宇宙の真理を追求することは、時に権力と衝突する危険を伴う。16世紀の教会が天動説を絶対視した背景には、聖書解釈の固定化と社会秩序維持の思惑があった。
ガリレオが『天文対話』で地動説を擁護した時、彼が直面したのは単なる学説の論争ではなく、当時の哲学体系全体を揺るがす脅威としての扱いだった。宗教裁判が科学者を弾圧した本当の理由は、宇宙観の変更が神学の
権威を損なうという恐怖にある。
興味深いのは、ガリレオ自身も当初は教会との融和を図っていた点だ。『星界の報告』で発見を発表した頃の彼は、メディチ家の後盾を得て慎重に主張を展開していた。それがなぜ先鋭化したのか——その転換点にこそ、科学と権力の永遠のテーマが潜んでいる。