6 回答
記憶をたどると、あの曲が一番先に浮かぶ。『The Witcher 3: Wild Hunt』の中で心が折れそうな場面に流れる“Wolven Storm”(通称「ヴォルヴェンの歌」)は、刹那的な優しさと哀愁が同居していて、いつも胸を締めつける。
ゲームの中では歌詞や歌い手の表情が状況を補完してくれるけれど、音源だけでも十分に物語を運んでくれる。声の温度、簡素な伴奏、そして旋律が交互に現れては消える作りが好きだ。個人的には旅の終わりや誰かを失った後の余韻にこれを繰り返し聴くと、すべてが一点に収束する感覚になる。
音楽としての完成度も高いが、感情を伴うとさらに深みが増す。思い出が混じり合った音は、ただのBGMを超えてたしかな物語を紡いでくれると思う。
戦士のテーマや英雄譚が欲しいときに“Geralt of Rivia”を選ぶことが多い。冒頭からぐっと引き込まれるメロディラインがあって、聴くだけで主人公の背負うものや歩んできた道筋が浮かんでくる。年齢や立場を問わず、ある種の覚悟を促してくれる曲だ。
力強さと哀愁が同居しているのが特徴で、単なる戦闘曲や勝利のファンファーレではない。僕はこのテーマを聴くとき、過去の選択と向き合うような感覚になる。音が語るのは栄光だけでなく代償や孤独で、それが胸に刺さるのだ。
他のゲーム音楽と比べると、『NieR:Automata』のような哲学的な重みとは違うけれど、こちらもまた人を深く動かす力がある。余韻が長く残る曲として、今でも何度もリピートしている。
静かな追憶や旅情を求めるときは“Silver for Monsters”をよく選ぶ。柔らかい旋律と控えめなリズムが、広がる風景の中をゆっくり歩くような気分にさせる。年を重ねるごとにこうした音の価値がわかってきて、細部に宿る寂しさを楽しめるようになった。
重ねられたハーモニーが少しずつ色を変えていく作りで、耳を傾けていると時間がゆっくり流れるのを感じる。僕はよく読書の合間にこの曲を流して、感情の整理をする。熱を上げるタイプの曲ではないが、その分長く寄り添ってくれる良さがある。
短い時間で心を落ち着けたいときにぴったりで、終わったあとにじんわりとした安心が残るのがいい。
妖しいフォーク調を求めるなら、“Ladies of the Wood”が断然おすすめだ。怪しげなコーラスと不協和音めいたアレンジが混ざり合い、聴く側の不安や期待を巧みに刺激する。若い頃に迷い込んだ物語の森を思い出すような感覚があって、惹きつけられて止まらない。
この曲は単純に美しいだけではなく、怖さもはらんでいるのが魅力で、物語の裏側に潜む不穏さを音で表現している。自分の中で“英語の歌詞のない語り部”のように機能していて、場面の空気を一瞬で塗り替えてくれる。
似た演出をする作品として『Game of Thrones』のテーマが思い浮かぶが、こちらはもっと土着的で生々しい。聴き終えたとき、背後に何かが息をしているような残像が残るのが好きだ。
北辺の要塞を思わせるような重厚さを欲するとき、“Kaer Morhen”に手が伸びることが多い。長年の友や戦友との記憶、古い城壁の匂いがほのかに漂うような音作りで、ただ沈思黙考するだけで頭の中に景色が広がる。僕はこの曲を聴きながら過去の決断や人間関係を反芻する習慣がある。
楽器編成の落ち着きとメロディの繰り返しが、安心感とノスタルジーを同時に与えてくれる。激しい盛り上がりがなくても心を動かす、そういう力を持った一曲だ。音の余白に意味を持たせる作りで、沈んだ気分を整理したいときに重宝している。
比較としては『Elder Scrolls V: Skyrim』の広がり方と違って、こちらは内向きの深さが魅力だ。終わったあとに静かに笑ってしまう瞬間が好きだ。
好戦的な気分のときは“Hunt or Be Hunted”を選ぶことが多い。激しい打楽器と突き刺すような弦楽が合わさったアレンジで、集中力を一気に高めてくれる。個人的には難所を攻略する前にこれを鳴らすと、自分が一歩先に踏み出せる気がする。
この曲は映画的な盛り上がりがあって、緊張感を持続させるのが上手い。リズムの刻み方やブラスの使いどころに理屈抜きで心を掴まれるから、戦闘曲としては完成形に近いと思う。聴くと自然とテンポに合わせて身体が動くから、作業BGMにも向いていると感じている。
比較対象としては『The Last of Us』の静と動の対比も好きだけど、こちらはどちらかというと前に出る力をくれるタイプだ。聴き終えたあとは少し汗をかいたような高揚感が残る。