デザインの忠実さを追う過程には、思ったよりも多層的な工夫が隠れていた。
制作側はまずシルエットと顔の特徴を最優先に据えていて、
アンジェスらしい輪郭や髪型の流れを崩さないことを徹底していたと感じる。私は初期の設定画やモデルシートを見比べて、輪郭線の太さ、瞳の光の入れ方、衣装の模様の省略ラインをどう落とすかを読み取った。遠景では装飾を簡略化して動きを滑らかにし、クローズアップでは線を入念に描き込む――この振り分けが全体の印象を保つ鍵になっている。
色彩面ではオリジナルのトーンを守るためにカラーパレットを作成し、ハイライトや陰影をレイヤー分けして調整していたのがわかる。私の感覚だと、『秒速5センチメートル』のように色で雰囲気を作る手法に近く、同じ絵柄でも照明やフィルターで印象が大きく変わることをうまく利用していた。結果として動いているアンジェスは、原作の持つ静かな力強さを損なわず、アニメ的な表現で生き生きと見せてくれたと思う。