代表作である『The Call of Cthulhu』では、巨大で不可解な器官や触手状の付属物を持つ存在が、人智を超えた恐怖として提示される。また短編『Dagon』にも、海の深みから浮かび上がる異形の描写があり、私はこれらを読むと伝統的な海洋怪異譚と近代的な科学的思考が交差する地点を見て取ることができる。つまり、古典の怪物像がモダンな言説によって新たな象徴性を帯びたのがラヴクラフト以降の潮流だと感じる。
触手を題材にしたシーンで記憶に残っているのは、'Hellboy: The Golden Army'の植物精霊のシーンだ。巨大な蔦が街を襲う様子は、自然の脅威とファンタジーの融合がうまく表現されていた。
このシーンは単なる恐怖ではなく、環境破壊に対するメタファーとしても解釈できる。監督のギレルモ・デル・トロらしい、美しさと不気味さの境界線を曖昧にする演出が光る。特に蔦がコンクリートを砕く時の音響効果は、観客に生理的な不快感を巧みに喚起する。