意外と見落としがちですが、
肌襦袢のサイズをきちんと合わせると着付け全体の印象がぐっと整います。着付け師が重視するポイントは、見た目の美しさだけでなく動きやすさや重ねたときの段差を防ぐことにも直結します。ここでは具体的にどこを測るのか、なぜそこが大事なのかをわかりやすくまとめます。
まず最優先は裄(ゆき)丈です。裄丈は首の中心(後ろ襟の付け根)から肩を経て手首までの長さで、これが合っていないと袖のたるみや腕の動きに窮屈さが出ます。次に着丈。後ろ襟の中心から裾までの長さを測り、着物を羽織ったときに裾が
適正な位置(通常は足首〜裾線)になるように調整します。肩幅や胸囲は、肌襦袢のシルエットを左右する要素。肩の縫い目が肩先に合うこと、胸囲が窮屈すぎず余裕があり過ぎないことを確認します。胸や胴回りに余裕がありすぎると着付け時に布が寄りやすく、逆にきつすぎると着崩れや息苦しさの原因になります。
袖周りや身八つ口の位置も注意点です。身八つ口の開きは腕を動かしたときの通気や着付けの際の作業性に影響しますし、脇下がきついと着姿にしわが寄ります。衿元の見え方を左右するのは衿の深さと後ろ襟の位置で、肌襦袢の衿がきれいに収まることで半衿の出し方や襟合わせが整います。また、季節や素材も加味します。綿や絹といった素材は洗濯や着用で多少縮むことがあるため、余裕を見て調整するのが賢明です。ふり袖や訪問着など袖丈や裾の取り回しが重要な着物の場合は、それに合わせて肌襦袢の寸法も微調整されます。
実際の測り方は、普段着る下着に近い状態でまっすぐ立ち、力を抜いた自然体で行うのが基本です。測定値は体型の特徴(猫背、前肩、肩の傾き)によって微妙に変わるので、着付け師は着せつけの際に最終チェックを行い、必要なら修正を加えます。最後に心掛けたいのは、肌襦袢は体に沿うものでありつつ呼吸や動作を妨げないこと。ちょうどよいフィット感があると着物全体が整って見えるので、寸法を測るときはそのバランスを意識してみてください。