'機動戦士Ζガンダム'に登場する
ロザミア・バダムのキャラクター設定は、80年代のアニメ制作における複雑な女性像の台頭を反映している。当時のサンライズスタッフが意図したのは、従来の「ヒロイン」という枠を超えた、矛盾を抱えた人間らしさだった。彼女の軍人としての厳格さと、少女らしい情緒不安定さの共存は、戦争という極限状況でこそ顕れる人間の多面性を描き出している。
特に興味深いのは、彼女の背景に『マッドネス』の要素が織り込まれている点だ。ニュータイプ能力の暴走という設定は、『逆襲のシャア』のクェス・パラヤや『Ζガンダム』のフォウ・ムラサメらとも通じる、サンライズが当時探究していた「超能力の代償」というテーマの一環と言える。ロザミアの場合、強化人間としての改造が精神に与えた影響が、キャラクターの破綻的な魅力を生んでいる。
ファッション面では、緑の軍服に赤い髪というコントラストの効いたデザインが印象的だが、これはおそらくカラー原案の藤田まり子氏のセンスが光る部分だ。80年代後半のアニメでは珍しい、軍服とゴシック調インナーの組み合わせなど、ビジュアル面でも「規律と狂気」の共存を表現しているように感じられる。
脚本面では、『Ζガンダム』の総監督だった富野由悠季氏の「戦争は誰も救わない」というテーマが色濃く反映されている。ロザミアの最期のシーンは、戦争の理不尽さを伝えるためにあえて救済のない結末を選んだという制作陣のインタビューも残っている。キャラクターの背景には、当時のアニメ業界が抱えていた「物語を通じて現実の戦争をどう伝えるか」という問いが潜んでいるようだ。