音楽ファンとして聴き分ける感覚も入れて整理すると、カバーは原曲に敬意を払いながら新しい息吹を吹き込む行為、パロディは原曲を“道具”にして別のメッセージを伝える行為、という違いに集約できる。『All Along the Watchtower』のように、オリジナルをまるごと別の色で塗り替えた名カバーが存在する一方で、原曲のフレーズを借りて批評やギャグにする作品群はまさにパロディだ。
制作やミックスの観点から見ると、カバーとパロディの区別は実務面で扱いがまるで違う、と強く感じている。カバー曲では基本的にオリジナルのメロディと歌詞を維持するので、録音・配信にあたっては著作権者に定められたルートで使用料を支払ったり、機械的許諾を取得したりするのが普通だ。例えば『Hurt』を『Nine Inch Nails』が書いた曲として扱い、ジョニー・キャッシュが自身の解釈で録音したケースは、演奏表現を変えても元の作詞作曲には正当な対価が支払われる。