図書館の書架で平積みになっているのを見かけ、気まぐれに借りてみたのがきっかけだった。
『百年の孤独』は一族の物語ではあるが、読者の多くがここを「母」を巡る傑作と評しているのも納得できる。特に
ウルスラのような長年にわたって家族を支え続ける女性像が繰り返し登場し、母性の多層性――管理する力、許容する力、終わりなき忍耐――を壮大なスケールで示している。魔術的リアリズムという手法が、母親たちの営みを普通の生活から神話じみた領域まで押し広げ、読後の余韻を強くする。
僕はこの作品を通じて、母という存在が単なる家族関係の一部ではなく、世代をまたいで歴史と記憶をつなぐ媒体であると実感した。豪胆なエピソードと繊細な情景描写が同居するため、さまざまな角度から「おふくろ」を考える材料を与えてくれる一冊だ。