嘘つきの義妹に婚約者を寝取られ、婚約破棄されましたが、何故か隣国の王子に求婚されています。私の作った薬が必要と言われても

嘘つきの義妹に婚約者を寝取られ、婚約破棄されましたが、何故か隣国の王子に求婚されています。私の作った薬が必要と言われても

last updateLast Updated : 2025-07-29
By:  九十九弐式Updated just now
Language: Japanese
goodnovel4goodnovel
Not enough ratings
24Chapters
53views
Read
Add to library

Share:  

Report
Overview
Catalog
SCAN CODE TO READ ON APP

ギルバルト伯爵家の姉妹である私ーーアイリスと義妹のディアンナ。 私は亡くなった母の意思を継ぎ、薬の研究に没頭していました。 そんな私を継母と義妹は根暗と蔑み、日々過酷な扱いをしてきました。 ある日、義妹は私が毒薬を研究していると嘘を言ってきました。義妹は婚約者を寝取る為、私が邪魔だったようです。 私は無実の罪を着せられ実家を追い出されてしまいます。 そんな時に私は隣国に薬師として招待されます。 「病に侵された王子の命を助けて欲しい」 そう言われた私は隣国に行き、王子の病を薬で治すのです。 これは嘘つきの義妹に婚約者を略奪された私が、王子に求婚され、ホワイトな宮廷で幸せになるお話です。

View More

Chapter 1

嘘つきの義妹に婚約者を寝取られた上に実家を追い出されてしまいます

「アイリス! 貴様との婚約を破棄する!」

 それは突然の事でした。

 呼び出された私相手に婚約者-ーロズワールが無情にもそう告げてきます。

「ど、どうしてですか!? なぜいきなりそんな事を!?」

「義妹(いもうと)のディアンナから聞いているよ。君は屋敷の地下室で怪しげな毒薬を作っているそうだね」

「そ、それは違います! 私はそんな毒薬など作ってはいません!」

 私の名はアイリス・ギルバルト。男爵家に生まれた令嬢である。薬の研究をしていた母が亡くなってからというもの継母と義妹に無駄だ、無益だと馬鹿にされつつも、ずっとその後を引き継いできた。

「しかも、それを義妹のディアンナの飲ませようとしたそうだね。僕は心底、君という人間を軽蔑したよ」

「ち、違います! 私が義妹のディアンナに毒薬など飲ませていません」

「ロズワール様……お姉様の言っていることは大嘘ですわ」

 煌びやかなドレスを来た美しい少女が来る。だが、私はその美しさの裏には傲慢さや欺瞞で満ち満ちている事を知っていた。

 義理の妹ーーディアンナである。ディアンナは母が死んだ後、父が連れてきた継母の娘である。

「わたくし、大変怖かったんですの。姉の挙動不審に気づいた私は、咄嗟に飼っている犬に食事を食べさせたんですの。そしたらその犬は泡を吹いて死んでしまいましたわ」

「そんな……」

 よくもまあ、そんな嘘八百を並べられる。私はあきれ果ててしまった。

「う、嘘よ! そんなの!」

「あらっ。嘘じゃありませんわ。ねぇ、お母様」

 そのうちに継母も出てきた。継母はディアンナの母らしく、美しく若い見た目をしていたが、実際の所は見た目だけで、性格のねじ曲がった継母であった。

「ええ。そうよ。ねぇ、あなた」

「う、うむ」

 父も出てくる。父は継母の言いなりであった。完全に継母の尻にひかれていた。

「ねぇ。あなた、私の娘であるディアンナが嘘をついているはずがないでしょう。嘘をついているのはアイリスの方。アイリスは地下で毒薬を飲ませようとしたの。そしてディアンナのあまりの美しさに嫉妬したのよ。そうに決まっているわ」

「そ、そうだな……お前の言うとおりだ。ディアンナが嘘を言っているわけがない。嘘を言っているのはアイリスの方だ」

 実の父は告げる。

「そ、そんな……」

 私は絶句した。まさか実の父にそんな事を告げられるなんて、夢にも思っていなかったのだ。

「ねぇ。ロズワール……そうでしょう? 私が嘘を言うはずがない。嘘を言っているのはあの愚かな姉、アイリスの方よ」

「そ、そうだな……確かにその通りだ」

「でしょ……これが終わったら良い事の続きをしましょう?」

 ディアンナは妖艶に微笑む。私は確信した。ロズワールとディアンナは既に関係を持っていたのだ。

 大方ロズワールはディアンナの色香に惑わされたのであろう。

「あ、ああ……ディアンナ……僕は君さえいればもう十分だよ。そういうわけでアイリス、お前の婚約を解消するから、そのつもりでいてくれ」

 私はロズワールからそう告げられる。

「そ、そんな、あ、あんまりです! なんで私がこんな事に!」

 私はお母様の意思を継ぎ、薬の研究をしていただけ。世のため人のためになるようにただ一心不乱に努力していただけ。

 それなのにこんな仕打ち。あんまりであった。思わずその場で泣き崩れてしまいそうな程に。

 しかし、非情な仕打ちは尚も続く。

「ねぇ。お父様。こんな異常な姉をこの家には置いてはおけないわっ。そう思うでしょう?」

「う、うむ。ディアンナ。その通りだな」

「あなた……あなたにとって娘はもうディアンナ一人よ。あそこの女はもうあなたの娘ではないわ。一家の恥さらしの居場所はここにはないの。わかってるでしょ? ねぇ?」

「アイリス! ギルバルト家当主として告げる! 貴様は即刻我が家を出て行け! そして二度と我が家の敷居を跨ぐなっ!」

 実の父の非情な宣告。動けなくなった私は無理矢理引きずられて追い出される。

そして、着の身着のまま何も持たずに外の世界へ放り出される事になってしまいました。

Expand
Next Chapter
Download

Latest chapter

More Chapters

Comments

No Comments
24 Chapters
嘘つきの義妹に婚約者を寝取られた上に実家を追い出されてしまいます
「アイリス! 貴様との婚約を破棄する!」 それは突然の事でした。 呼び出された私相手に婚約者-ーロズワールが無情にもそう告げてきます。「ど、どうしてですか!? なぜいきなりそんな事を!?」「義妹(いもうと)のディアンナから聞いているよ。君は屋敷の地下室で怪しげな毒薬を作っているそうだね」「そ、それは違います! 私はそんな毒薬など作ってはいません!」 私の名はアイリス・ギルバルト。男爵家に生まれた令嬢である。薬の研究をしていた母が亡くなってからというもの継母と義妹に無駄だ、無益だと馬鹿にされつつも、ずっとその後を引き継いできた。「しかも、それを義妹のディアンナの飲ませようとしたそうだね。僕は心底、君という人間を軽蔑したよ」「ち、違います! 私が義妹のディアンナに毒薬など飲ませていません」「ロズワール様……お姉様の言っていることは大嘘ですわ」 煌びやかなドレスを来た美しい少女が来る。だが、私はその美しさの裏には傲慢さや欺瞞で満ち満ちている事を知っていた。 義理の妹ーーディアンナである。ディアンナは母が死んだ後、父が連れてきた継母の娘である。「わたくし、大変怖かったんですの。姉の挙動不審に気づいた私は、咄嗟に飼っている犬に食事を食べさせたんですの。そしたらその犬は泡を吹いて死んでしまいましたわ」「そんな……」 よくもまあ、そんな嘘八百を並べられる。私はあきれ果ててしまった。「う、嘘よ! そんなの!」「あらっ。嘘じゃありませんわ。ねぇ、お母様」 そのうちに継母も出てきた。継母はディアンナの母らしく、美しく若い見た目をしていたが、実際の所は見た目だけで、性格のねじ曲がった継母であった。「ええ。そうよ。ねぇ、あなた」「う、うむ」 父も出てくる。父は継母の言いなりであった。完全に継母の尻にひかれていた。「ねぇ。あなた、私の娘であるディアンナが嘘をついているはずがないでしょう。嘘をついているのはアイリスの方。アイリスは地下で毒薬を飲ませようとしたの。そしてディアンナのあまりの美しさに嫉妬したのよ。そうに決まっているわ」「そ、そうだな……お前の言うとおりだ。ディアンナが嘘を言っているわけがない。嘘を言っているのはアイリスの方だ」 実の父は告げる。「そ、そんな……」 私は絶句した。まさか実の父にそんな事を告げられるなんて、夢にも思って
last updateLast Updated : 2025-07-29
Read more
突如隣国に薬師として招かれてしまいます
これからどうしよう。婚約者を嘘つきな義妹(いもうと)に奪われた、その上に実家を追い出された私は当てもなくギルバルト家の付近を彷徨っていました。 なにせ私にはお金がありませんでした。そしてギルバルト家以外に頼れるツテは何もありません。私にあったのはせいぜい長年の研究で培った薬の知識くらいでした。 そんな事をしているうちに、私の目の前に一台の馬車が通りがかります。「止まれ!」 声がしました。馬車が私の前で止まります。 い、一体何なんでしょう。 中から降りてきたのは執事服を着た男でした。 かっこいい。私は思わずそう呟いてしまう程でした。高い身長。細身の身体。そして整った顔立ち。品性のある立ち振る舞い。    私の理想を体現したような、完璧な執事でした。執事は私の前で突如、一礼する。「そこのお嬢様。ここら辺にギルバルト家があると聞きます。どこにあるかご存知ですか?」 執事は丁寧な口調でそう聞いてくる。「は、はい。ギルバルト家はこちらを行ったところにあります。でも、なぜギルバルト家に。よろしければ理由を教えてくれませんか?」「はい。風の噂でギルバルト家に薬に精通した女性アイリス様がいらっしゃると伺いました」「あ。はい。アイリスは私です。どのようなご用件でしょうか?」「なんと! あなたがアイリス様ですか!? 大変失礼しました。私の名はヴィンセント。隣国ルンデブルグで執事をしている者です。突然ではありますが、あなた様を我が宮廷に薬師としてお招きしたいのです」「ま、まあ? それはなぜですの?」 私はあまりに突然の事に驚いてしまいました。「我が王国の王子、エルドリッヒ様が流行病に侵されてしまいました。ありとらゆる薬師を招いても中々状態が改善せず、このままでは座して死を待つばかりでしょう」「そ、そんな事が……」「そこであなた様の力を風の噂でお伺いしたのです。長年薬の研究をされてきたと伺っております。あなた様のお力であれば、我が国の王子。エルドリッヒ王子の病を治せるやもしれません」「で、ですが……私に治せるかどうかも」「私達としても藁にもすがる気持ちであります。もしあなた様で手が終えずとも誰もあなたを恨みません。どうか、来て貰う事だけでもできないでしょうか?」 そう、執事ーーヴィンセントは私に傅いた。迷うまでもなかった。どうせ行く当てもない
last updateLast Updated : 2025-07-29
Read more
隣国の王子の病を治療し、唐突に求婚されてしまいます
「ここが我が王国の城です」 ヴィンセントはそう案内する。「お、大きなお城ですね」 私はその城を見あげた。「王子は自室にいます。どうかこちらにお越しください」「は、はい!」 私は隣国の執事ーーヴィンセントに引き連れられ、王子の自室へと向かった。 ◇「ごほっ! ごほっ! げほっ!」 王子の部屋に入った時の事だった。咳き込むような声が聞こえてきた。「お、王子! し、しっかりしてください! 王子!」 メイドの慌ただしい声が聞こえる。 ベッドに寝込んでいたのは一人の青年だった。金髪をした色白の青年。整った顔に青い。本来は絶世の美青年であるはずだが、病の影響からか、血色が悪い。 本来の彼の魅力を何割も損ねているかのようだった。見れば彼の口元には血が見えた。恐らくさっきのはただ咳き込んでいたのではない。吐血したのだ。 わざわざ隣国にいる私を呼びつけている程だ。重症で間違いは無い。「はぁ……はぁ……はぁ……ヴィンセント。そこの彼女は?」「エルドリッヒ王子。こちらは隣国からいらしてくれた薬師。アイリス・ギルバルト嬢であります」「そうか……新しい薬師か」 王子は寂しげな顔をする。きっと今まで幾人もの薬師がここに連れられてきたのであろう。そしてその度に彼は「今度こそ病気が治るかもしれない」そう思ってきた。そしてその願いは叶わず、失望していった。 その結果彼はもう、希望を持つ元気すら失われてきたのである。「王子! 彼女ならきっと、あなた様の命を救ってくれるはずです!」 ヴィンセントは言ってきた。「え? そんな?」 治せる自信は元よりない。ヴィンセントの言葉は正直重荷だった。「さあ、アイリス様。どうか王子を診てやってください」「は、はい」 だが、診てみるより他にない。私は王子を診察する。 この症状は……間違いない。私は王子の病因を特定する。その病魔は私が母から受け継ぎ、今まで研究してきた数多のうちのひとつであった。「この病は治す事ができます」「ほ、本当ですか!? それは本当に!?」 執事ヴィンセントは面を喰らっていた。「ええ。しかし必要なものがあります。まず薬材です。薬の材料がなければ薬を作る事はできません。ヴィンセント様、どうか私の言った薬材を集めてきてください」「ありがとうございアイリス様。すぐさま薬材を集めさせて頂きます
last updateLast Updated : 2025-07-29
Read more
ホワイトな宮廷に薬師として迎え入れました
「いやぁ! 誠にありがとうございます! アイリス様」「息子が救われましたわ」 宮廷で私は国王と王妃にそう出迎えられる。国王も王妃もまだ若く、そして美形であった。やはりエル王子の父君と母君であると言える。 二人は私に感謝をし始めていた。「い、いえ。私は薬師として当然の事をしたまでです」「とんでもありません。あなた様のおかげで我が息子ーーエルの命が救われたのです」「母である私からもお礼を言わせて頂きます。息子を失う以上の悲しみが親にあるものでありましょうか。アイリス様。あなた様はその悲しみから私達を救ってくださったのです」「い、いえ。そんな、滅相もありません。国王陛下、王妃様」「ヴィンセント、例のものを」「はっ!」 国王に言われ、執事ヴィンセントから何かを渡される。ずっしりとした小包だ。「な、なんでしょうかこれは?」    重くてずっしりとした小包。何となく想像がついた。「あ、あの……開けてみてもよろしいでしょうか?」「勿論だ。是非、開けてみてくれたまえ」 私は小包を開いた。その中にはびっしりと金貨が詰まっていたのである。「ま、まあ!」 私は驚きのあまり声をあげてしまった。「申し訳ない……些かアイリス様の労には見合わなかった。ヴィンセント、もう一袋用意してくれないか?」「わかりました。国王陛下」「そ、そうじゃありません! こ、こんな大金受け取れません! わ、私はただ王子の命を助けたかっただけで、こんなつもりじゃ」「いえ、いいんです。受け取って頂かなければこちらとしても気が休まりません。なにせあなた様は私達の大切な息子を救ってくださったのですから」「アイリス様、国王陛下と王妃様からのお気持ちです。こちら納めてください」「わ、わかりました」 考えた末に私は報酬を受け取る事にしました。ですが大量の金貨は持ち帰るにもあまりに重すぎます。一旦は王宮の方で預かって貰う事としました。    両親から一心の愛を受けているエル王子が私は羨ましくもあり、微笑ましくもありました。幼い頃に母を失い、そして継母と義妹に虐げられていた私からすれば。  その上に最近は婚約者であるロズワールを寝取られた末に実家まで追い出されてしまいました。今の私は身寄りもなく、行く当てもありません。「それで薬師アイリス様、今後はどうされるのですか?
last updateLast Updated : 2025-07-29
Read more
社交パーティーで王子様とダンスをしてしまいます
「アイリス様……大変お美しいです」「ま、まあ……これが私」 真っ赤な赤いドレスを着て、メイドに丹念に化粧を施された私は、自分でも別人のように思えました。 流石に社交パーティーという事で普段の恰好ではいられません。当然のようにまともなドレスを持っていない私は王宮の方でドレスを貸し与えられる事となりました。「それではアイリス様。向かいましょうか。パーティー会場では主賓のあなた様を皆が待っていますよ」「え、ええ。ヴィンセント、向かいましょうか」「はい」 私とヴィンセントはパーティー会場へ向かいます。  ◇パーティー会場は私が見てきたこれまでの光景とは別世界でした。煌びやかなドレスを着た貴族の娘達。それからタキシードを着た男達。煌びやかなシャンデリア。そしてテーブルには豪勢な料理が無数に並んでいます。さらには音楽隊の達者な演奏も聞こえてきます。流れるような音の調べが会場の雰囲気を俄に盛り上げていくのです。「まあ、あれがエル王子の命をお救いになった薬師のアイリス様だわっ!」「あれがアイリス様……!!!」 パーティー会場にいるのは殆どが王族か貴族です。そんな身分の高い方々の注目を浴びた私は大変気恥ずかしくなってしまいます。 そして、件の人物が姿を現します。「エル王子だわ!」「エル王子! 本日も素敵ですわ!」「かっこいい……エル王子」 エルは煌びやかな白いタキシードを着ていました。絶世の美青年である彼は否応なく周囲の視線を集めます。 しかしエルは迷う事なく、私のところまでやってきました。「アイリス様……」「さ、様付けはやめてください。エル王子」「……すまないね。だったらアイリスと呼ばせて貰うよ」 エルは微笑んだ。その微笑みは凄まじく魅力的で私はその場で卒倒してしまいそうになる。「僕の命を救ってくれてありがとう、アイリス」「だから言っていますでしょう。エル王子。私は薬師として当然の事をしたまでです」「それでも同じ事だよ。君の行いで僕は救われた。それに何の見返りも期待する事なく善行を行えるのは中々に出来る事ではない。それは偏にアイリス、君の心が綺麗だからだよ」「え!?」 思わず私の心がときめいてしまうような事をエルは言ってくる。 社交パーティーが始まる。音楽隊の音楽が違う曲になる。これはダンス用の歌だ。「アイリス……どう
last updateLast Updated : 2025-07-29
Read more
【義妹SIDE】流行病は簡単には治らない病でした
「残念ながらお母様の病には私には手に負えないものです」 医者の男にディアンナはそう告げてきます。「う、嘘よ! なんでそんなことがあるんですか! 母も私も悪いことは何ひとつしてないんですよ!」 ディアンナはそう主張する。アイリスにしてきた数々の所業は知らんぷりだ。「残念ですが私にはどうしようもありません。ほかの医者や薬師を当たっても同じことを言うと思いますよ」「う、嘘! そ、そんな! そんなことって! うううっ!」 ディアンナは母に泣き崩れた。すべてが順調だと思っていたのに、なぜこんなことになったのか。ディアンナは頭を抱えるより他にない。「ごほっ! ごほっ! げほっ! ディアンナ!」「お母様! なぜ私達がこんな目に合わなければなのですか! なぜ!」 母は咳込み、明らかに具合が悪そうです。このままだと長くないかもしれません。「残念ですが、私には手にも終えそうもありません。このたびは失礼します」 医者の男は去っていく。 婚約者のロズワール及び父がやってくる。「お父様! ロズワール様! お母様が大変なの!」「そのようだな……その病に対する情報を集めよう」「僕も陰ながら調べてみるよ」「私も……」 と、その時だった。「うっ!」 バタリ、ディアンナは倒れた。「だ、大丈夫か!? ディアンナ!」 ロズワールがディアンナを起こす。「大丈夫ですわ。ロズワール様」(おかしいわね……私こんなことで転ぶはずないのに) その時であった。ディアンナは肺のあたりに違和感を覚えた。「けほっ! ごほっ! げほっ!」 そして母と同じような咳をし始めたのである。「ま、まさか!」 何かの間違いだと思っていた。だが、母と同じ病魔は娘のディアンナにも襲いかかってきたのである。
last updateLast Updated : 2025-07-29
Read more
エル王子に後ろから抱き締められてしまいました
「アイリス様、誠にありがとうございます!」「あなた様のおかげで我が王城内での伝染病者は全員治療されました」 国王と王妃がそう私を称えてきます。「アイリス様、あなた様のおかげで我が王城は救われました。よろしければ、国内に配布してもよろしいでしょうか?」「はい。構いません。ですが、なかなか薬の調合が間に合っていません」 あれから私は殆どの時間を費やし、調薬をしています。ですがなかなか間に合いません。国内に行き渡るのはだいぶ先になりそうです。「わかっております。あなた様のペースでいいのです。どうか薬を作っていってください」「ええ。アイリス様。あなた様に倒れられては元も子もありませんから」 国王と王妃はそう言っています。私は人々の救うため、薬を作り続ける毎日です。これではいくらお金があっても使っている暇もありません。 とはいえ私は本々物欲がなく、お金に関心がないのです。「今のままの給金では申し訳ない。もっと上乗せいたしましょうか」「ええ。あなたそうしてあげて」「いえいいです。私はそれほどお金に関心がありませんから。孤児院にでも寄付してあげてください。それに私は私の作った薬で誰かの命が救われることがたまらなく嬉しいのです」「何と素晴らしいお方だ!」「本当ね……ここまでの聖人あまりいないわ」 私は普通のことをいったつもりなのに、なぜだかえらく褒められてしまいました。「それでは私は調薬に戻りますので」 ◇「ふう……」 私は与えられただだ広い、そして豪勢な部屋で調薬をしておりました。 その時でした。「疲れているようだね。アイリス」 部屋にエル王子が訪れてきました。エル王子は私に優しく微笑みかけてきました。「エル王子!」「何か僕にできることはないかい?」 エル王子は私に優しく語りかけてきます。「できることって?」「なんでもいいんだ。言ってみなよ」「あっ」 エル王子は私を背後から抱き締めてきました。 ドキドキドキ。 私の心臓の音が高鳴り始めます。「温かいね……アイリスの体は」 それはエル王子のせいです。エル王子のせいで私の体が熱くなっているのです。「何かして欲しいことはあるかい? アイリス」「特にしてほしいことはないですが……できれば」 私は顔を真っ赤にして告げます。「このままこうしていてください」「このまま
last updateLast Updated : 2025-07-29
Read more
レオとエルが決闘をしてしまいます
「はあああああああああああああああああああああああああ!!!」 キィン! レオの剣とエルの剣が交錯します。本物の剣です。身体に当たったら大変です。大怪我をしてしまいます。  二人ともチャンバラ遊びをしているのならいいのですが、完全に真剣です。「ふっ……思ったより腕を上げたな。レオ。以前よりやりがいがある」「へっ。伊達に騎士団を率いてはないぜ。兄貴。油断してると足元救われるぞ! おらっ!」 キィン! 剣と剣がぶつかり合います。二人とも手加減をしているようには見えません。身体に当たったら最悪死んでしまいます。 こんなの間違っています。なんで兄弟で喧嘩なんてしなければならないんでしょうか。喧嘩ではなく決闘ですか。 どちらでも私からすれば同じようなものです。「くっ!」「へっ! どうだっ! 兄貴!」 レオの剣圧の凄まじさにエルが一歩後ずさってしまいます。小競り合いをレオが制したのです。「なぜだ……レオ」「ん? ……何かおかしな事でもあった」「なぜアイリスに手を出した……貴様、アイリスを情婦か何かだとでも思っているのか?」「へっ。なんだ、アイリスとキスした事を根に持ってんのかよ。それが俺の決闘する気になった理由か。憂さ晴らしってわけだな。けどな、勘違いするなよ。俺はマジでアイリスに惚れたんだよ」「お前は俺に色々と言ってきただろうが。アイリスと俺達王族では身分が違うだのなんだの。矛盾している事に気付いてないのか?」「うるせぇ! 前言撤回だ! 惚れちまったら身分も何も関係ねぇだろうが!」 レオは剣を振るってくる。キィン! エルはその剣を防ぐ。「そうか。だったら今から俺とお前は兄弟じゃない。敵同士だ」「上等じゃねぇか!」「や、やめてって、二人とも!」 私は叫びます。ですがその声は届きそうにもありません。二人とも興奮しきっています。やはり男の人は闘う事で脳から興奮物質が出るようなのです。 こうなってしまったらとてもではありませんが手のつけどころがありません。「兄貴、この勝負乗せないか?」「乗せるって何をだ?」「勝った方がアイリスを手に入れられる。それで負けた方が手を引くんだ。わかりやすくていいだろう」「ああ。いいだろう。受けて立つ」「行くぜ! 兄貴!」 キィン。 何を言っているんでしょうか。この人達は。私の了承もなしに、勝
last updateLast Updated : 2025-07-29
Read more
【義妹SIDE】母が流行病にかかる
「ふっふっふ! これでこの屋敷もあの根暗女の婚約者であるロズワール様も、私のものですわ!」 そう、アイリスの義妹であるディアンナはギルハルト家の屋敷で勝ち誇っていた。 全ては順調であると思っていた。当然のようにアイリスが毒薬の開発をしているというのもディアンナを妬ましく思い、毒を盛ったというのも嘘である。  しかし嘘も周りのもの全てが信じれば真実になる。母は自分の言うことを無条件で真実だと思い込むし。そして義父は継母の言いなりである。問題なのは婚約者のロズワールではあったが、元々地下で引きこもり気味であったアイリスにロズワールは若干、愛想を尽かしていたようだ。ディアンナからすれば男など単純な生き物である。少し隙を見せてきただけでロズワールはディアンナに食いついてきた。男は美しい女に弱いのだ。籠絡する事などディアンナにとってはいとも容易い出来事であった。その矢先の事であった。アイリスから寝取った婚約者--ロズワールが屋敷に駆け込んでくる。「た、大変だ! ディアンナ!」「なんですか? ロズワール様!」「き、君のお母様が!!」「母がどうしたのですか? ロズワール様」「倒れられたんだ!」「な、なんですって!」 ディアンナは叫んだ。全てが順調だと思っていた計画の歯車がここに来て狂い出したのである。 ディアンナとロズワールはアイリスにとっての継母のところまで向かう。 ◇「お母様! しっかりしてください! お母様!」「ど、どうしてなのよ……どうして私がこんな病に犯されなきゃなのよ」 ディアンナの母は嘆いていた。ベッドに横になっている。その顔色は悪く、何らかの病魔に侵されたのは確実であった。「し、しっかりしろお前!」 そう、義父が手を握って叫ぶ。「どうしてこんな事に。私は悪い事なんて一度もした事もないのに。神様はどうしてこんな理不尽な真似を。ううっ!」 悪意を働く時、大抵人は自分のした事を悪いと思っていないのだ。その為、ディアンナと継母はアイリスにしてきた数々の仕打ち。 例えばわざと食事を与えなかったりとか、数々の悪口。体罰という名の暴行。様々な悪意ある行いを悪い事だとすら認識していなかったのである。「そ、そうよ! お母様がこんな事になるなんて間違ってるわ!」 ディアンナもそう主張する。彼女は自分が嘘をついたとしてもそれをすぐに
last updateLast Updated : 2025-07-29
Read more
社交パーティーで王子様とダンスをしてしまいます
「アイリス様……大変お美しいです」「ま、まあ……これが私」 真っ赤な赤いドレスを着て、メイドに丹念に化粧を施された私は、自分でも別人のように思えました。 流石に社交パーティーという事で普段の恰好ではいられません。当然のようにまともなドレスを持っていない私は王宮の方でドレスを貸し与えられる事となりました。「それではアイリス様。向かいましょうか。パーティー会場では主賓のあなた様を皆が待っていますよ」「え、ええ。ヴィンセント、向かいましょうか」「はい」 私とヴィンセントはパーティー会場へ向かいます。    ◇パーティー会場は私が見てきたこれまでの光景とは別世界でした。煌びやかなドレスを着た貴族の娘達。それからタキシードを着た男達。煌びやかなシャンデリア。そしてテーブルには豪勢な料理が無数に並んでいます。さらには音楽隊の達者な演奏も聞こえてきます。流れるような音の調べが会場の雰囲気を俄に盛り上げていくのです。「まあ、あれがエル王子の命をお救いになった薬師のアイリス様だわっ!」「あれがアイリス様……!!!」 パーティー会場にいるのは殆どが王族か貴族です。そんな身分の高い方々の注目を浴びた私は大変気恥ずかしくなってしまいます。 そして、件の人物が姿を現します。「エル王子だわ!」「エル王子! 本日も素敵ですわ!」「かっこいい……エル王子」 エルは煌びやかな白いタキシードを着ていました。絶世の美青年である彼は否応なく周囲の視線を集めます。 しかしエルは迷う事なく、私のところまでやってきました。「アイリス様……」「さ、様付けはやめてください。エル王子」「……すまないね。だったらアイリスと呼ばせて貰うよ」 エルは微笑んだ。その微笑みは凄まじく魅力的で私はその場で卒倒してしまいそうになる。 「僕の命を救ってくれてありがとう、アイリス」「だから言っていますでしょう。エル王子。私は薬師として当然の事をしたまでです」「それでも同じ事だよ。君の行いで僕は救われた。それに何の見返りも期待する事なく善行を行えるのは中々に出来る事ではない。それは偏にアイリス、君の心が綺麗だからだよ」「え!?」 思わず私の心がときめいてしまうような事をエルは言ってくる。 社交パーティーが始まる。音楽隊の音楽が違う曲になる。これはダンス用の歌だ。「アイ
last updateLast Updated : 2025-07-29
Read more
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status