声の色について語ると、真っ先に思い出すのがあの静かな間合いだ。
サーニャ・V・リトヴャクの日本語版を務めたのは松来未祐さんで、その低めで柔らかい語りはキャラクターの孤独さと観察者めいた冷静さを見事に表現している。
私は彼女の演技に何度も心を持っていかれた。普段は眠たげでぼんやりした印象を与える声色なのに、必要な瞬間には鋭く切り替わる。台詞のリズムに長めの沈黙を入れることで、キャラクターの考え事や警戒心を自然に伝える手法を多用していたと感じる。そうした“間”や息遣いが、
戦闘中の集中と普段のとぼけた佇まいの両方を同一人物として成立させていた。
作品全体、特に'ストライクウィッチーズ'の静かな場面では、松来さんの抑えた抒情性が背景音と相まって感情の余韻を残す。笑いどころではデッドパン気味に短く切り返すことでユーモアを浮き彫りにし、重い展開では胸に刺さる一言を残す。声そのものがキャラクターを立体化していた、そう感じさせる存在だった。