映像で最も衝撃的だったのは、物語の“重心”が移動してしまった点だと僕は考えている。
原作の核が主人公の内面にあったのに、映画版では外向きの大叙事詩に変わってしまった。原作で繊細に描かれていた葛藤やモノローグは省略され、代わりに大規模な海戦やスペクタクルが前面に押し出される。結果としてキャラクターの動機が薄く見え、観客が彼らに共感する余地が減ってしまったと感じた。
ビジュアルや音響は確かに豪華で、古典的な神話性を強調する演出は目を見張る。ただ、その装飾が原作の細やかなテーマ――罪と贖罪、自然との関係性、個人的な喪失感――を覆い隠してしまった。たとえば'風の谷のナウシカ'の映像化ではテーマを残しつつ世界観を拡張していたのに、今回の'
海神'は拡張の仕方が異質に映る。
だからファンの多くが「最も違う点」として挙げるのは、物語の焦点とテーマの置き方の変更だ。映像表現としては魅力的でも、原作が持っていた精神的な深みが希薄になったことを、僕は惜しく思っている。