彼のいない七日目
白石家が破産の瀬戸際に立たされたあの年、父は取引として、私を白石恭介(しらいし きょうすけ)に嫁がせた。
あの時、彼には内村香苗(うちむら かなえ)という幼なじみの婚約者がいたなんて、私は知る由もなかった。
その後、父はスキャンダルに巻き込まれ、会社は破綻の危機に陥る。
なのに、恭介は香苗を家に迎え入れ、「彼女に盛大な結婚式を挙げてやる」と言い放った。
私は泣き喚きもせず、ただ黙々と荷造りを始めた。
すると恭介は冷ややかに笑って言う。
「そんな稚拙な駆け引き、もう通用しないぞ。まだ自分が向井家のお嬢様だと思っているのか?」
彼は知らない――
あの夜、酔っぱらった彼が書いた離婚届を、私がまだ持っていることを。
そして、あと七日もすれば、私は父と共にこの国を離れる。