雷獣のサウンドを考えると、まず感情の核を定めるところから始めることが多い。制作の現場では、雷獣が持つ「圧力」「威厳」「切迫感」を音でどう表現するかが出発点で、そこから楽器編成や音色、効果音の素材集めが決まっていく。私はこの段階で小さなモチーフをいくつか作り、動きや表情に合わせてどれが効くか絞り込んでいった。例えば、巨大感を出すには低域のブラスやシンセのハーモニックなうねりが有効で、瞬発力や雷の鋭さは高域の金属的打撃音やノイズで表現することが多い。
音素材の収集と加工は別の専門フェーズだ。実際の雷や金属板の録音、動物の咆哮、機械音などをフィールドで拾い集め、それをピッチシフト、タイムストレッチ、グラニュラー合成で変形していく。私が特に意識したのは「有機と無機の融合」で、例えば動物のうなり声に金属の共鳴を重ね、最後に重低音のサブシンセで地鳴りを足すと、自然感と超自然感が同居する音像になる。
最終段階ではミキシングと場面合わせが重要だった。効果音が鳴る瞬間の映像のカット割やカメラワークに合わせて音量や帯域を自動化し、音楽のテーマとも干渉しないようにサイドチェインや周波数分割で調整する。ここでの参照モデルとして、古典的な怪獣表現の影響が強く、'ゴジラ'のように低音の重みで存在感を作る手法を取り入れた部分もある。結局のところ目的は、ただ凄い音を作ることではなく、雷獣の「動き」と「意思」を観客に伝えることだったと感じている。