新解釈「聖女」

新解釈「聖女」

last updateTerakhir Diperbarui : 2026-03-26
Oleh:  酔夫人Ongoing
Bahasa: Japanese
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聖女は、王家のもの――そんな常識を、北辺境の聖女は力で叩き壊す。 魔素汚染と魔獣に苦しむ辺境で育ったアリアは、神託で聖女に選ばれ、王家からの「求婚」という名の命令に激怒し、ふと、考えた。 「私が女王になれば、王子様と結婚しなくていいよね?」 革命を決意したアリアが手に入れた切り札は、超面倒くさがりな魔塔の主。 「研究費を優遇してくれるならいいよ」 恋愛感情ゼロの政略結婚はこの先どうなるのか。

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Bab 1

1

(血の匂いに、もう慣れてしまったわ)

雪解け水を含んだ地面はぬかるみ、倒れた魔獣の体液と混じってアリア・ヴァルグリムの靴底に絡みついた。

空気は重く、肺に吸い込むたび、喉の奥がひりつく。

(魔素の汚れが増した)

「アリア、左!」

兄フィンの声が飛ぶのと同時に、アリアは身を沈めた。

長く戦いに身を置いてきたからできる、反射。

黒く歪んだ爪が、アリアの頭上をかすめて空を裂く。

「遅い」

短く言い放ち、アリアは踏み込む。

アリアの剣閃が走り、魔獣の胴を断った。

巨体が地面に崩れ落ちると同時に、アリアは異変に気づいた。

「なに!?」

胸の奥が熱を帯びるのを、アリアは感じた。

力が流れ出るのを感じる。

「これは……”浄化”?」

フィンの言葉に、アリアはハッとして周りを見渡す。

(世界が、きれいだ)

アリアを中心に、空気が澄んでいく。

濁っていた魔素が押し流され、楽に呼吸ができた。

「……はぁ」

アリアは小さく息を吐いた。

「空気って、こんなに美味しいのね」

 *

 

「終わったか」

アリアの長兄、カイムが剣を下ろす。

次兄のレオンハルトは肩を回し、困ったように息を吐きだした。

「また増えてる。王都から届く浄化の力が減っているのだろうな」

「もともと辺境は後回しだ」

レオンハルトの言葉に苦く笑い、カイムは周りを見渡して眉間にしわを寄せた。

「これは……聖女が、王妃様が亡くなったというのは本当にようだ」

「次の聖女はまだ見つかっていないから、王家はさぞ必死だろうよ」

普段は温和なレオンハルトの嫌味を込めた言葉に、カイムが皮肉っぽく笑った。

「王都に籠っていては見つかるわけがない。もしや辺境にいたりしたら……」

「カイム兄さん! レオン兄さん!」

慌てた弟、フィンの声にカイムとレオンハルトは揃って剣を構えた。

新たな魔獣が出たのかと思ったが……。

「なんだ?」

「あれ? なんか、とても呼吸が楽だ……」

レオンハルトの言葉に、カイムはある可能性に気づく。

「まさか……」

カイムの呟きに、レオンハルトは先ほど自分が言ったことを思い出した。

―― 次の聖女はまだ見つかっていない。

「「アリア?」」

カイムとレオンハルトの目が、末っ子のアリアに向かう。

アリアは、照れ臭そうに頬を描く。

「私が、次の聖女みたい」

「「聖女って柄じゃないだろ、お前!」」

兄たちの言葉に、アリアが目を吊り上げる。

「フィン兄さんと同じことを言わないで!」

 *

 

聖女。

神託によって選ばれ、魔素を浄化し、世界を正常化する存在。

だから、聖女は必要。

ルクスハイム王国最北、北辺境。

ここは王都から見れば、地図の端にある余白のような土地だ。

聖女の浄化の力も、ここまで届かない。

「ううむ……」

北の辺境伯、ローデリヒ・ヴァルグリム。

彼の率いるヴァルグリム家の施設騎士団「牙」はルクスハイム王国の武闘集団。

三人の息子、カイム、レオンハルト、フィンはそれぞれ一騎当千の勇将。

そして末っ子のアリア。

彼女は娘でありながら魔物の討伐に尽力し、兄たちと共に他の辺境にも遠征するため、「戦神アリア」の名で親しまれている。

「このアリアが……」

四兄妹の母親、エリスが腕を組んだ。

元は王都の女性騎士だったが、その腕にローデリヒが惚れ込み、果たし状か求愛か分からない言葉から始まった恋愛結婚で北部辺境伯夫人となった。

「「「「「聖女……」」」」」

「ちょっと、なんなの、みんなして!」

「旦那様、奥様、大変でございますっ!」

北部辺境伯家の執事ハンスが慌ててやってきた。

ハンスは、ドラゴンが群れになっても平気で「来ましたよ~」と報告しそうな男。

めちゃくちゃ緊急事態だと、全員が身構えた。

「王都のほうから、王子様からの使者が来ちゃいます!」

ハンスの言葉に全員目をむき、全員揃って窓辺に寄った。

六人の視線の先、王太子の旗を掲げたの使者が雪を蹴散らして駆け込んでくるのが見えた。

「辺境伯ローデリヒ様! 王都より、王太子殿下の言葉を届けに参った!」

一瞬で、場の空気が変わった。

ローデリヒは、深く息を吸って、吐いた。

「来ちゃったよ」

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2
エリスがアリアの両肩を掴んだ。「アリア、あなたは私たちの自慢の娘よ」「ありがとう」「何を言われても気を強く持ってね」「……なんで、私が貶される前提なわけ? 私、そんなに聖女らしくない?」「いいえ、見た目は問題ないわ。見た目”には”ね」「見た目しか褒めるところがない、みたいな言い方はやめてよ」アリアは、兄たちを見た。「見た目は、聖女っぽいんだがな」「父さん譲りの銀髪に、母さん譲りの蒼色の瞳。色味はいい感じ」「見た目詐欺だろ、あれ」(……この、馬鹿兄貴たち!) 「仕方がないわ。エリス、よく聞きなさい」「……はい、お母様」「分厚い薄絹を数百枚被った、くらいの気持ちと態度で伝令と接しなさい」アリアは思った。(分厚い薄絹は、それでも”薄”絹なの?)  * 「聖女マリア様、こちら、王太子殿下からのお手紙です」(マリア……)アリアの眉間にしわが寄った。しかし、使者はそれを“緊張”と勘違いした。「マリア嬢、そう緊張なさらず。王太子殿下はマリア嬢を正妃として迎えられることを喜んでいらっしゃいました」「……そうですか」冷めた反応に使者は、なんか盛り上がりにかけるなと思ったが、咳払いひとつ、体勢を立て直す。「それでは……」使者は紙に巻かれた赤いリボンを解き、中の文章を朗読する。「“今夜、城下の灯りがとても綺麗に見えるらしい。 マリア、それを君とみたい。いつか、マリアが好きだと言った甘いミルク酒も用意しよう。お礼は、私のシャツ一枚だけを羽織った君の姿で”…………え?」揚々と読み上げていた使者の顔が青くなる。使者の目線は手紙とアリアの顔を、何度も高速で往復した。 「私、王太子殿下にお会いしたことはありません。先日成人したばかりなので、ミルク酒も覚えがありませんわ……使者様」アリアの低い声に、使者は俯く。「使者様」再度の問いかけ。先日成人、つまり十八歳になったばかりの若い娘とは思えないアリアの圧に、使者の背にはダラダラと冷や汗が流れた。「使者様、ご気分でも?」「いえ、その……」「そのご様子では、あとは自分で読みますわ」「いいえ……」「いえいえ。遠慮なさらず。ええっと……“お礼は、私のシャツ一枚だけを羽織った君の姿で。あれ、すごく似合っていたから。返事は気軽に。今夜を楽しみにしている”……これが、求婚
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王都ルクスハイム。白い城壁に囲まれた都は、今日も平和だった。少なくとも、城の中にいる者たちはそう思っていた。「辺境から聖女が見つかったと聞いた」王座に座る国王オスヴァルトは、宰相ヴァルターを呼び出した。王妃である聖女が亡くなって一ヶ月。彼は喪に服すどころか、愛人たちの宮殿を行脚して、愛欲に耽っていた。その分の仕事がどさっと宰相のところにいったため、彼は多忙を理由に国王への報告をサボった。どうせ読みはしない。人と時間は有限。節約できるところは節約するとヴァルターは宰相になった日から決めていた。読まない報告書は、最初から作らない。いつか呼ばれて聞かれるのだから、そのとき随時対応。「聖女はどこの誰だ?」(報告書に描いてあるのだが)「北部辺境伯ヴァルグリム家の令嬢、アリア様でございます」「ほう……」オスヴァルトは鼻で笑った。「ようやく、か。ずいぶん遅かったな」オスヴァルトは玉座の横、王太子セドリックを見る。セドリックは金髪碧眼、絵に描いたような“王子様”の外見をしている。(外見だけだがな) 「セドリック、求婚の使者は送ったのか?」「当然です。辺境ですので、時間がかなり掛かりますからね」「お前にしては仕事が早いな」「求愛の手紙なんて、基本的にどれも同じ。先日マリアに送り損ねたものを、そのまま送りました」「そうか」(そうか、じゃない!)「失礼いたします」ヴァルターは父子の会話に割り込んだ。「王太子殿下。聖女様は”アリア”様でございます。”マリア”ではありません」求婚をかねた求愛状のあて名を間違えるなど、あり得ない。あり得ないのだが……。「大丈夫だろう。マリアのほうが聖女っぽいしな」(フリードリッヒのほうが王子っぽいと言われたら改名するのか、お前は!)「まあ、いい」(よくない!)「聖女は王家のもの。それは、この国が始まって以来の常識だ」オスヴァルトの言葉にセドリックが、軽く肩をすくめる。「辺境育ちの娘だ。王妃教育は骨が折れそうだが……まあ、こちらでどうとでもなる」「“聖女”である以上、意思など不要だ」国王の言葉に、何人かの貴族が頷いた。ヴァルターはため息を吐き、口を挟むのをやめた。 「浄化をし、子を産み、王家を支える。それで十分」「感謝されこそすれ、反抗など考えまい」彼らは気づいていな
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4
王都のはずれにある魔塔。真っ黒の石壁から「黒曜魔塔」と呼ばれているが、元は真っ白な石壁を清掃する予算がないだけのボロボロの塔である。高くそびえる塔の最上階で、この塔の主であるルシアン・ノクスは書類を睨んでいた。「……また、減ってる」机に広げられた予算表を、その長い指で叩く。「防衛魔術研究費、三割減。代わりに“聖堂改修費”の増額……か」ルシアンの向かいに座る研究員が、苦笑した。「王都は平和ですからね」「平和だから王都から出ない。出ないから、知らない振りができる」ルシアンは椅子にもたれ、天井を仰ぐ。「王都には聖女がいる。天然の対魔物結界だ。だから、魔術師は要らない。魔術師たちの研究棟であるこの塔もぼろぼろ……世知辛いな」「でも、ほら、貴族からの依頼は、増えています……から」「そんな下らないもの、増えなくていい。俺が欲しいのは、好きな研究をする時間と金だ。注文品の魔導具を作るために魔法を学んだわけじゃない」ルシアンはぴしゃりと切り捨てる。貴族からの依頼。自分を三割増しによく見せる魔導鏡。身にまとうだけで威圧感が出る魔導マント。肌のハリや艶を増す魔導香炉。(馬鹿馬鹿しい。誰が美人になろうが、それで俺に何のメリットがある)このルシアンは究極の面倒臭がりだ。できれば一日中ベッドの上で過ごしていたいという人物である。「人間の三大欲求は全部ベッドですませられるのに、なんで排泄はそうはいかないんだ」ルシアンの夢は体内の排せつ物が自動で別の場所に転移される魔導具と、ベッドの上から動かずに体を常に清潔に保てる魔導具を作ることである。 「そもそも、何だって聖堂改修費が必要なんだ?」「聖女が見つかったからです」「だから?」「聖女と王太子殿下が結婚式をするから、聖堂をキレイにしようってことですよ」呆れたようにルシアンは肩を竦める。「今度の聖女様、一体どんな夢を見ているのだか」王子様との華やかな結婚式を夢みているだろうと思ったルシアンは悪くない。それは一般的な意見である。ただ、今代の聖女が規格外なだけ。今代の聖女、アリアが考えているのは王位簒奪である。ある意味で、夢と言えば夢である。 ルシアンは、予算削減の紙を丸めてくず籠に放った。ナイスイン。流石、動かないためにコントロールを磨いただけはある。そして、あくびを一つ。
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5
「やることは簡単なのです。聖女として城に入って、王様たちを制圧します。聖女の護衛ということで、お兄様たちが帯剣して謁見する許可も下りています」「三人とも、か?」「ええ、三人全員です。辺境の田舎者である兄たちに、滅多にできない王城見学を許す……みたいな手紙が王子様から届きました」アリアの言葉に、誰かが深いため息を吐いた。「……馬鹿なのか?」「馬鹿なんだな」「馬鹿だろう」馬鹿の三段活用。「ヴァルグリム三兄弟の武力なら国一つを落とせると言われているのだぞ」辺境伯たちの呆れた声に、アリアが口を開く。「だから、その、国落としをしにいくんですってば!」「あ、ああ、そうだったな……自分たちの国だけどな……」アリアを宥めるように頷きつつも、むうっと彼は眉間にしわを寄せる。「王族の守りである近衛兵たちはどうする? 国の騎士たちの中でも屈強な者たちが揃っているぞ」「お母様の古巣ですね」”ああ、そうだった”という空気がこの場で流れ、視線がエリスに向かう。エリスは一つ咳払い。「近衛隊の同期に連絡してみたところ、”いいんじゃない? 協力するよ”という返事をもらいました」エリスの答えに、全員が仰天する。「近衛騎士と言えば、王家への忠誠心が高いことで有名ではないか」「そう言うことになっていますが、実態は違います」噂と実態が異なる。よくあることではあるが、いいことではない。 「この国で真面目に騎士になりたいと思っている者は、辺境伯家の騎士団に憧れています」エリスの言葉に、その憧れの騎士団の管理者である辺境伯たちは満足気に頷く。「私も、騎士学校で優秀な成績を納め、『牙』の入団テストを受ける日のことを指折り数えておりました。それが、”美人だから、この子にする”という感じに近衛兵に抜擢されてしまった。このときの悔しさが分かりますか?」確かに美人だからなあ、と多くの者が思った。しかし、誰もそれを言うことはできなかった。いまエリスが握っている彼女の愛槍は小刻みに揺れていたから。下手なことを言ったらアレが飛んでくると、全員が口を噤んだ。「それが近衛兵の三割の実態です」「努力を侮辱する行為だな。残り七割は?」「王様たちのそばにいれば、覚えもめでたくなって、遊び放題、女の子たちは入れ食い状態。俺ら勝ち組、ウウェーイという、高位貴族のバカ息子たちで
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第6話
「お婿様……早くも難問がやってきたわね」「難問やってくるの、早くないか?」困った声を出したアリアの隣で、フィンが呆れる。ヴァルグリム家の三兄弟はそろってシスコンである。だが、その愛の重さ、程度には差がある。三兄弟の年齢は、上から二十八歳、二十五歳、十九歳。長兄カイムと次兄レオンハルトは、父ローデリヒと同様に「目に入れても痛くない」レベルでアリアを可愛がっている。「アリアは可愛いから、夫くらいすぐに見つかるだろう」カイムは全てが父親似で、天然ボケ。「兄さん、普通の夫ならすぐに見つかっても、女王の夫は簡単には見つからないよ」長兄がボケ担当なのでレオンハルトは自然とツッコミ担当になった。今回はボケでもツッコミでもないが、兄カイムの言葉に自然と応えるのが習慣となっている。「女王の夫、王配となった男は常に命を狙われてきていた歴史がある」ルクスハイム王国の法典では、独身の女王は認められない。例外は未成年の王子が成人するまでの繋ぎの女王だが、今回のアリアのように正統な後継者を排して王位を簒奪しようとしてきた女王の場合は既婚者が絶対条件。既婚者でなければ王位に就けず、不慮の事故などで王配である夫が死んだ場合は一ヶ月以内に再婚しなければいけないという無情な法典がある。王の系譜を維持するため子をなさなければいけないからという理由なのだが……。「男女不平等すぎるわよね。男性の王様は妻である王妃のほかに公的愛人の皇妃と私的愛人の愛妾山ほどもてるのに、女性の王様は王配しか夫を持てないんでしょう?」「アリア、もしかしてハーレム願望があるのか?」末兄でアリアと年子の兄であるフィンは、アリアのツッコミ担当であることもあって、アリアに対して兄たちほど盲愛していない。「嫌よ、むさくるしい。女の子のハーレムなら欲しいし、すぐに作れると思うのだけどね」「クッソ羨ましい」妹に対する謎の対抗心により、とにかくシスコンでも盲愛ではない。.「アリアが女王となったら、公約通り積極的に辺境に赴くことになる。どうしたって城の騎士の数は減るし、それを中央の貴族たちは見逃さないだろう」「過去にも聖女が辺境へ浄化の旅に出たちと進言したこともあるが、中央の貴族がことごとく潰してきたからな」「それがおかしいのよね。辺境といっても王都をぐるっと囲むような形よ、常に王都は聖女の浄化
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第7話
生き残る、つまり、死なない。死なない男ならいいじゃないか。アリアの出した解決策に、フィンが呆れた。「なんだ、その条件は?」フィンはアリアのツッコミ担当。呆れつつも、仕事はこなす。「誰かが言っていたんだけど、兄弟から紹介された人との結婚ってうまくいくらしいの」「俺が言った条件はそっちではないが、“誰か”なんて出典の怪しいものを信じるなよ」「でもフィン兄さんも、私の周りに可愛い子がいたとき“紹介して”って強請るじゃない」「……そうだな」肩を落としたフィンに、レオンハルトが呆れる。「お前、そんなことを妹に頼んでいたのか」「仕方がないだろう、アリアのほうが女の子にモテるんだから」フィンのため息交じりの言葉に、レオンハルトとカイムは顔を見合わせて苦笑した。「確かに、そうだな」.ヴァルグリム家の三兄弟は領内の女性たちにかなりモテるが、アリアはその比ではない。「老若男女、アリアはモテまくっているからな」「問題の若い男性が少ないっていうのが問題だが」「アリアの隣に並ぶと自信をなくすらしい」美形で、武芸に秀でていて、女子どもなど庇護対象にはとことん優しく紳士的。アリアは女性にとって理想的なアイドル。そんなアリアを「お姉様」と慕う女性多数。彼女たちの中には、アリアの遠征に補給物資をたんまり乗せた馬車でくっついていくほどのファン、通称「ガチ勢」もいる。このガチ勢について、三兄弟の認識は違う。カイムとレオンハルトの場合、彼女たちとの年齢がやや離れ気味であることから、ガチ勢の行動は可愛らしい・微笑ましいものとして映っている。さらに、カイムとレオンハルトの場合、同年代の女性たちが二人に対してかなり積極的なため、人口の少なめの厳しい土地でも二人はうまいこと“彼女”に困らずにいる。ちなみに、その女性たちがカイムやレオンハルトに対して積極的なアプローチを試みるのは、ヴァルグリム家の女主人の座を狙ってといるというわけではない。彼女たちは「アリア様みたいな妹が欲しい」と思っており、アリアの義姉の座を主に狙っており、ヴァルグリム家の女主人の座は一緒にくっついてくるオマケの感覚でいる。つまり、カイムとレオンハルトが女性のモテるのもアリアの威光であるのだが、兄の矜持で二人ともそこのところは黙っている。一方で、フィンの恋愛対象の女性たちはアリアのファン
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第8話
黒曜魔塔。王都の端、聖堂や貴族街から意図的に距離を取らされた場所に、その塔はそびえ立っていた。その塔の入口に、四人の人影が立っていた。四人は揃って全身を長いマントで包んでおり、ここが王都の端でなければ『不審者』として憲兵隊に連れていかれてもおかしくない姿だった。.「……ここ?」「そうだ」訝し気なアリアの言葉に、カイムが頷く。「ここって、お城から大分離れてはいるけれど……お城の敷地内なんだよね」目測で五百メートルほど先に見えるのは城の中央にあるという尖塔。「城壁を超えてきただろう?」「……城壁」来た道を見れば、五十メートルほど先にアリアの腰の高さの壁。それが城壁。越えてというより、アリアは跨いできた。「城内に侵入するのがこんなに簡単でいいの?」「普通はダメだと思うが、実際にこうなのだから、あれこれ言っても仕方がないだろう」「だからアリアが城を落とすと言ったとき、誰も『無理だ』とは言わなかったんだな」.「さて、これからの計画だが……」カイムが懐から幾重にも折った紙を取り出した。「母上に、現地の確認をしておけと言われたから、俺とレオンハルトはこれの確認をしてくる」カイムが広げた紙は城の見取り図だった。エリスの古巣、近衛隊にいる友人たちが“協力の証”として送ってくれたものだが……。「これ、何人の協力者がいるんだ?」地図に書き込まれた“注意点”の筆致は様々。どう見ても、協力者は一人や二人ではない。さらに“注意点”として書き込まれている内容は、【見張りの兵、常に四名】など実用的なものもあれば、【見晴らし最高】や【城内案内受付所】のように城内の観光ガイドかと思ってしまうものもある。さらには……。「【占拠後におすすめ☆アリア様の部屋候補③】……って、①と②があるのか?」「どこかにあるだろう」「見ているだけで、目が痛くなる地図だな」「老眼じゃなくて良かったね」「これ、全部確認しなきゃだめか?」「……できる限りにしよう」そうして決まった役割分担。カイムとレオンハルトは城内の下見、そしてアリアとフィンはルシアン・ノクスの攻略。アリアは黒曜魔塔に近づくと、背を反らして上を見る。見える限り、上から下まで真っ黒の塔。「ここまで黒いとは、さすが『黒曜魔塔』と呼ばれるだけはあるわ」フードの裾を軽く上げて、アリアは感心し
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第9話
黒曜魔塔・最上階。ルシアン・ノクスは執務室の隣、寝室のベッドの上で書類を読んでいた。指を動かすのも面倒臭く、ルシアンは魔術で書類を宙に浮かせて読んでいた。「……はあ」ルシアンがため息を吐くと、空中を漂っていた三枚の書類が壁のほうに飛んでいった。研究費削減により、研究できなくなった計画書だ。「世の中、金だな……」世知辛い呟きだった。.  コンコン。隣の執務室と繋がった扉ではなく、廊下と繋がった扉からノックの音がしたため、ルシアンは首を傾げた。(あっちのドアがノックされるなんて珍しいな)ルシアンのところには研究の相談しかこない。ルシアンが研究の相談にしかのらないからだ。論文なら小難しい数式がたくさん並んでいても読む気になるが、予算案など単純な足し算だけで理解できる書類は読む気になれないルシアン。ルシアンはその手の書類の処理が得意な者を三名ほど補佐に任命し、彼らにその手の書類の処理を丸投げしている。彼らにはルシアンのサインを複写できる魔導具さえ渡してある。三人いれば、結託して横領などしない限り問題はない。それに魔塔に国事に関する決定権などなく、通達に対しては「諾」と言うしかないので、補佐たちがルシアンに代わって持つ権限など大したものではない。そして、ルシアンに研究の相談がある者は、執務室経由でルシアンの私室の扉を叩く。廊下に設置されている各私室のドアは、部屋の利用者の「どうぞ」という許可がなければ開かない仕様になっているが、執務室など公的な部屋の場合はその許可が不要。つまり執務室経由で入ってくればルシアンの許可を待つ必要がなく、ルシアンが面倒臭がりなことを知っている塔内の魔術士たちは「ルシアンに相談にのってもらう」という立場なので極力ルシアンの不興を買わないようにするのだ。その結果、ルシアンの私室の扉をノックして訪ねてくるのは二パターン。一つは掃除担当者。「ルシアン・ノクス様、いらっしゃいますか?」(若い女性? 夜這いか?)もう一つは、ルシアンと既成事実を作り、結婚になだれ込もうと企む女性。ルシアンは生まれは平民だが、魔塔の主となったときに男爵位を与えられている、通称「平民貴族」である。一代限りの爵位だが、貴族ではあるためルシアンは貴族の令嬢に人気がある。.貴族令嬢は生まれたときは『貴族』であるが、爵位を持つ貴族
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第10話
「アリア・ヴァルグリムと申します」(アリア・ヴァルグリム……)体幹が一切ぶれないキレイなカーテシーをぼうっと見ながら、ルシアンはアリアの名前を脳内で再生していたが……。(ヴァルグリムって……)ルシアンは、“ヴァルグリム”の名に気づいた。「北部辺境伯家の……」面倒臭がり、役所仕事は部下に丸投げのルシアンでも、魔塔のスポンサーくらいは把握している。それにヴァルグリム家の次男、レオンハルトはルシアンの学院時代の同期で、ルシアンにとっては知人以上で友人未満の存在だった。「ヴァルグリム家のご令嬢が何の御用ですか?」(魔道具の注文か?)辺境伯家から依頼される魔術を付与した武器や防具の制作は、貴族のちっぽけな見栄を満足させるような魔導具の制作と違い、国防の役に立つと実感できる仕事のため魔塔内でも人気のある仕事。さらに納品後に文句も言われず、請求額をきちんと支払われるため、魔塔としてはモチベーションアップに関わる重要な仕事である。何の魔物に対する武具か。どんな風にどこを守りたいのか。そんな風に依頼される魔道具の仕様を考えるのがルシアンは好きで、作るのは楽しいとルシアンも思っている。特にルシアンは火の魔法が得意のため、北部に生息する氷系の魔物に対する武具・防具の制作には学生の頃からレオンハルト経由で依頼されることも多くあった。(あれ、でも、聖女の用事できたのだったか?)ルシアンは首を傾げる。(聖女が俺に、何の用事だ? それに……)「……なんで黒装束なんだ?」聖女と言ったら「白」のイメージが強く、だからこそ自然と飛び出たルシアンの言葉に、アリアが首を傾げる。「白い服はお忍びに不向きなので」「聖女がお忍び?」「何か変ですか?」なんか変な感じはするが、心底不思議そうなアリアを前に、具体的に何が変なのかがルシアンは思いつかなかった。だから、出した結論は……。「危険じゃなければ、いいんじゃないか?」「それなら、大丈夫です」大丈夫という言葉に、ルシアンは眉間にしわを寄せた。根拠のない「大丈夫」ほど大丈夫ではないことが多く、そのいい加減さに何度も嫌な思いをしたからだ。「その根拠は?」「武芸の熟練度で言えば、そうですね、フロストリンクを数匹、一桁なら一人で狩れます」アリアの具体例に、ルシアンは驚く。根拠を尋ねて具体例を出してくる者は
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