工具棚を眺めるとき、つい手に取りたくなるあの細長い道具――
千枚通し。クラフトを続けてきた中で、どれを選ぶかで作業の快適さや仕上がりが大きく変わることを何度も実感してきたので、経験から抑えておきたいポイントをまとめてみるよ。
まずは用途をはっきりさせること。布を扱うのか、革や厚紙、あるいは製本や木工作業で深く穴を開けたいのかで、選ぶべき形状と太さが変わる。薄手の布や繊細な紙には細い針状の千枚通しが向くし、革や厚手の生地には太めで強度のあるものが安心だ。僕の場合、縫い目を通す布用の作業は径の小さな鋭い先端、革の下穴や菱目打ち代わりに使うなら先端がやや太く丈夫なタイプを使い分けている。先端の形状も重要で、円錐形の鋭い先は素早く貫通する一方、ダイヤ型や平削りの先は糸や素材の引っかかりを抑えることができる。
次に素材と作り。芯が高炭素鋼で熱処理されているものは刃先の保持力が高く、研ぎ直しもしやすい。ただし錆びやすいのでメンテナンスを怠らないこと。ステンレスは防錆性に優れるが、硬さや研ぎやすさで劣ることがある。ハンドルにも注目してほしい。木製ハンドルは手に
なじみやすく温かみがあるけど、湿気に気をつける必要がある。プラスチックは軽くて手入れが楽、金属ハンドルは頑丈で耐久性は高いが滑りやすいこともある。グリップの形状は細身から太めまで様々で、握りやすさは指先の感覚に直結するから、できれば実際に握って確かめたい。
最後に実用的な点。先端の太さ(ミリ単位)や全長、芯の固さ、フェルール(金属の留め具)が付いているか、キャップやカバーで安全に保管できるかなどをチェックする。替え先の有無や研ぎ直しの方法も確認しておくと長く使える。値段はピンキリだが、高価だから良いとは限らない。自分の作業頻度や用途に合わせて、使い勝手の良い一本を見つけるのが一番だ。道具の違いで作業が楽しくなる瞬間を何度も味わったので、選ぶ時間も楽しんでほしい。