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短時間のインタビューでも、ひと工夫すれば訊ねられる。僕はいつも、まず肯定的な反応を示してから疑問を呈するようにしている。例えば「その表記に惹かれたのですが、どのような意図がありましたか?」という形だと、相手の警戒を解きほぐせる。
また、単語そのものに文化的・歴史的な背景がある場合は、監督が即答できないこともある。そういうときは「調査や参考にした資料があれば教えてください」と余地を残しておくと、監督も冷静に答えやすい。結局、相手を尊重する姿勢が良い回答を引き出す鍵になると感じている。
語感の違いが気になる場面では、問いかけはむしろ歓迎されることが多い。僕はインタビューでことばの選択について尋ねる際、まずその語が作品内でどんな効果を持っているか自分なりの仮説を用意する。たとえば『君の名は。』のように言葉遣いがキャラクター像や時代感に影響する作品では、監督の個人的な語感や資料的背景を聞くことで理解が深まる。
ただし、ただ単に「なぜこれを使ったのか」と突き放して聞くと、防御的な反応を引き出すことがある。だから背景や参照元、他の表現案があったかどうかを合わせて尋ねると、会話が建設的になるし、監督も自分の選択を整理して話しやすくなる。聞き手としての丁寧さが、濃い答えに繋がるんだと僕は考えている。
こんな場面なら監督に直接尋ねるのは決しておかしくない。言葉選びの微妙さが作品理解に直結することがあるから、僕はしばしばそういう質問を投げかける。『風の谷のナウシカ』のように、語句一つで世界観が変わる作品を思い出すと、用字用語の意図を詰める価値は大きいと思う。
会話の仕方次第で印象は変わる。感想を先に述べたうえで「この表記を選んだ理由は何ですか?」と穏やかに尋ねれば、監督も説明しやすくなるだろう。具体的な場面や台詞を挙げると、より実りのある回答を引き出せる。
最後に、聞き手としての配慮も忘れないでほしい。意図を尋ねる行為は作り手への敬意の表明にもなりうるから、失礼にならない範囲で好奇心を示すと良い結果につながる。」
表現の歴史や言語感覚を話題にする場合、質問の仕立て方で得られる答えは大きく変わる。私が以前、言葉遣いの由来を尋ねたときは、作品の参考文献や古語・方言の使用背景まで話が及び、思いがけず制作過程の資料的側面を知ることができた。『もののけ姫』のように古語や仮名遣いが演出に影響する作品では、単語選択の意図を掘る価値が特に高い。
質問する際は、「なぜこの字面を選んだのか」「どんなニュアンスを重視したのか」「他に候補はあったか」といった具体的な切り口を用意すると話が深まる。加えて、演出上の理由(音の響き、空気感、登場人物の視点など)を想定しておくと、監督も答えやすくなるはずだ。
念のため補足しておくと、場の空気とインタビューの形式に応じて聞き方を変えるのが大事だ。僕はラフな対談と公式取材では切り口を変えている。ラフな場では感想を交えつつ柔らかく問い、公式な場では事前に整理した質問を丁寧に投げる。
『ゲーム・オブ・スローンズ』の翻訳や字幕でも見られるように、言葉の選択は意図と制約のせめぎ合いだ。だから、「
訊い」を使った理由を尋ねるのは当然の興味だし、適切な聞き方をすれば監督も詳しく語ってくれるだろう。どんな答えが返ってきても、作品理解が深まる良い機会になるはずだ。