制作側の視点から最重要課題を挙げるなら、観客にとっての“試合のリアリティ”とドラマ的なテンポの両立だと感じる。僕は映像作品でスポーツを扱うとき、プレーの細部が嘘っぽいと一気に没入感が削がれる経験を何度もしてきた。『
ジャイアントキリング』は戦術と心理戦が魅力だから、監督や編集が短時間でわかりやすく、なおかつリアルに見せる演出を設計しなければならない。
幸いにも、選手の動きやフォーメーションを忠実に撮るための撮影技術やスタントチームは確立されている。ただ、それでもスタジアムのスケール感、カメラワーク、ボールの軌道、選手同士の距離感などを映画的に美しく見せつつ、戦術的意図を視聴者に伝えるのは簡単ではない。ここで失敗すると、単なる“サッカー映像”か“ドラマ脚色”のどちらかに偏ってしまう。
参考に挙げるなら、対比として'るろうに剣心'の映像化成功例が示すのは、アクションの本質を理解した上で脚色することで双方の魅力を両立できる点だ。僕としては、選手役の身体訓練と戦術コーチの起用、試合の編集方針を制作初期から明確に定めることが不可欠だと考えている。これがなければ『ジャイアントキリング』特有の緊張感と解決の快感は失われてしまうだろう。