聞いた瞬間、思わず笑ってしまった話がいくつかあった。まず、
マリヤは主人公の性格を幼い頃に出会った近所の子どもから拝借したと明かしていた。その子は無邪気でありながら妙に達観していて、物語の“間”や語り口の元になったそうだ。制作初期のプロットノートにはもっと暗い終わりが書かれていたが、編集側との議論でトーンが和らぎ、読者が救いを感じられる終幕に方向転換したという裏話も披露された。
制作手法に関する話も興味深かった。マリヤは作業中に特定のアルバム、具体的には『風の少女』の曲を繰り返し聴きながら情感を確かめていたと語っており、そのリズムや空気感が場面の間合いに影響したとのこと。さらに、背景の描写を削って人物の表情や目線で語るシーンを増やしたのは、紙や時間の制約だけでなく“読者の想像を刺激したい”という意図もあったという。
最後に、細かい小ネタについても触れていた。すべての巻のどこかに小さな猫のシルエットが隠されているのは、彼女が子どものころに大切にしていたぬいぐるみへのオマージュだそうだ。そうした小さな遊び心が作品全体の親しみやすさにつながっていると感じ、私は改めて彼女の観察眼と遊び心に感心した。」