僕の追いかけてきた範囲で触れた原作者の説明は、かなり実務的かつ物語志向だった。要点としては、
セディールの設定変更は物語の焦点を明確にするためだったと述べている。具体的には、旧来の設定だと説明不足や矛盾が目立ち、キャラクターの選択や成長が偶発的に見えてしまう場面があったため、原因と結果をはっきりさせたかったという話だった。作者は、過去の細かな設定を大胆に整理することで、登場人物たちが自分の意思で動いているように見せたかった、と言っていた。
インタビューではまた、制作スケジュールや連載上の制約も理由として挙げられていた。長く複雑な設定を維持すると説明に紙面を取られ、物語の「今ここ」の展開が薄くなりがちになる。そうした実務的事情から不要な枝葉を削ぎ、コアになるテーマ──自由意志や赦し、権力の倫理といった主題──を強調するためにセディールの属性や歴史を再定義した、という説明だった。編集側や読者からのフィードバックも反映したという話があり、物語の矛盾が指摘される箇所を先に潰しておく狙いもあったらしい。
個人的には、その説明は納得できる部分が多かった。設定変更により一部の謎が解け、キャラクターの行動理由が一本筋でつながるようになったからだ。ただ、変化によって失われた曖昧さや余白を惜しむ声が出たのも理解できる。作者自身も変更によって生まれる賛否を承知しており、創作の現場では「完璧な整合性」と「生きた叙述」のバランスを常に取り続けていると述べていた点が印象に残っている。比較すると、物語改変が議論を呼んだ別作品の改編例、例えば'ゲーム・オブ・スローンズ'の映像化における設定変更にも似た苦悩が見えると思う。結果として、セディールの再設定は物語の強度を上げるための計算された一手だった、という理解に落ち着いている。