聴き始めてまず心に浮かぶのは、
エルリスのサウンドトラックが一つの物語を語る器であるという期待感です。僕はアルバム単体としても、作品内での場面音楽としても成立するような“モチーフの繰り返しと発展”を強く期待しています。具体的には、主人公や都市、対立する勢力に結びついた短い旋律(レイトモチーフ)があって、それがピアノや弦楽で静かに提示され、やがて管弦や合唱、電子音が絡んで大きく広がる――そんなドラマチックな構成が好きです。余韻を残す静かな間(ま)や、場面転換でふと差し込まれるアンビエント的な挿入曲も、世界観を深める鍵になるはずです。
楽器構成の面では、伝統楽器のニュアンスを織り交ぜたオーケストラ主体のアレンジに加えて、現代的な電子音・サウンドデザインがアクセントになると良いなと感じます。たとえば弦楽四重奏とシンセベースが同時に進行することで古今の時間感覚が重なったり、フルートや木管が土地の空気感を表したりする。戦闘曲はパーカッションの推進力と切れ味のあるブラスで畳み掛け、ボス戦やクライマックスでは合唱が感情の高まりを担う。静かなシーンではピアノやハープの単音が心情を直球で伝え、電子的な残響が記憶や過去を示す装置になるとさらに効果的です。『ニーア』シリーズや『ファイナルファンタジー』の一部の曲に見られるような、感情を直撃するメロディラインの強さを期待してしまいます。
アルバム構成についても注目したい点があります。序盤はテーマ提示、中盤で変奏や対立の表現、終盤で総括的なアレンジが並ぶと聴き応えがあります。短いインタールード(環境音や短いフレーズ)を挟んで物語をつなげる構成は、ゲームや映像の記憶を呼び起こしやすく、単独で聴く際にも飽きさせません。また、バリエーションとして歌モノ(ボーカル曲)が一、二曲あると、世界の“顔”を示す良いアクセントになると思います。英語や架空言語の歌詞を使うと、物語性が損なわれずに感動が伝わることが多いです。
個人的には、サウンドトラックを通して作品世界に“もう一度入れる”ことが最大の魅力だと感じます。エルリスの音楽には、聴くたびに新しい発見があると嬉しい。細かい音作りや音像の配置にも気を配ったミックス、そしてテーマが変奏されるたびに心が動くようなドラマ性があれば、アルバムとして長く愛されるはずです。ひとつの曲だけで泣ける瞬間があると本当に嬉しく、そんな曲が何曲か入っていることを期待しています。