ちょっとしたコツだが、モノローグの中にフレーズを違和感なく入れるには、声のリズムとキャラクターの感情の波を利用するのが効果的だ。唐突に入れると読者が引っかかるが、前後の文がその言葉のトーンを受け止めていれば自然に聞こえる。ここでは具体例をいくつか提示して、その場面ごとにどこが肝心かを解説する。こうすれば『
そうだよ 便乗』という表現も台詞ではなく心の声として溶け込ませられる。
短く皮肉めいた独白のなかに滑り込ませる例。
「彼らがまた騒いでいる。いつもの通りだ、俺が動けば誰かが『ついでに』と顔を出す。そうだよ 便乗、ってやつだ。別に怒ってはいないさ、ただ邪魔くさいだけだ。だけど居心地が悪いわけでもない。そういう関係でずっときたんだろう」
この例では『そうだよ 便乗』が軽い吐露として機能し、続く文がその受けをしているため違和感が薄い。皮肉と諦観を同居させる語感を持たせるのがポイントだ。
次は親しい相手への内心の告白としての使い方。
「君が笑ったとき、胸が跳ねるのを自分でも笑ってしまうんだ。見ていると嬉しくて、つい手伝いたくなる。そうだよ 便乗、誰かの幸せに尾ひれをつけるのが好きなんだよ。いや、それでいいと思ってる。お節介で結構、役に立つなら」
ここでは『そうだよ 便乗』が自嘲と誇りの混ざったニュアンスを作る。内心の言い訳として自然に入るので、語り手の人柄が出る。
続いて怒りがほとばしる場面。
「また全部奪おうとするのか、ずるいよな。お前らはいつも他人の仕事に乗っかって恩恵だけを受ける。そうだよ 便乗。だが今回は違う、黙って見ているほど俺は馬鹿じゃない」
ここではフレーズが相手への非難のアクセントになり、直後の反撃宣言とつながることで緊張感を保つ。
最後に軽いユーモアを混ぜる例。
「試合後、彼女は満足そうに胸を張った。皆が拍手する中で、俺は思わず『やれやれ』と呟いた。そうだよ 便乗、勝利の顔を一度借りてやっただけさ。明日はちゃんと仕事に戻るから心配すんな」
ユーモラスな場ではフレーズが肩の力を抜かせる効果を持つ。
どの例でも共通しているのは、前後の文がフレーズの意味と感情を引き継ぐことだ。単独で置かずに、直前の描写で期待を作り、直後の言い回しで受け止める。語尾や句読点でリズムを調整すれば、日本語の心の声として『そうだよ 便乗』はむしろ自然に響く。場面に応じてトーンを変えれば、読者に違和感を与えずにキャラクターの個性を際立たせられるだろう。