輪郭をざっと眺めただけで、作家が意図した性格が透けて見える。僕が最初に心を掴まれたのは、
イッヌの頭身のバランスに関する説明だ。頭をやや大きめに、目立つ額や丸みを強調することで無垢さと親しみやすさを出し、胴は短めで足は少しずんぐりさせる。これは“守られる側”の印象を与えつつ、動きに柔らかさとコミカルさをもたらす設計だと感じた。
加えて、表情パーツの扱いについての言及が細かい。目の黒目を大きく見せつつ、まぶたの曲線で感情の揺れを作ること、口元は単純化しても鼻の位置や頬のふくらみで笑顔や驚きが伝わる、と書かれている。毛並みは詳細な毛束描写よりも、ブラシストロークで方向性と質感を示し、色味はウォームトーン中心で影は薄く柔らかくする──そうすることで画面上で目立ちすぎず、キャラクターの温かさが保たれると説明されていた。
アクセサリーやシルエットの小さな非対称も重要だと繰り返している。例えば左耳に切れ込みがある、右肩に小さな斑点がある、といった微妙な不均衡は“生き物らしさ”と記憶に残る個性を生む。動きの指示では、耳と尾を感情の延長として扱い、歩行ではリズムを崩さない範囲でスイングを大きめに取ること、ジャンプ時は伸縮を強めにしてコミカルさを出す、と明確に書かれている。僕にはその文章が、ただの可愛さの追求を超えて“共感できる存在”を作るための丁寧な設計図に思えた。最終的に、作家はイッヌを視覚的にやさしく、演技面で豊かな存在として描こうとしているのだと確信した。