ──人や世界が“成っていく”過程を描く曲だと直感する。
曲が挿入される場面を思い返すと、たいていキャラクターの気づきや覚悟が定まる瞬間に流れることが多い。『君の名は。』の劇中音楽のように、タイトルだけで場面の意味を増幅させる効果があるから、制作者は視覚と言葉の両方で聴衆の解釈を誘導したかったのだと思う。さらに、漢字表記はビジュアル面での印象も強く、サウンドトラックの並びに置かれたときに目を引くという実利的な理由もある。
最後に、登場人物の名前やエピソードとリンクしている可能性も見逃せない。たとえば作中に『成』や『程』という字が関わるキャラクターや地名があれば、二重の読ませ方でファンに小さな発見を提供する。つまり、感情の気づき、語感の妙、視覚的な美しさ──これらが重なって『成る程』という曲名が選ばれたと考えるのが自然に思える。聴き返すたびに新しい層が顔を覗かせる、好きなタイプのタイトルだ。