演出の裏方に目を向けると、光・色・動きの三要素が密接に絡む。まず色は心理を示す記号になりやすく、暖色系で包むと厚かましい行為が温かみを帯び、寒色だと冷たい暴露に変わる。カメラワークは主観と客観の切り替えに使われ、手持ちカメラで揺らすと生々しい侵害感が生まれ、ステディカムやクレーンで距離をとると監督がその場を俯瞰している印象になる。
編集の技術も肝心だ。モンタージュで反応を並べる手法は、群衆の視線を利用してあつかましさを社会的現象に拡張する。一方でワンカットで見せ続けると観客の
羞恥心を増幅させる。私は現場の立ち回りを想像しながら、『アニーホール』のような軽妙な編集がどれだけ観客の共感や嫌悪を巧みに揺さぶるかにいつも感心する。照明や音、演技指導を総合して設計するのが監督の腕の見せどころだと思う。