選んだのは、壊れるほどの愛~それでも、あなたを選ぶ

選んだのは、壊れるほどの愛~それでも、あなたを選ぶ

last update최신 업데이트 : 2025-09-30
에:  中岡 始참여
언어: Japanese
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結婚3年目。妻と訪れた温泉旅館―― その露天風呂で、瑛司は年下の男・蓮と出会う。 夜の湯けむりの中、名前も知らないまま、 心の隙間を埋め合うように身体を重ねた一夜。 それきりのはずだった。 けれど運命は、ふたりを再び“仕事相手”として再会させる。 家庭を捨て、蓮を選んだ瑛司。 愛されることに怯え、拒絶しながらも惹かれていく蓮。 何度もすれ違い、傷つけ合い、 それでも触れるたび、心が溶けていく。 ――これは、 壊れたままの心と身体が、 愛によって再び重なっていく物語。

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1화

1.同じ景色を見ない旅

午前十一時過ぎ、新幹線の車内で食べきれなかった駅弁の残りを包んだビニール袋を手に、東條瑛司は宿の送迎バスに乗り込んだ。白地に朱色のロゴが入った小さなバスは、もう十年以上変わらないデザインなのだろう。運転手の挨拶も、窓の外に広がる山並みも、どこか無機質に思えた。

隣に座る妻、美月は同じ景色を見ながら、スマートフォンを操作していた。静かな車内に、時折タッチパネルを叩く指の音が響く。

「ねえ、午後のチェックインまで、どこ回ろうか。インスタで見たこの庭園、紅葉が始まっててすごく綺麗みたい」

「そうだね」

そう返しながらも、瑛司の目は車窓に釘づけだった。色づき始めた山の斜面、所々に煙を上げる温泉街。自然が織りなす風景の中に、人の手が加わった温泉旅館の屋根が点々と続いている。けれどそのどれも、彼の心を動かすには至らなかった。

三十二歳。広告代理店のクリエイティブ部門で係長を務めている。年齢より若く見られることが多いが、最近は目の下のクマが抜けない。妻と結婚して三年目。交際期間を含めれば七年近くの関係だ。決して嫌いではないし、穏やかに過ごせる相手だとも思っている。ただ、それ以上が、ない。

宿に到着したのは昼を少し回った頃だった。ロビーに入ると、木の香りが鼻をくすぐった。新しい畳の縁が僅かに日に焼けていて、長く営まれてきた旅館の空気をまとっている。

「この感じ、すごく癒されるよね」

美月はにこやかに言ったが、その笑顔に対して、瑛司は「うん」とだけ頷いた。

チェックインの時間まで少しあると言われ、宿が用意してくれた喫茶室に案内された。ガラス越しに見える庭には、まだ青い葉の間に真っ赤なモミジがちらほら混じっていた。

「やっぱり、妊活のことちゃんと考えないとね。今月こそ、って気持ちで来てるんだし」

カップに注がれた焙じ茶から立ち上る香ばしい湯気の向こうで、美月がそう言った。

「うん…そうだね」

「タイミング法、病院で言われた通りにやれば、きっといけるって先生も言ってたし。ね?」

瑛司は曖昧に頷きながらも、焙じ茶の苦味ばかりが舌に残った。

それから午後は、予定通り庭園へと足を運んだ。地元の名士がかつて私邸として構えたという広大な日本庭園。池の中心には中島があり、その周囲をゆるやかな小径が囲んでいる。秋風に揺れる枝の音と、時折水面に落ちる葉の音が、静かに耳をくすぐった。

「ね、あの赤いの見て。きっとこっちのほうが綺麗に撮れるよ」

美月は嬉しそうにスマートフォンのカメラを向けていた。瑛司は少し離れた位置で、池に浮かぶ落ち葉をぼんやりと眺めていた。

カメラのシャッター音。遠くから聞こえる観光客の笑い声。どれもが、彼の鼓膜をすべるように通り抜けていく。なぜだろう、こういう場所に来ると、心が静まるどころかざわつく気がする。何かが足りない。ずっとそう感じていた。仕事でもない、愛でもない、漠然とした空白。

夕刻、宿に戻る頃には空が薄曇りになっていた。部屋に入ると、すでに布団が敷かれていて、窓の外には街灯の明かりがぽつぽつと灯っていた。川のせせらぎが微かに聞こえ、遠くで鳥が鳴いた。

「ちょっと、今日疲れたね」

浴衣に着替えながら美月が言うと、瑛司も形式的に「うん、歩いたからね」と返した。

「夕飯、楽しみ。この宿、料理がすごく評判いいんだって」

「そうなんだ」

その後の食事は、品数も多く、確かに美味しかった。出された前菜の盛り合わせには季節の山菜が添えられていたし、メインの地鶏の陶板焼きは香ばしく、舌にしっかりと味が残った。

それでも、瑛司の中には何も残らなかった。美月は料理ごとに「美味しいね」「この味、真似できないかも」などと感想を述べていたが、彼は適当に相槌を打つだけだった。美味いかまずいかではなく、そもそも「味わう」という行為そのものに、自分の感覚が繋がっていない気がした。

食後、美月は風呂に入ると言って浴場へ向かった。瑛司は部屋に一人残され、窓際の座椅子に腰を下ろした。机の上には茶菓子と緑茶が用意されていたが、手を伸ばす気にはなれなかった。

ガラス越しに外を眺める。月は出ておらず、雲が厚く流れていた。川のせせらぎは相変わらず、単調なリズムで続いている。

「何してるんだろうな…」

呟いてから、瑛司はその言葉が自分の本音に思えて驚いた。

美月と旅行に来ているのに、どこか他人のように感じる。いや、もしかすると、それはもっと前からだったのかもしれない。子どもを作るための旅行。義務としてのセックス。体温が通い合わない布団の中。

三年前の結婚式の日。誓いのキスをしたとき、自分は本当にこの人と未来を歩んでいけると思っていたのか。少なくとも、あの時は信じようとしていた。信じることが、結婚だと、思っていた。

美月が風呂から戻ったのは、それから三十分ほど経ってからだった。頬が火照っていて、浴衣の襟元からまだ湯気の残り香が漂っていた。

「お風呂、すごく気持ちよかった。貸切状態で贅沢だったよ」

「そうなんだ」

「瑛司も、あとで行ってきたら?」

「うん、そうする」

それだけのやり取りで、二人の間には再び沈黙が落ちた。美月はテレビを点け、ニュースを流し見しながら、髪を乾かしていた。

瑛司はベッドに横になり、目を閉じた。けれど、眠気はどこにもなかった。頭の奥が鈍く響いている。

彼は、何かから逃げ出したいと思っていた。それが何なのか、はっきりとはわからない。ただ、この静かな空間が、彼には堪らなく窮屈に思えた。

自分は、何をしているのか。何をしたいのか。問いかけるたび、答えのない空白が、瑛司の中で静かに広がっていった。

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