涅槃、そして女王になれ
ロッシファミリーには一つの掟がある。
次期「ドンナ」(ドンの伴侶、マダムと同じ)の座を望むなら、その実力を証明しなければならない。たった一年で、3億ドルものクリーンな金を稼ぎ出すこと。
ファミリーの援助は一切なし、すべて自分自身の力だけで。
ヴィンセントのため、私は10年もの歳月を費やしてこの試練に挑み続けた。ゼロから10社もの会社を立ち上げた。
しかし毎回、ゴールテープを切る直前になって、必ず何かが狂い出す。すべてが……脆くも崩れ去ってしまうのだ。
そして今年、私はついにやり遂げた。
激しく打ち鳴る心臓を抱えながら、私は監査報告書を手に彼の書斎へと駆け込んだ。ようやく勝ったのだと思った。
だが代わりに突きつけられたのは、私のこれまでの人生すべてが泡影になったという事実だった。
彼は私が築き上げたビジネス帝国を、すべてエヴァに引き渡したのだ。私の父の隠し子である、あの女に。
理由はただ一つ、彼女がかつて彼の命を救ったとされているから。そして、彼がエヴァを真のドンナにしたかったからだ。
私は諦めた。彼を。そして、彼と共にのし上がるという私の家族の夢を。
それから私はS市のシンジケート「バック」に電話をかけた。
「そちらの結婚の申し出だけど」
私は言った。
「お受けするわ」