流れるような主題が耳に残る一曲から入るのがおすすめだ。まず僕が勧めたいのは、アルバムの中心を成すと感じた『棘のテーマ』だ。静かな導入からだんだんと展開していく構成で、弦楽器の刻みとピアノのささやきが重なり合い、作品の核となる感情が一気に伝わってくる。初めて聴いたとき、物語の輪郭が音だけで浮かび上がるようで、曲の中に世界観がぎゅっと凝縮されている印象を受けた。
演奏のダイナミクスが豊かで、場面によってはそのまま劇の序章として使えるほどの力がある。テンポの変化やブラスの短いアクセントが、ただの「美しいメロディ」以上の緊張感と期待感を生み出している。繰り返して聴くほど、新たなフレーズや細かな音の仕事に気づけるタイプの曲で、音楽的な楽しみが長持ちする。
結局のところ、曲を通して作品が何を語ろうとしているのかを一番端的に感じられる一曲だと思う。初めて『
イバラ』の世界に触れるなら、この『棘のテーマ』を入口にするのがいちばん腑に落ちる。