あの曲が流れた瞬間、思わず足を止めた。歌詞の一節にぽんと『
寝ろ』が置かれているのを聞いて、最初は違和感が勝ったけど、その後でいろいろな解釈が浮かんできた。
僕はボーカルの表情や声色で印象ががらりと変わると感じた。命令口調の単語でも、優しく語りかけるように歌えば甘やかな子守唄に、斜に構えて冷たく言われれば突き放す言葉になる。だからリスナーはまず“誰が”“どの場面で”“どういう音で”言っているかを聞き分ける。自分の周りでは、若いファンは歌詞をネタにしてSNSで笑い飛ばすけれど、年配の層や言葉遣いに敏感な人たちは不快感を示す場合があった。
社会的な文脈も大きい。恋人同士のやり取りなら冗談めいた命令として受け取られやすいが、上下関係や性的な含意が見え隠れすると批判の矛先が向く。ラジオ編集やテレビ出演時にはフレーズがカットされたり、歌い方を変えられたりすることもあるし、ストリーミングのコメント欄では擁護派と非難派が熱く議論する。僕はこういう言葉遊びが曲の魅力でもあると思う。挑発的な一言が曲全体の色を決め、聴き手それぞれの経験や価値観を映し出すからだ。最終的に、その一語が支持を集めるのか反発を買うのかは、楽曲の文脈と届け方次第だと感じるよ。