驚くほど詳しいインタビューが公開されて、それを読んだときにかなり考えさせられた。記者の問いかけに対して作家は
逃避行を選んだ背景を順を追って語っていて、個人的な体験と社会的な観察が混ざり合っている印象を受けた。
まず幼少期の移動や家族関係に触れ、その延長線上に「離れること」で見える風景があると説明していた。次に、現代の閉塞感──仕事やコミュニティの画一化、匿名化──への反発があり、逃避行は物理的な逃げだけでなく心理的な解放のメタファーでもあると述べていた。
興味深かったのは、具体的な参照元として一度に『ノルウェイの森』のような青春の
彷徨や路上文学を挙げ、さらに昔読んだ旅行記や写真集が視覚的な手がかりになったとも語っていた点だ。結局、作家は「説明し尽くすつもりはない」とも付け加えていて、読者に余白を残す意図が明確だった。それが作品に広がりを与えていると私は感じている。