読み終えたあともしばらく胸の中で響くタイプの作品だと感じる。
物語は表面的に『祝祭』や歓びを描きながら、同時にその裏側にある孤独や選択の重さを静かに照らしている。登場人物たちが他者との繋がりを希求しつつも、自らの声をどう表現するかで葛藤する様子は、表現行為そのものが自己肯定と自己否定を交互に押し寄せることを示していると思う。私は特に、言葉や歌がキャラクターの内面を露わにする場面に引き込まれ、そこからテーマの厚みを読み取った。
例えば、スケール感のある戦いや理念の対立を描いた作品のように直接的に立場を問うのではなく、日常のささやかな選択を通して自由や責任の意味を問う点に独自性がある。『銀河英雄伝説』のような大河が示す政治と個の関係とは別の位相で、個人がどう自分の生命を“
謳歌”するかを静かに示していると感じた。終盤の余韻が、読み手に考える余地を残す点もこの小説の大きな魅力だ。