読んだ作品を思い返すと、まず浮かぶのは登場人物の「なぜ」だ。行為が
鬼畜的であっても、動機や背景が曖昧だと読者はただ拒絶するだけになる。だから僕は、ときに犯行の前後に小さな日常や心の揺らぎをはさむようにしている。人がどうして極端な選択に至るのか、断片的な記憶、失ったもの、恐れや誤った正義感を丁寧に積み重ねると、行為そのものへの嫌悪感と同時に「理解」の芽が生まれることが多い。
詳細な暴力描写を避けることも有効だ。具体的な描写でショックを与えるより、被害者や加害者の心理的余波を描くことで、読者は想像力を通じて深く関与する。『羊たちの沈黙』のように、表面的な凶行よりも内面の複雑さを残しておくことで、恐怖と共感が同居する余地が生まれる。
最後に、責任の所在や結果を軽視しないこと。鬼畜要素をただのスパイスにするのではなく、それが物語の倫理やテーマにどう影響するかを明確にする。そうすることで読者は単なる嫌悪ではなく、物語全体へ感情を投資してくれる。