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景文日向
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Novels by 景文日向

武神に認められた僕は、高天原の面倒事を処理することになりました

武神に認められた僕は、高天原の面倒事を処理することになりました

幼い頃より霊感が強く、霊能力者でもある如月一成は大学生活を送る傍ら妖怪や地縛霊を退治している。彼に霊能力の扱い方を教えた神、蓮に認められた時に高天原から使者が降臨した。 「高天原を、蓮様と共に救ってくれませんか?」 人間でしかない一成が、高天原の面倒ごとに巻き込まれていく日々を描いた日本神話ファンタジー。
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Chapter: 「タカマガハラ?」
 翌日に蓮のところへ行こうと思っていたが、宗吾の一件でバタバタして遅れてしまった。そもそも身内に亡くなった人間がいる以上、神社に参るのはマナー違反だ。約二ヶ月、僕は怠惰な日々を過ごしていた。蒼麻は「兄さんのせいじゃないよ」と慰めてくれたが、自分で自分を責めてしまう。あの時、宗吾のことを助けることが出来たはずなのに。僕は愚かだ。 神社の空気は、いつも澄んでいる。礼をして足を踏み入れると、「やっと来たか、大馬鹿者め」と声をかけられた。「蓮……」「貴様の事情はわかっている。弟が亡くなったらしいな」 事実を改めて突きつけられ、気分が落ち込む。「僕のせいです、思い上がっていたのかもしれません。今まで、挫折なんて知らなかったから」 蓮は、瞬きしてから「そうだ」と肯定した。「一成、貴様の思い上がりは確かにあっただろう。だが、悔いたところで弟が帰ってくる訳ではない。挫折は悪いことではない、経験すればもっと強くなれる。これは貴様に課された試練の様なものだ」 いつでも手厳しいのが蓮だ。確かに、言っていることはわかる。だが、理性と気持ちは必ずしも一緒ではない。そんなに割り切れるほど、僕は強くないのだ。「……その為に、宗吾が死ぬことはなかったのでは」「甘いな、貴様は強いから少しのことでは挫折などしないだろう。弟の命は、考え得る限り貴様の中でかなり大事なものだったはずだ。それを失ってしまったからこそ、今貴様は岐路に立っている。もっと強くなるか、このまま立ち直れず生涯を終えるか。貴様は、どうする」 考える。蓮としては、もっと強くなってほしいと思っているのだろう。だけど、僕は弟を失ってまで戦おうとは思えない。そもそも、平和が好きなのだ。好んで戦っている訳ではない。今まで幽霊を退治していたのだって、平和な世の中を保ちたかっただけなのだ。僕は、どうすれば良いのだろう。「貴様がどうしようが、それは自由だ。だが、忘れるな。私の気は長くないぞ」 蓮は、そう言い残すと姿を消した。僕に残された時間は、そう長くないだろう。とりあえず、家に帰って考えるか。ここに居ても、考えはまとまらないだろうし。「兄さん、お帰りなさい!」 今日も相変わらず蒼麻が出迎えてくれる。蒼麻だけでも、守り切らなくては。これ以上、命を失う瞬間を見たくはない。「……兄さん?」「あ、いや……何でもないです」
Last Updated: 2025-09-10
Chapter: 転機は突然に
 僕は、一人だった。人には視えない何かが視える、それだけで両親からは距離を置かれた。霊感なんて欠片もない、弟二人が羨ましい。そんな日々を送っていた。 僕の家の近くには、大きな神社がある。そこに居る時だけ、心が休まっていた。清廉な空気が、傷ついた心を癒してくれた。そして、他の人には視えていないであろう『人間じゃない存在』も。 神社に通っていた幼少期の、とある日のことだ。「貴様、私が視えるのか?」 その存在は、とても美しかった。青緑色の、大きく澄んだ瞳。長い水色の髪は、毛先に向かうにつれ青くなっている。長い睫毛は耽美な雰囲気を構成していた。明らかに、この世のモノを超越している美しさ。それは今でも、僕の目に鮮明に焼き付いている。「……あなたは?」 目の前の存在は、口元をほころばせて答えた。「私は神だ。この神社で祀られている、偉大な神だ。崇めると良いぞ。……そういえば、貴様。名は何という」 神様というのは、随分高飛車だと思った。だけど、名前を訊かれているのに答えないわけにはいかないとも考えたので、とりあえず名乗る。「僕は、|如月一成《きさらぎいっせい》です。ええと……神様はどんなお名前なのですか?」「一成か、良い名だ。私の名は……|蓮《れん》。貴様の才能を認め、制御する術を教えようと思っている」「才能?」 僕に何の才能が? そう思い問うと、蓮は答えた。「一成、貴様は私が視えるだろう。それに、この世のモノではない——言うなれば幽霊などを惹きつける体質だ。現に、私の目にも貴様の存在が留まった。まだ幼い貴様にはわからないかもしれないが、それは危険な状態だ。私の様な神ならともかく、悪霊に憑りつかれでもしたら貴様も困るだろう。そこで、私が貴様に能力の制御を教えてやろう……という訳だ。感謝するがいい」 一方的な押しつけの様にも思えるが、当時の僕は何も考えずに「はい、よろしくお願いします」 と承諾してしまったのだった。 それから十五年、蓮の修行は厳しいものばかりだった。投げ出そうと思ったこともあったが、自分の為になると諭されて続けてきた。その結果、僕は自分の力を使いこなすことが出来るようになり——幽霊退治に勤しんでいる。『嫌だ、まだ成仏なんかしたくな——』「往生際が悪いですよ、成仏しなさい」 目の前の中年男性の姿をした幽体に向けて、手をかざし念じ
Last Updated: 2025-09-10
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