呪われた巫女様

呪われた巫女様

last updateLast Updated : 2026-02-02
By:  景文日向Ongoing
Language: Japanese
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千年以上前に封印された巫女の、復讐譚。この世界を呪っているのは巫女なのか、それとも我々なのか。

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Chapter 1

イズモサマ 1

 うちの学校では、最近怖い噂が流れている。夏も終わりだというのに。うちは怖いのが苦手なので、極力その話題は避けていたのだが。

「なぁなぁ、“イズモサマ“って知っとるー?」

 昼休み早々、ついにこの時が来てしまった。問いかけられてしまうと逃げることは出来ない性質なので、「名前だけは」と返しておく。

 話しかけてきた浅井愛里は、姫カットで黒髪をおろしているという女子らしい容姿だ。一方うちは、地毛の茶髪を一括りにしただけで飾り気がない。共通しているものと言われれば、制服くらいだ。

「最近有名やで、華ならもっと興味示してくれるかと思ったわー」

「うち、怖いの好きやないし」

 愛里の残念そうな表情に、少しの罪悪感が芽生える。

「イズモサマ、ってあれやろ。お札を剥がして魔物から逃げ切れたら願いが叶うっちゅーやつ」

うちらの友人である三宮真矢の説明通りだ。真矢はセミロングの黒髪を弄びながら言う。

「イズモサマは、悲運の死を遂げた巫女とか魔物とかその正体ははっきりせえへんけど、この世のものではないという点だけが共通しているって話やね」

「へえ、随分賑わったはるなぁ。そない気にしはるなら見に行けばええのに」

 これまた、友人である藤原千秋が割って入ってきた。

「あぁ、悪いけどうちは行かれんのよ。夜は出歩いたら怒られてまうから」

 愛里が残念そうに言うが、絶対そうは思っていないだろう。

「ほなら、うちが愛里の代わりに見てきたろか? 千秋と華も一緒に」

 真矢の提案は突飛なことが多い。千秋はまだしもうちまで巻き込まれたらたまったもんじゃない。

「いや、うちは……」

「うちは折角やし行かせて貰おうかなぁ」

千秋まで乗り気だったら、二人の面倒を見るために行くしかなくなる。

「……うちも行く」

 その言葉を発した瞬間、何処からか視線を感じたのは気のせいだと思いたい。

「なら、零時に御山の麓……イズモサマが封印されとるところで待ち合わせしよか」

 真矢がどんどん予定を決めていくのを、うちは考えることをやめてぼーっと見ていた。

 零時に御山の麓に行くと、

「もう! 遅いで華」

 と真矢に軽く怒られた。時間通りなのだが……。千秋はそんなうちらを気にする様子もなく

「まぁまぁ。夜は長いんやし。早速、洞窟の中に入ってみよか」

 懐中電灯片手に洞窟へ入っていってしまった。

「ちょ、ちょっと待っ……うち心の準備が出来てへんのやけど」

「時間ならぎょうさんあったやん。華は感情移入しすぎや」

 千秋は長い黒髪を翻し、どんどん奥地へ向かっていく。うちはそれについていくのが精いっぱいなくらい怖かった。じめっとした空気、懐中電灯がなければ完全な闇。この奥にいる存在のことを考えると、とてもではないが明るい気持ちにはなれなかった。

「それにしても、イズモサマなんてほんまに居るんかな?」

 会話で恐怖を紛らわそうと、二人に向けて声をかける。

「どうやろな。居ったら居ったで……その時にならんとわからん」

「うちは居ってほしいな、その方がスリルとロマンがあるやん!」

 千秋は至って冷静だし、真矢は高揚している。うちがこの中で一番普通な気がしてきた。何故この場で落ち着いていられるのか理解に苦しむ。深夜だから、一周まわってハイになっているのは何となくわかるものの。

「あ! あれちゃう?」

 真矢の指さした先には、『この先立ち入り禁止』の看板。柵も何もないので、出入りは自由になっているようだ。

「この先の道はこれ一本だけ……なら、行くしかないやろなぁ」

「え、ちょ、待っ、ほんまに行くん!?」

 千秋は「当たり前やんか、怖いなら帰ったらええ」とうちの発言を一蹴する。まぁ、確かにその通りなのだが。でも二人に何かあったら一生引きずりそうだ。やから。

「うちも行く!」

 一歩踏み出した。これでこの先で何があっても、引きずることはない。と思いたい。洞窟の湿度は増し、水滴が落ちる音が聞こえる。真夏だというのに、やけに涼しい。これは恐怖心から来ているものなのか、それとも本当に洞窟の気温が涼しいのか。それはわからない。そんなことを考えているうちに、行き止まりにぶち当たった。

「……イズモサマは?」

 思わず声に出してしまった。行き止まりには一面の壁だけがあり、呪いだの幽霊だのといったものは見当たらない。

「あれ? おっかしいなぁ……」

 真矢が辺りを見渡すが、やはりそれらしいものはない。

「霊感がないと見えへんとか?」

「そうなんかなぁ……愛里そう言っとった?」

 愛里はそのようなことを言っていただろうか。ぼーっとしていたからか、あまり記憶がない。

「……もしかして、この壁の先なんとちゃう?」

 千秋が壁を触ると、一気にそれが崩壊した。そして現れたのは、巫女服姿のまま朽ち果てている人間……人間、だったモノ? 何らかの原因で水分が足りず朽ち果てた、と見るのが正解だろう。見るだけでも禍々しい、そんな雰囲気を放っている。

「こ、これがイズモサマ!? めっちゃ怖いやん!」

 途端に大騒ぎし始めた真矢を横目に、千秋は

「ふうん……これでお札をとって逃げきれたら願いが叶うんか」

「え、ちょ、とる気なん!? 止めた方がええって!」

 うちの必死の静止も虚しく

「あ」

 ビリッ、という音をたててお札は破けた。うちの肘がお札にクリーンヒットしてしまったように見える。奇怪な音を立てて、イズモサマは動きだす。こうなった時、とる行動と言えば————

「逃げるで皆!」

 三人で走ってその場を離れる。幸いにも、イズモサマの動きは遅くこれなら逃げきれそうだ。一直線に走って洞窟から出ると、イズモサマの姿は見えなくなっていた。これは、成功したということでいいのだろうか。うちには願いなんてないけど。

「あー疲れた……もうこりごり……」

 洞窟を見ながら真矢が言う。

「せやな、こない疲れるとは……」

 それに千秋も賛同し、うちも「やから言ったやん」と返す。

「もうこれでイズモサマの話は終わり! 明日からもっと健全な話題しよ!」

「そやな」

「ほな、解散ってことで」

 うちらは散り散りになって各々の家へと帰った。その時も視線を感じたが、疲れ切っていたのでそれが何の視線なのかはわからなかった。

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イズモサマ 1
 うちの学校では、最近怖い噂が流れている。夏も終わりだというのに。うちは怖いのが苦手なので、極力その話題は避けていたのだが。「なぁなぁ、“イズモサマ“って知っとるー?」 昼休み早々、ついにこの時が来てしまった。問いかけられてしまうと逃げることは出来ない性質なので、「名前だけは」と返しておく。 話しかけてきた浅井愛里は、姫カットで黒髪をおろしているという女子らしい容姿だ。一方うちは、地毛の茶髪を一括りにしただけで飾り気がない。共通しているものと言われれば、制服くらいだ。「最近有名やで、華ならもっと興味示してくれるかと思ったわー」「うち、怖いの好きやないし」 愛里の残念そうな表情に、少しの罪悪感が芽生える。「イズモサマ、ってあれやろ。お札を剥がして魔物から逃げ切れたら願いが叶うっちゅーやつ」うちらの友人である三宮真矢の説明通りだ。真矢はセミロングの黒髪を弄びながら言う。「イズモサマは、悲運の死を遂げた巫女とか魔物とかその正体ははっきりせえへんけど、この世のものではないという点だけが共通しているって話やね」「へえ、随分賑わったはるなぁ。そない気にしはるなら見に行けばええのに」 これまた、友人である藤原千秋が割って入ってきた。「あぁ、悪いけどうちは行かれんのよ。夜は出歩いたら怒られてまうから」 愛里が残念そうに言うが、絶対そうは思っていないだろう。「ほなら、うちが愛里の代わりに見てきたろか? 千秋と華も一緒に」 真矢の提案は突飛なことが多い。千秋はまだしもうちまで巻き込まれたらたまったもんじゃない。「いや、うちは……」「うちは折角やし行かせて貰おうかなぁ」千秋まで乗り気だったら、二人の面倒を見るために行くしかなくなる。「……うちも行く」 その言葉を発した瞬間、何処からか視線を感じたのは気のせいだと思いたい。「なら、零時に御山の麓……イズモサマが封印されとるところで待ち合わせしよか」 真矢がどんどん予定を決めていくのを、うちは考えることをやめてぼーっと見ていた。 零時に御山の麓に行くと、「もう! 遅いで華」 と真矢に軽く怒られた。時間通りなのだが……。千秋はそんなうちらを気にする様子もなく「まぁまぁ。夜は長いんやし。早速、洞窟の中に入ってみよか」 懐中電灯片手に洞窟へ入っていってしまった。「ちょ、ちょっと待っ……うち心
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