物語の裏をかく仕掛けを噛み砕くなら、意図的な視点の偏りが最も単純かつ効果的な方法だ。ある登場人物の主観だけで進めると、その人物の認識の穴や誤解が自然と生じ、読者は知らぬうちに誤った結論へ導かれてしまうことがある。
私は特に、作者が情報を断片的に与えて不確かさを残すやり方に惹かれる。断片の配置を変えるだけで、真相への道筋は容易に変えられる。時間軸を飛ばしたり
逆行させたりすることで、出来事の因果関係が後から書き換えられる瞬間は心地よい混乱を生む。さらに、物語中で小さく見せた出来事が後半で大きな意味を持つよう回収されると、読者は自分の記憶を巻き戻して再評価することになる。
『ブレイキング・バッド』のような作品では、長期的なビルドアップと細部の伏線が結び付くことで、最初に抱いた印象が完全に裏返される過程がきれいに見える。私はそうした段階的な裏切りを楽しむタイプで、作者に翻弄されるたびに作品への没入感が増していくのを感じる。