画面の余白を巧みに使えば、観客の胸に静かな重さを残すことができる。視覚的な『
嘆息』は、しばしば“何が映っていないか”で作られるから、フレーミングの余白や被写界深度の浅さを意図的に活用するのが基本だ。私はクローズアップを多用して、顔の一部分や唇、胸の上下など微細な動きを追うのが好きだ。これにより言葉がない瞬間でも内面の波が伝わる。カメラはゆっくりと被写体に寄ったり引いたりして、息遣いに同期するように動かすと効果的だ。
色調は抑えめに設定し、彩度を落として寒色を強めると空気感が冷え、嘆息が視覚的に強調される。光ではリムライトで輪郭だけを浮かび上がらせるか、逆に薄暗く沈ませてシルエットにすることで孤独感を増す。編集面ではワンカットを長く保ち、余韻を切らないこと。カットするなら呼吸の終わりや視線の移動と合わせ、マッチカットやレイヤードなディゾルブで時間がぐっと伸びたように見せる。
具体例としては、『秒速5センチメートル』のように、画の留め方と間の使い方によって微かな哀感を増幅する作品を参照している。最終的には演者のごく小さな所作をどれだけ信じて画面に委ねるかが鍵で、撮影・照明・編集が一体になったときに初めて“嘆息”は映像の中で息をするようになる。