Chapter: 【義妹SIDE】王女リノアと帝王がのたうち回る「……げほっ……ごほっ……ごほっ」「……げほっ……ごほっ……げほっ」 王女リノアと帝王は親子仲良くベッドで苦しんでいた。二人は流行している伝染病にかかったようなのである。(ふふっ……良い気味ですわ……最高の眺めです。ざまぁみろですわ!) その様子をディアンナはほくそ笑んで見ていた。この時ばかりはディアンナの人間性が歪んでいるからそう思えるのだ、とは誰も思わないであろう。 二人の悪辣非道ぶりからすれば、因果応報というより他にない。まさしくざまぁみろという感じであった。「パパ……苦しい、苦しいです。リノア、とても苦しいです。げほっ! ごほっ!」「そうか……リノア、苦しいか。我も苦しいぞ。げほっ! ごほっ! げほっ!」 リノアと父、帝王は咳込み、大層苦しんでいた。 恐らくはディアンナが昔かかった伝染病と同じ種類の病に二人はかかったのだ。ディアンナは前にかかった事で抗体ができていた、恐らくはそんなところである。ディアンナにとって病にかかった事は最悪の出来事ではあったが、それでも怪我の功名のような部分があったようだ。おかげでディアンナはその病にかからなくて済んだのである。その点、あの時の不幸な体験に僅かばかりの感謝をしなければならない、そうディアンナは思っていた。「パパ……苦しい、苦しいです。リノア、このまま死んでしまうのですか? そんなの嫌です。げほっ……ごほっ! ごほっ!」「げほっ……ごほっ! ごほっ! ば、馬鹿を言うな! リノア! 我がそんな事をさせるものか! なんとしてでもこの病を治してみせる! リノア! 決してお前を死なせはせん! 死なせはせんぞ! げほっ……ごほっ! ごほっ
Última atualização: 2026-02-20
Chapter: 戦争が中断されます戦争中の事でした。私は相変わらず王宮で薬を作る毎日です。今、戦地はどうなっているでしょうか。やはり多くの血が流れ、命が失われている事と思います。想像するしかない事ではありますが。戦争は嫌なものです。誰だって嫌なものだとは思いますが。「はぁ……はぁ……はぁ!」 そんな時の事でした。私の部屋にヴィンセントさんが飛び込んできます。普段の冷静沈着さは見られません。随分と焦っている様子でした。一体、どうしたというのでしょうか。「どうしたのですか? ヴィンセントさん?」 私は作業の手を止め、尋ねるのです。「ア、アイリス様。大変です」「大変といわれましても、何がどう、具体的に大変なのですか?」「それがなんとアイリス様」「なんと?」「我が王国ルンデブルグ及び隣国アーガス、それと帝国ビスマルクによる戦争が中断されました!」 私はヴィンセントさんからの報告を聞いてとても驚きました。「それは本当ですか? ヴィンセントさん」「は、はい! 本当です。アイリス様」「で、でもなぜですか? なぜ急に戦争が中断されたのですか?」 理由がわかりませんでした。なぜ急に戦争が中断されるのか。あんなにも帝国は戦争に勝利し、ルンデブルグを我が物としたかったはずではないですか。 特にあの王女リノアのエル王子やレオ王子に対する執着は異常でした。その執着の次元はまるで子供が玩具を欲しがって駄々をこねるほどの低俗さでしたが。 どうやら父上である帝王は娘であるリノア王女のいう事に絶対服従のようでした。よく言えば子煩悩だったのでしょう。それだけではないはずです。帝王自身がルンデブルグを植民地化する事で帝国の利権を拡大するという思惑があったはずです。 それがなぜ、今になって急に戦争を中断する事になるのか。私はヴィンセントさんの報告に耳を疑うのでした。「それがアイリス様。なんでも戦争中に例の伝染病が流行ったようです」「伝染病ですか…&h
Última atualização: 2026-02-18
Chapter: 【義妹SIDE】帝国で新種の流行病が蔓延する「……ううっ」「し、しっかりしろ! もうすぐだぞっ! もうすぐ母国に戻れるからなっ!」 大勢の負傷した帝国兵達が帝国に運ばれていった。応急処置はしているが、それでも万全の治療はその場では施せない。 戦えなくなった負傷兵は母国に送還される事となっているのだ。 しかし、この事によって帝国は大混乱に陥る事になる。この事をまだ帝王も王女リノアも未だ知らなかったのだ。 ◇「ふむ……戦況はどうなっているのだ?」 帝王は腹心である大臣から報告を受けている。大臣とはいっても帝王からすれば権力の格差は著しい。実質的には小間使いのようなものなのである。故に帝王の決定に対して物申す事など決してできなかった。「は、はぁ。それがでありますね。帝王陛下。ルンデブルグとアーガスが共同戦線を張っております。それ故に思っていたよりも兵達も手こずっており、戦況は芳しくなく」「なんだと! この馬鹿ものが! なんとかせい! どのみちルンデブルグを攻め落とした後はその隣国であるアーガスも攻め落とす予定なのだぞ!」「は、はっ! 兵達も全力を尽くしているのですが、なかなか思うようには。やはり戦争にはイレギュラーな出来事がいろいろと起こります故」「ま、まあいい。戦況の報告はそれくらいで」「は、はぁ……よい報告ができず誠に申し訳ありません。それともう一つ、気がかりな報告があります」「なんだ? 報告とは、申してみよ」「そ、それが、なんでも我が帝国で件の伝染病が大流行を起こしたそうです!」「な、なんだと! それは誠か!」「は、はい。なんでも戦場で兵士達が集団感染を起こし、わが国にその伝染病を持ち帰ってきたそうです」「くっ! 何たる事だ! 戦争中であるというのに! このような余計な手間が発生するなど!」 帝王は憤慨していた。元々から子供のような人格の持ち主なのである。自分の思い通りになんでもなってきたから、少しでも思い通りにいかないと憤慨するのである
Última atualização: 2026-02-17
Chapter: 戦争の最中、異変が起こるのでしたついには戦争が起こってしまいました。兵士達を率いるレオ王子とエル王子は戦線に出向いていました。とはいえ、王族は前線にまでは出ないようです。後方からその様子を見ることになります。とはいえ、見ているだけではなく、作戦指示など色々とやることはあるようですが。「へっ……やっぱ戦争は血湧き、肉躍るな」 レオ王子はどこか嬉しそうでした。男性にはそういう本能があるのでしょう。基本的に男とは競争が好きな生き物です。そしてその競争に勝利することが生物としての至上命題なのです。 レオ王子は自分の本能に素直な方です。故に自分の内側からにじみ出てくる高まりを抑えきれていない様子でした。「こら。レオ。不謹慎だぞ」「けどよ、兄貴。戦争だぜ。男なら胸躍るだろ? 俺も前線で闘いてぇなぁ」 レオ王子はそう語ります。「本音だとしても堪えろ。前線では兵士が死んでいるんだぞ。それが戦争ってもんだ」「ちぇっ。わかってるよ」「それにお前が死んだらアイリスも悲しむだろ? 戦わないで済むならそれ以上のことはない。いくらお前が剣に長けていようと、戦えば死ぬ可能性はあるんだからな」「わかってるよ……兄貴。今は戦況を見守るよ。どうなんだよ? 今のところは」「ああ。俺達ルンデブルグの兵士だけでは兵数的に圧倒的に不利だったが、隣国アーガスからの援軍により、戦況は予想より拮抗しているよ」「へっ……そいつはよかったぜ。隣国までわざわざ出向いた甲斐があったぜ」「ああ。本当にそうだな。ラインハルト王子には感謝しないとな」 レオ王子とエル王子は微笑を浮かべる。そして、遥か彼方にある最前線を見つめていた。 ◇「ほらっ!」「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」 グサッ! 最前線の様子は血みどろの情景を呈していた。多くの血が流れ、悲鳴が鳴り響く。前線
Última atualização: 2026-02-16
Chapter: 戦争が始まってしまいます 偵察隊からの報告があったそうです。「報告です。国王陛下、エル王子」 偵察をしていた兵士達がそう報告をしてきます。「北方、遥か遠方に帝国ビスマルクから大量の兵士が送られてきているそうです」「そうか……やはりな」「いかがされましょうか?」「隣国アーガスと共同戦線を準備している。その兵士達を動かせ」「はっ……了解しました!」こうして、帝国との戦争が本格的に始まってしまうのでした。恐れていたことがついに現実となってしまうのです。ですが覚悟していたことでもあります。この為にエル王子や私達はできうる限りの準備をしていたのですから。ショックは思ったより大きくありませんでした。意外と平静としていられる自分に多少なり驚いています。それは他人事だからというのもあるかもしれません。私が直接傷を負い、命を落とす可能性は低いです。戦場で傷つくのは兵士ですから。心は痛むかもしれませんが、肉体的な痛みや生命の危険は恐らくはないのです。ですがエル王子の辛そうな表情を見ていると私まで辛くなってくるものでした。どうか、この戦争が早く終わりますように。そして傷つき、命を落とす兵士が一人でも少なく済みますように。私はそう祈るばかりだったのです。◇偵察隊からの報告を受けた後、私とエル王子は空き部屋で二人きりになります。「エル王子……辛そうな顔をしています」 エル王子の辛そうな顔は最近見ていませんでした。こんな辛そうな表情は私が最初にエル王子と会った時からありませんでした。つまりはエル王子が病気で床に伏せっていた時くらいのことです。辛いに決まっています。これから戦争が始まるのですから。多くの兵士が傷つきます。命を落とします。血が流れるのです。兵士は兵士ですが、当然のようにその大部分は国民から選出されているのです。亡くなれば勿論、本人も可哀想ではありますが、その家族も悲しむこ
Última atualização: 2026-02-15
Chapter: 【義妹SIDE】戦争始まる「ディアンナ、どこに行っていたのよ!」「は、はい! ただいま!」 メイド服を着たディアンナはリノアの元へと向かう。 三人は城からその情景を見ていた。多くの兵士が行進していく。目的地は勿論、植民地化する予定の敵国ルンデブルグである。リノア王女、それから父親である帝王。それから召使い――もといリノアの玩具、あるいは所有物となったディアンナ。三人は城のテラスからその情景を見下ろしていた。「お父様、ついに戦争が始まるのですね」「ああ」 そう言ったリノア王女と帝王の目は輝いていた。爛々と。まるでサーカスを見る子供のような目だ。無邪気で、純粋に楽しみにしているような目だ。 サーカスを見ている子供はサーカスの団員がどれほど苦労しているかを知らない。例えばロープから落ちて、地面に激突して大怪我をしたとしても、観客には何の痛みもない。痛いのはその団員だけだ。 二人はそういう気分でその情景を見守っているのだ。決して自分たちが傷つかないことを知っているから。安全圏から楽しんでその情景を見ているのだ。「楽しみですわ、お父様」(楽しみ? 戦争を楽しみ? くるっていますわこの女。わかってはいたことですけど、相当に頭のネジがぶっとんでますわよ! そりゃもう、1本どころか100本くらい) ディアンナは胸中で毒づく。お前が言うな、という感じではあったが、ディアンナをもってしても、リノア王女の異常さは際立っていたのだ。 無論、口には出さない。出した瞬間、銃殺刑か。テラスから放り投げられて赤いトマトのようなディアンナの出来上がりである。「ああ。楽しみだな、リノア」 帝王も同じ様子であった。心底戦争を楽しんでいる。それで兵士が傷つくことなどお構いなしだ。兵士を自国民だとは思わず、代えの利く消耗品だとしか思っていない様子だ。「ああ、早く、お父様! 私待ちきれませんわ! あのエル王子とレオ王子が私の玩具になるところを想像するだけで涎が出てきますわ! どうやって可愛がってあげましょうか! ゆっくりと爪をはぐのもいいし、犬のようにチンチンもさせてみたいです
Última atualização: 2026-02-14