LOGIN王太子との婚約破棄を宣告されたその日、エリカは悟る。――ここは前世で読んだ乙女ゲームの世界、そして自分は“悪役令嬢”だと。罪をでっち上げられ、家からも切り捨てられた彼女は、微笑み一つで裁きを受け入れる。「殿下の物語を汚さぬよう、私が退場いたします」――そう告げて追放された彼女を待っていたのは、誰も近づけぬ“精霊王の森”。そこで彼女だけが選ばれ、世界の理を覆す力と、真実の愛に出会う。脚本を壊す悪役令嬢の逆転譚、ここに開幕。
View Moreพันตรีสุริยะ สุริโยปกรณ์ เดินงุ่นง่านวนไปวนมาจนพื้นห้องแทบทรุด ใบหน้าเข้มที่ประกอบด้วยเครื่องหน้าคมจัด ออกหล่อเหลา ถูกแต่งเติมด้วยดวงตาคมกริบดุดันอยู่ตลอดเวลา และประดับด้วยปลายจมูกโด่งแหลม ริมฝีปากสีเข้ม หยักลึกได้รูปสวย รวมๆ แล้วเจ้าของร่างสูงใหญ่ที่เดินวนเป็นเจ้าเข้าอยู่นี่ รูปงามสมชายชาตรีทีเดียว
“ผู้พันครับ ผู้พันจะหมุนอีกนานไหมครับ ผมเวียนหัวไปหมดแล้วนะครับ”
จ่าเฉย แต่ไม่เฉยเหมือนชื่อ ถามผู้บังคับบัญชาหนุ่มอย่างอดไม่ได้ เพราะตนเริ่มวิงเวียนเกือบคลื่นไส้เต็มทีแล้ว
“มึงเวียนหัว มึงก็ปิดตาไว้ อย่ามองกูสิวะ”
“เว้ย...กูจะทำยังไงดีวะ กูอยู่ของกูดีๆ ก็หาเหาโยนใส่หัวกูซะงั้น โอ๊ย...คู่หมั้นไปไหนวะ ทำไมต้องเป็นกูด้วย”
พันตรีสุริยะตะโกนลั่น และยกมือขยี้เส้นผมที่ตัดสั้นเข้ารูป ราวกับคนบ้ายังไงยังงั้น ดีหน่อยที่ผมสั้น ถ้าผมยาวกว่านี้คงไปยืนข้างถังขยะแล้วล้วงมือเข้าไปหาของกินได้แล้ว
“เอ่อ...ผู้พันยะเป็นอะไรไปเหรอครับ มีอะไรให้ผมช่วย ก็บอกได้นะครับ เผื่อผมจะช่วยได้” จ่าเฉยบอกอย่างหวังดี
“แล้วผู้พันเป็นอะไรไปล่ะครับ ถึงต้องเดินไปเดินมาจนรองเท้าสึก”
“ก็...” พันตรีสุริยะเกือบหลุดปากบอกความลับออกไป “เฮ้ย...อย่ารู้เลย” พูดจบร่างสูงก็เดินหนีไป ปล่อยให้จ่าเฉยยกมือเกาหัวแกรกๆ อย่างมึนงง
ไม่กี่ชั่วโมงต่อมา พันตรีสุริยะที่แต่งกายด้วยชุดลายพราง และพรางหน้าด้วยการทาสีจนดำปิ๊ดปี๋ ซุ่มเงียบอยู่หลังพุ่มไม้ใหญ่ ดวงตาคมกริบจับตามองไปยังกระท่อมกลางป่าหลังน้อยอย่างตั้งใจ หากแต่ในใจนั้นกำลังเดือดปุดๆ เมื่อคิดว่าผู้บังคับบัญชาส่งตนให้มายืนอยู่ตรงนี้อย่างง่ายดาย
‘ถ้ารู้ว่ามันง่ายดายขนาดนี้ ทำไมไม่ส่งคนอื่นมาแทนวะ เรื่องแค่นี้ทำไมต้องให้กูทำด้วย บ้าฉิบ...ลูกสาวคนเดียวอยู่ตรงไหนก็รู้ดี แล้วทำไมต้องเป็นกูด้วยวะ’
ใจคิด แต่ดวงตายังคงจับจ้องไปที่เป้าหมายไม่วางตา สมาธิถูกจดจ่อไปที่กระท่อมหลังนั้น แล้วดวงตาคมก็หรี่ลง เมื่อมีบางอย่างเคลื่อนออกมาจากกระท่อม
จันทร์ดาราใช้ความสามารถของตนแก้มัดเชือกที่ผูกข้อเท้าได้สำเร็จ แต่ข้อมือบางยังคงมีเชือกผูกอยู่ และเธอก็ไม่มีเวลาจะแก้มันออก นอกจากตัดสินใจย่องเงียบออกมาทั้งที่มือทั้งสองข้างยังถูกมัดติดกันแน่น หญิงสาวใช้แผ่นหลังแนบฝา หันซ้ายหันขวาดูทางหนีทีไล่ เมื่อเห็นว่าปลอดคน ร่างบางก็ออกวิ่งอย่างไม่คิดชีวิตทันที
สุริยะผุดวิ่งตาม โดยก้มตัวลงแต่ยังคงซอยเท้าตามร่างระหงไปเรื่อยๆ
“เฮ้ย! มันหนีไปแล้ว ตามจับมันให้ได้เร็วเข้า”
เสียงโจรเรียกค่าไถ่ดังตามหลัง ยิ่งทำให้จันทร์ดาราต้องซอยเท้าให้เร็วขึ้น
สุริยะออกจากที่ซ่อนและยิงใส่กลุ่มโจรเรียกค่าไถ่ แต่โชคร้ายที่กระสุนไม่โดนพวกมันเลย ชายหนุ่มวิ่งตามร่างบางจนทันด้วยฝีเท้าที่ไวกว่าอยู่หลายขุม และลากแขนบางวิ่งอย่างไม่คิดชีวิต แต่มือที่ถูกผูกติดกันของจันทร์ดาราและไพล่ไปด้านหลังนั้นเป็นอุปสรรคในการฉุดรั้งจากคนร่างสูง ทำให้ปลายเท้าบอบบางสะดุดรากไม้ปลิวหวือลงกระแทกกับพื้นดินจนจุก ร่างสูงจึงต้องหยุดวิ่งหันมารวบร่างบางขึ้นพาดบ่า และพาวิ่งทั้งๆ อย่างนั้นเหมือนไม่หนักเลยสักนิด
“ว้าย...นายเป็นใครน่ะ นี่! ปล่อยฉันลงเดี๋ยวนี้นะ” จันทร์ดาราหวีดร้องวี้ดว้ายไปตลอดทาง
“ปล่อยให้ไอ้พวกนั้นมันฆ่าทิ้งรึไง หุบปากซะถ้ายังไม่อยากตาย”
“ก็แล้วทำไมไม่ปล่อยให้ฉันวิ่งเองเล่า”
“คุณจะวิ่งไปได้สักกี่ก้าว เดี๋ยวก็ล้มลงไปอีก เป็นตัวถ่วงให้ไอ้พวกนั้นมันไล่ยิง”
พูดยังไม่ทันขาดคำ ลูกกระสุนปืนก็เฉี่ยวหูสุริยะไปจนร้อนฉ่า
“กรี๊ด! นี่นาย...วิ่งให้มันเร็วกว่านี้หน่อยสิ ไม่เห็นรึไงว่าพวกมันไล่ตามมาจะทันแล้ว”
คนไม่ช่วยแต่ยังเอาเท้าราน้ำ หวีดร้องแถมเร่งยิกๆ ทั้งที่หัวก็ห้อยต่องแต่ง เลือดในกายไหลมารวมกันอยู่ที่หน้านวลจนแดงเถือก
“โอ๊ย...แล้วนี่เห็นว่าผมกำลังเดินอยู่รึไงแม่คู้ณ ตัวคุณไม่ใช่นุ่นนะจะได้เบาหวิว นี่ผมคิดว่าผมอุ้มลูกช้างซะอีก เร็วแค่นี้ก็ดีแค่ไหนแล้ว”
“ถ้าฉันเป็นลูกช้าง นายก็เป็นพ่อช้างล่ะ โอ๊ยๆๆ มันตามมาใกล้แล้ว” จันทร์ดาราเร่งคนที่แบกเธอวิ่ง แต่แล้ว... “กรี๊ด” จันทร์ดาราหวีดร้องดังลั่น เมื่อร่างของเธอและสุริยะพุ่งลงสู่เบื้องล่าง หลังจากที่วิ่งมาเรื่อยๆ แล้วสุริยะก็ตัดสินใจกระโดดลงหน้าผาที่เห็นเบื้องล่างนั้นเป็นธารน้ำตกใหญ่
สุริยะกอดร่างบางไว้แน่น เมื่อร่างของทั้งคู่ร่วงลงสู่ผืนน้ำ “ตูม”
“เฮ้ย...มันบ้าหรือมันอยากตายกันวะ กระโดดลงไปได้ยังไง ไปอีกไม่ไกลก็เป็นน้ำตกแล้ว”
“เออ...งานนี้พวกเราชวดว่ะ ป่านนี้มันก็คงตายเป็นผีเฝ้าป่าแล้วล่ะ”
聖具庫は静かだった。金具は冷たく、紐は乾いている。割れた鈴は、鳴らないまま、低く脈を打つ。「高さ、このまま」リオンが紐を指の腹で支える。結び目は動かさない。棚の瓶の水面が、半拍遅れて落ち着く。ルシフェルは鈴片の接ぎ目を目だけで追った。胸に手は置かない。呼吸は一定だ。扉の内側で、二人の息がそろう。木目の温度が、指の腹に移る。「……保て」ルシフェルが短く言う。声を強くしない。喉の力を上げずに、場を支える。外の空気は薄い。輪の唸りは遠くに下がって、草の先で止まる。「聞こえる?」私は扉に額を寄せず、口形と息だけで落とす。舌先を湿らせて、音を乗せない。脈が、わずかに返事をした。耳ではなく、指先でわかるくらいの強さ。「……エリカ」内から私の名が落ちる。ためらいはない。息がぶつからない。「うん。ここにいるよ」私は小さく答える。声は立てない。それでも、届く。棚の瓶の皺が一つ消えた。逆鐘は鳴らずに、脈だけを刻む。「名で行こう」リオンが紐を持ち替え、顎で合図する。紐は引かない。支えるだけ。私は喉を使わず、唇の形だけで置く。「ルシフェル」扉の木目が、指先で温かい。間を半拍だけ置いて、内側の声が返る。「……ここに」壁の灯が一つ、白く点いた。小さく、一定。すぐ揺れをやめる。同時に、輪の縁の圧がひと目盛りだけ下がった。私は息を吸い直す。深くは吸わない。肩で止める。「もう一度」間を短くして促す。「エリカ」今度はまっすぐに来る。怖さは混じらない。輪の縁が薄くしぼみ、靴裏のぐらつきが消えた。前のめりの重心が、自然に後ろへ戻る。外の列で、肩が連鎖的に落ちる。柄から指が外れ、戻らない。「隊長、どうします」兵の声は上がらない。距離を崩さず、息だけ問う。「上げない。耳、休めて」ミレイユの声は柔らかい。顔は見せない。剣に手は行かない。「命令は進攻で」「だから、休めるうちに。倒れる前に下がるの」短く、そこで止める。列の重心が、わずかに後ろへ下がった。扉は静かに立っている。私は掌を木目から外さず、熱を確かめる。「前、見て。半拍、落として」内側からリオンの合図。紐はそのまま。圧は上げない。私は名をもう一度、口形で置く。「ルシフェル」「ここに」内側の呼気は乱れな
聖具庫の前はひんやりしていた。金具は指の腹で冷たい。紐は乾いていて、少しざらつく。割れた鈴は、口を閉じたまま黙っている。「ここで合わせよう」リオンが棚の奥から薄い紙を抜いた。角が擦れて、文字はところどころ薄い。“逆”の字だけが、はっきり残っていた。「鳴らすんじゃない」ルシフェルは目を細める。扉の向こうの息が整うのを待って、短く続けた。「黙ってるほうを……揺らす」「うん。じゃあ、俺が紐。君は欠片を」リオンが結び目を一度ほどき、指で撫でて柔らかさを戻す。紐のきしみが小さく逃げる。私は鈴の欠片をそっと持ち上げた。重さはあるのに、冷えは薄い。「待て」ルシフェルの指が私の手首に触れる。脈は乱れていない、という合図。私は顎だけで返す。回廊の灯は二つのまま。聖具庫の奥には古い布と瓶。赤い果実の匂いが、どこかにまだ残っている。「向き、合う?」リオンが言う。私は欠片の縁を、元の鈴の割れ目に並べる。ぴたり、とまではいかない。それでも、口が閉じた形に近づく。「今」ルシフェルの声は短い。三人の呼気が、同じ高さに落ちる。リオンが紐をわずかに引く。私は欠片を、重ねるだけで押さえない。鳴らない。ただ、耳の奥の圧が少しほどけた。棚の瓶の中で水が静かに落ち着く。金具の冷えが、痛くない。「来てる」リオンが低く言う。私はうなずかない。目で受け取る。ルシフェルは鈴から視線を外さず、呼気を浅く切り替えた。「もう一度、合わせる」リオンが合図する。私は欠片の角をほんの少しだけずらす。紐は引かない。維持する。保ったまま、次の呼気まで耐える。空気が一枚、軽くなった。輪の縁に目に見えない段差ができ、息がそこをまたいで流れた。誰も声を出さない。それでも、聖堂全体が小さく息を返した気配だけがある。「道、できた」ルシフェルの目が細くなる。痛みは来ない。彼の肩が、半分だけ落ちる。扉のほうで、木目が静かに温かい。叩かない扉は、そのまま立っている。リオンは掌を一度だけ開閉して、指先の血の通いを確かめた。外は輪の唸り。押し出す音はないのに、言葉は剥がされていく。それでも、今はわずかに通り道がある。「ねえ」私は扉へ近づかず、呼気だけ揃える。「大きな声はいらないよ。ここで、息を合わせよう」外にいる私は、唇を
扉は叩かない。木目は静かに温かい。金具は指先で冷たい。「無事……で、よかった」リオンが低く言う。息は短く区切られている。「そっちこそ。鎧、重くない?」私は笑いに寄せる。声を上げすぎない。ルシフェルは扉の縁に目を置いたまま、私の手首へ指を乗せる。脈は落ち着いている。彼は視線だけで合図した。「離れるな」「離れない。……今は」一瞬だけ、肩が触れた。抱きしめるほどではない。それでも体温は渡る。外気がわずかに揺れて、草の先が伏せた。封声の輪は門の前で薄く唸り、音を剥いでいく。息の音さえ、すぐに浅くなる。「輪を、半歩だけ下げて」リオンが顎で示す。兵の肩が一段下がる。輪は土の上で小さく軋み、位置を譲った。場が整う。誰も座らないのに、席ができた。扉は真ん中に、息の通り道のように立っている。「ねえ……誰も傷つけないで」私は扉の木目を見たまま言う。言い切らずに止める。「私が出るから。……静かに来て」輪の縁から、柔らかい声が届く。姿は見えない。距離は守られている。「声は止めるだけ。痛くしない」女の声だ。落ち着いていて、急がない。「それが一番、痛い時もある」リオンが低く返す。目は前だけを見ている。ルシフェルの指が脈を一度押す。軽い強さだ。止めというより、合図。「待て」私はうなずかない。目で答える。胸の奥で息を折りたたむ。輪の内側で、兵の誰かが柄へ指をかけた。金具がかすかに鳴る。前へ出る筋肉の動きが、空気に混じった。リオンが顎をわずかに落とし、視線だけで前を切る。半拍、落ちる。指が柄から離れる。肩の力が流れた。足音は生まれない。土は柔らかく受ける準備だけをしている。「叩かなくていいよ」私は扉に額を寄せないまま言う。「ここで、呼吸を合わせよう」「壊す前に、読む」輪の向こうで女が小さく言った。紙片を揃えるような、平らな音が一つだけ続く。剣に手は行かない。赤い果実の匂いが、扉の陰でまだ薄く残っている。昨日の灯が、空気の奥で冷めないまま座っている感じ。私は舌の奥で甘さを探さない。「私が行く。……すぐ戻る」「約束」ルシフェルが目を逸らさず言う。手首の脈に触れた指は離れない。「うん。嘘じゃない」扉の木目は温かいまま。輪は半歩後ろで薄く唸り、息を剥いでいる。空
井戸の縁まで戻った。冷えは薄い。手のひらの温度で、石が静かに落ち着く。「言葉、置いていくね。……願いだけ」私が囁くと、ルシフェルは頷き、脈に触れた。指先が軽い。落ち着いてる、という合図だけが伝わる。小さな机から赤い果実を一つとる。爪で浅く入れて、半分に割る。においは甘いのに、喉は乾かない。「半分だけ、落とす」「待て。戻れない感触が来たら、すぐ手を」「うん」片割れを、井戸の面にそっと触れさせる。落ちる音はしない。吸われる。面が、息をひとつだけしたみたいに薄く動いた。赤が灯に変わる。井戸の底から、細い帯が立ち上がる。天の穴へ向かって伸びる。音はないのに、胸の奥が少しあたたかい。「……行った、と思う」「脈、問題ない。ここで止める」彼は果実のもう半分を私の手の中に戻させ、井戸から半歩離した。帯は途切れない。薄く、上へだけ進む。床のひびが静かに呼吸している。私は深く吸わない。肩の高さで止める。「ことば、いらなかったね」「今は、そのほうがいい」天窓の向こうで、細い光が一度だけ瞬(まばた)きをした。街の夕方は、ちょうど灯が入るころだった。露店の上の角灯が揃って、ごく短く明滅する。誰も理由を言わない。けれど、顔が上がる。「今、光……」子どもの声に、親の手が止まる。「風かも。……でも、きれい」笑い声が小さくこぼれて、すぐ戻る。通りはいつもどおりなのに、目の奥だけが明るい。森の縁では、封声の輪の下で列が息を合わせていた。輪は音を剥がし続けている。それでも、空のほうから細い帯が降りてきて、重なりの間に狭い道を作る。「前を見て。半拍、落として」リオンは顎で合図し、目で数える。先頭の兵の足が石に噛んで、膝がわずかに揺れた。握っていた柄が、すべり落ちる。肩の力が抜ける。「今なら……」看視役の騎士が、誰にも聞こえないくらいの声で言う。リオンは目だけで返す。「借りる。戻す時は静かに」輪の内側で、光の細い帯が道になる。音のない道。誰も喋らないのに、進む場所だけがはっきりする。廃聖堂の井戸は、まだ薄く灯っていた。赤い帯は、呼吸に合わせてわずかにゆれるだけで、荒れない。「もう一度は、しない」「うん。半分で十分」果実の片割れは机に戻した。皿が小さく鳴る。私は手のひらを見た。果汁はすでに乾き始めていて、匂いだけが
朝の鐘が、王都ルクシアの屋根をまたいで転がっていく。市場の露店では、パンの湯気と塩魚の匂いのあいだを、噂が駆けた。「見たか、北の空の光柱を」「禁域の森だってよ」「燃えなかったんだ、火なのに」「聖女様が現れたんだ」「いや、魔だ。あんなもの、神のものじゃない」白い石畳を渡って、大聖堂の扉が開く。灰金の髪を背で束ねた司祭セレノが、静かに回廊を進んだ。笑みは薄い、瞳は冷ややかだ。「報告を」侍者が膝をつく。「北の禁域上に光柱。炎は人を焼かず、盗賊を退け、親子を救ったとのことです」セレノはひとつ瞬きし、祭壇の燭台へ視線を移した。「禁域は神の領域。人が踏み入れば、それだけで罪。まして“女
夜の森は、しんと静かだった。風は弱く、葉は眠っている。暗さは深いのに、怖さはない。手のひらの“赤い花”が、弱い明かりのように脈を打っているからだ。花弁は四枚。呼吸に合わせて、ふっと明滅する。昨日、火の精霊がくれた印。痛みはもう薄い。ただ、温かさだけが残っている。背後から、低い声がした。「その花は、お前が失わぬための“記録”だ。命も想いも、燃やせば消える。だが、灯せば伝わる」ルシフェルが近くに立っていた。白い髪が夜の光を集め、蒼い瞳は静かだ。「……なら、私は灯す側でいたい」そう言うと、彼はわずかに目を細めた。肯定とも否定とも言わない。けれど、その沈黙は、私の選び方を見守る沈黙
夜が明けた。霧はほどけ、昨夜まで神の息遣いで満たされていた湖は跡形もない。ただ、湿った草と黒土の匂いだけが残り、森は深い静けさを取り戻していた。手の甲の“白い羽”が、鼓動と同じ拍で淡く瞬く。脈に合わせて、皮膚の下で小さく光が震え、私という輪郭の内側を確かめるみたいに広がっては収まる。「その紋が燃える時、お前の心が嘘をついた証だ」すぐそばで、低い声。振り向けば、光の気配を羽織った男――精霊王ルシフェルが、朝の冷気を歪ませるように立っていた。白い髪は光を持ち、瞳の蒼は澄みすぎて、見る者の曇りを逃がさない。私は紋に視線を落とし、そっと笑う。「なら、燃やさないように生きるわ」ルシフ
霧が薄くほどけ、森の奥に静止した水面が現れた。湖――と呼ぶには、風がなさすぎる。鏡のような平らさは、空と地の境目を消し、私の立っている場所が上下どちらなのかさえ曖昧にする。空気は澄みすぎて、吸い込むたびに胸の奥がきゅっと痛い。(金の羽根……)前話のあの羽根と同じ光が、霧の中からはらはらと降る。触れれば溶ける雪のように消え、代わりに温度だけが肌へ残る。湖の中央に、淡い光柱が立ち上がった。そこだけ世界が息を潜めている。鳥の声も、葉擦れも、私の鼓動でさえ小さくなる。私は湖畔へ進む。足元の草は踏まれても折れず、靴の裏から静かな温かさがじんわり昇ってくる。水際で立ち止まると、鏡の下にもう一