登場人物の選択が物語を引っ張る性質について話すと、まず背景にある『犠牲』の定義が重要だと感じる。『
サクリファイス』の主要キャラクターたちは、個人の信念、過去の喪失、集団の期待という三つの軸に挟まれながら動くことが多い。表面的には利害や目先の目的が動機に見えても、その奥底には誰かを守りたいという願いや、自分を赦したいという欲求が潜んでいる。
過去のトラウマがどう作用するかは人それぞれで、僕が注目しているのは記憶の扱い方だ。記憶が美化されれば復讐や名誉が動機となり、逆に抑圧されれば逃避や自己破壊へと向かう。社会構造も無視できない。権力関係や制度が「正しい犠牲」の枠組みを作り、それに反発する者は個人的な倫理と集団規範のせめぎ合いで葛藤する。
個人的には、動機は単一の原因で説明できない複合体だと捉えている。だからこそキャラクターに深みが出るし、物語に引き込まれるのだと思う。