真っ先に目に付いたのは、アニメ版『
食道楽』が原作の人物を単に動かすのではなく、設定そのものを幾つも書き換えている点だった。
僕は原作を追いかけていたので、主人公の年齢設定が下げられたことにまず驚いた。原作ではある程度人生の重みを背負っていた描写があったのに、アニメでは活力と好奇心を強調するために若々しく、無邪気寄りの側面が強められている。これに伴って過去のトラウマや家庭環境のディテールがカットされ、性格の陰影が薄くなった印象がある。
次に、準主役級のサブキャラに関する改変が目立った。原作で個別の職業や家族構成が細かく描かれていた人物が、アニメでは職業を変えられたり、複数のサブキャラの役割が一人に統合されたりしている。これによって物語のテンポは良くなったけれど、人物ごとの固有性や背景説明が削られ、動機付けがやや単純化された場面も目立つ。
最後に、デザイン面での“親しみやすさ”の調整だ。原作の渋さや年季を帯びた表情が柔らかくなり、表情表現や服装がアニメ的に洗練されている。こうした改変は視聴ハードルを下げる一方で、原作ファンとしてはキャラの深みが薄まったと感じることがあった。類似の扱いは過去の作品でも見られ、たとえば'鋼の錬金術師'の初期TV化でも人物描写のトーンが変わった例を思い出す。自分としては、その調整が好きになるか否かは、見る側が何を期待しているかに大きく依ると思っている。