演技の力で不安を表現するシーンと言えば、『ブラック・スワン』でナタリー・ポートマンが演じたニーナの精神崩壊が脳裏に焼き付きます。バレリーナとしての完璧主義が徐々に彼女を蝕む過程は、観ているこちらの胸も締め付けられるほど。鏡に映る自分との対話シーンや、皮膚を剥がすようなジェスチャーからは、不安が形を持ったかのようです。
もう一つの傑作は『タクシードライバー』のロバート・デ・ニロでしょう。都会の孤独と戦うトラヴィスのモノローグは、不安が静かに沸騰していく様を克明に描いています。特に『You talkin' to me?』のシーンは、不安定な精神状態が爆発寸前の緊張感で、何度見ても鳥肌が立ちます。