あの終わり方は確かに最初は理解し難いですが、何度も読み返すうちに、これは作者から読者への挑戦状だったのだと気付きました。『渾沌』の最終章で主人公が辿り着いた場所は、物語の
冒頭で彼が拒絶していた状態と鏡写しの関係にあります。
鍵となるのは、途中で老哲学者が呟いた「真の秩序は混沌の中にしか存在しない」という台詞。最終的に主人公が受け入れたのは、矛盾を内包したまま生きるという境地でした。あの有名なラストシーンの曖昧さは、現実世界でも明確な答えなど存在しないというメタファーとして機能しています。作品全体を通じて用いられた水のイメージが、最後に一つの大きな流れとなって収束する様は、何度見ても鳥肌が立ちます。