観るたびに胸がぎゅっとなる瞬間がいくつもある作品だ。それがあるから、つい誰かに勧めたくなる。僕がいちばん強く推すのは『
イッヌ』の第3話だ。序盤の設定が落ち着いたところで突然訪れる冒険回で、主人公と相棒の関係性が一気に深まる。表情のアップやカメラワーク、音楽の使い方がとにかく巧みで、台詞だけでは伝わらない感情の機微が伝わってくる。特に終盤の沈黙が効いていて、あの数秒で視聴者の感情を連れていく力量には唸らされた。
次に挙げたいのは第7話だ。ここは一見サブプロットの回に見えるけれど、実は世界観の伏線が丁寧に回収される重要な回になっている。僕は伏線が回収される瞬間に弱くて、画面の小さな描写や背景に書かれた情報を発見するとつい拍手したくなる。演出面での遊び心も豊富で、笑える場面と切ない場面が交互に来ることで感情の振幅が大きく、次の展開に期待が高まる構成になっている。
そしてラスト付近の第12話は、多くの視聴者が「観てよかった」と感じるであろう完成度の高い総決算回だ。ここではこれまで積み重ねられたテーマが明確になり、キャラクターたちがそれぞれの選択をする瞬間が胸に刺さる。アニメーションの細やかさ、音楽の盛り上げ方、カット割りの的確さ、とにかく完成度が高くて何年経っても語りたくなる。個人的にはこの三本立てをまず勧める。特に感情の流れを重視する人には刺さるはずで、初見でも深掘り視聴でも楽しめる配分になっていると感じている。