耳に残る低周波と静寂の間にこそ、第ゼロ感が宿ると自分は思っている。音が“ある”でも“ない”でもない境界を引き伸ばす作品を挙げるなら、まずはブライアン・イーノの『Music for Airports』が欠かせない。ミニマルなテクスチャーと遅い循環が、存在の輪郭を溶かしてしまう感覚をじわじわと生み出す。音が繰り返されるごとに、聴いている自分がどこにいるのか分からなくなる――そこがまさに第ゼロ感だ。
一方で、ヴァンゲリスの『Blade Runner』には別種の“ゼロ”がある。合成音と空間表現が未来的な無の感覚を作り、人物の感情が音の隙間に溶け込む。そこでは情緒が薄まり、世界そのものが記号化される印象を受ける。対照的に、ミカ・レヴィによる『Under the Skin』は生物的で不穏なノイズを多用し、無から微かな“生”が現れる瞬間を捉える。聴くたびに身体感覚が引き戻され、ゼロと一の境界がざわつくのが面白い。
これらを聴き分けるコツは、メロディに注目するよりも「余白」と低周波を探すことだ。リバーブやディレイの使われ方、音の立ち上がりの遅さ、そして敢えて残された静寂が、第ゼロ感を生む主要な要素だと自分は考えている。こうしたサウンドトラックは、感情の輪郭を曖昧にして逆に深い共鳴を生むので、物語の“前段”や“無”を描きたいときにとても効果的だと感じる。
映画の中で音楽が戦闘シーンをさらに引き立てる瞬間って、本当に鳥肌ものですね。特に『マッドマックス:フuryロード』のサウンドトラックは、疾走感と暴力が混ざり合うシーンに完璧にマッチしています。Junkie XLの作曲したエレクトリックなビートが、車のエンジン音と一体化して、観客を圧倒的なスピードの世界に引き込みます。
あの無慈悲な砂漠の戦いで流れる『Brothers In Arms』という曲は、まるで自分も戦闘に参加しているような錯覚を覚えるほど。弦楽器の不協和音が緊張感を最大限に高め、チェイスシーンのカオスを音楽だけで表現しています。他のアクション映画とは一線を画す、音楽と映像の融合を感じられます。
『君の名は。』のサウンドトラックを聴いていると、雨宿りのシーンで聞こえる微かなキスの音が印象的だ。新海誠作品らしい繊細な音響効果が、感情の高まりを引き立てている。
ラジオ・ヘッドの『True Love Waits』が使われた『Eternal Sunshine of the Spotless Mind』では、キスの音が記憶の儚さを象徴するリズムとして機能している。音が映像と溶け合う瞬間は、まさに映画音楽の醍醐味と言える。
意外なところでは『Wall-E』の宇宙空間でのキス音。無音の宇宙であえて強調されたその音は、ロボットたちの感情を鮮烈に表現していた。