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Novels by uemadoka

改稿版「君に対して束縛するつもりも関心を持つこともない」と言い放った次期宰相候補が朴念仁過ぎてお飾り妻が辛過ぎる

改稿版「君に対して束縛するつもりも関心を持つこともない」と言い放った次期宰相候補が朴念仁過ぎてお飾り妻が辛過ぎる

貧乏侯爵家のアーデンは結婚を諦め、王城で文官の仕事をして家に仕送りをする日々。  ある日陛下から、陛下の隠し子である次期宰相候補のルーカス•モルガン公爵と結婚をすれば、アーデンの実家が国にしている借金を棒引きにすると提案される。  アーデンは了承し、ふたりは結婚することになったが噂どおり冷酷・冷淡・冷静な次期宰相候補のルーカスは「君に対して束縛するつもりも関心を持つこともない」と言い放つ。  ルーカスは王都で仕事を続け、事実上お飾り妻のアーデンだけがモルガン公爵家の領地へひとりでやって来る。  一方、陛下から結婚休暇の取得を命令された次期宰相候補のルーカスも、渋々公爵家領地に帰ってくることになる。  
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Chapter: お飾り妻の涙
「お話があります」とアーデンがひとり執務室で仕事をしているとシェイラ嬢が入ってきた。 ルーカスとヴァージルは物産展に出品する商品の確認に領都エルガイムまで行っており不在だ。 きっとアーデンが1人になるタイミングを狙っていたのだろう。「どうされましたか?なにかご不便でも?」 アーデンはシェイラ嬢に気迫だけでも負けたくなかった。 最近、シェイラ嬢と旦那様はずっと一緒にいる。 アーデンはなんとなく悪い予感がしていたが、友好的にやり過ごそうと口角を上げた。「単刀直入に聞くわ。ルーカスお兄様と貴女、愛し合って結婚した訳ではないのでしょう。貴女、お兄様に愛されていないわよね?」 (やっぱりその話か)「私だけでなく旦那様にも関わってくるお話ですので、ご返答は旦那様のご意向も確認させてくださいね。ですから、いますぐに私がこのご質問にお応えすることは控えさせていただきます」 アーデンは顔を上げてシェイラ嬢の顔を見て、丁寧ながらもきっぱりと言い切った。 その態度が「蝶よ花よ」と育てられたシェイラ嬢には気に食わなかったのだろう。ムッとしたのが見て取れた。 本来ならもっと公爵令嬢であるシェイラを立てるような言い方をすれば良かったのかも知れない。 一瞬、アーデンも子供っぽくムキになり過ぎたと思ったが… 最近、シェイラ嬢は旦那様にべったりでアーデンは快く思っていなかったので、少し強く言い返すぐらい許してほしいと思った。 お飾り妻の可愛い嫉妬ぐらい…「貴女ね。誰に口を聞いているのかわかっているの。私は公爵令嬢よ」 可憐で愛くるしいシェイラ嬢なのに、いまは酷く顔を歪ませて、悪意そのままをアーデンに向けてきた。(なるほど。シェイラ嬢は、このタイプか) 学園に在学していた頃にもこの身分や容姿を傘に着るタイプの令嬢という生物はいた。 「私が法律よ」と思っている。 アーデンは執務机からわざとゆっくりと立ち上がった。 一瞬、シェイラ嬢が構えて、そして怯んだ。 殴られるとも思ったのか?「お言葉ですが、身分のお話をされるなら私は公爵夫人です。同等、いや私は「夫人」ですから「令嬢」という小娘よりは地位は上ですよ。お話は以上ですか?申し訳ありませんが、仕事が立て込んでおりますので、いまはシェイラ嬢のお茶のお相手も出来そうにありません」 (意訳すると「あなたのくだら
Last Updated: 2026-10-19
Chapter: 従兄弟と元婚約者候補
「アーデンはどこに行った?」「今日来られるお客様のお部屋に飾るお花をお庭で選ばれていますよ」 侍女長のステラが最後まで答える前にルーカスはいそいそとアーデンのいる庭の方に向かう。「あれあれまぁ、旦那様は独占欲丸出しですこと。奥様の傍を片時も離れたくないようですね」 ステラはルーカスの変化に驚く。 そして、不安気にひとりでこの領地にやってきたアーデンの姿を思い出しながら、庭先でルーカスとふたりで仲睦まじく会話をしている姿に目を細める。 最近のルーカスの変化は目を見張るものがある。 王都では「冷酷・冷淡・冷静の冷〇活用形のような氷の次期宰相候補」として有名だったルーカスが、アーデンを目の前にすると、まるで雪解けの季節が来たように表情豊かになり、笑みをこぼすのだ。「早く、本当のご夫婦になられたら良いのに」 ルーカスのことを本当の息子にように大事に育てていた前公爵夫妻のことを思うと、そう願わずにはいられなかった。 春の日差しが眩しい午後、アーデンの従兄弟のヴァージル・トンプソンと同行者として手紙に書いてあったシェイラ・アボット嬢が到着した。 「お初お目にかかります。アーデンの父方の従兄弟のヴァージル・トンプソンです。ご結婚おめでとうございます」 そう言って、用意してきた東方の国で作られた陶器の大きな皿をアーデンに結婚祝いだと言って渡した。「ヴァージル、これわたしがずっと欲しがっていたお皿じゃない!」「アーデンなら喜んでくれると思ったよ。ずっと欲しがっていたしね。だから今回、割れないように俺自身がずっと抱えて持ってきたんだぞ」「またそんな噓ばっかり言って。ヴァージルはいつも大袈裟なのよ」 ヴァージルはおどけた表情をしながら、いとも簡単にアーデンを笑顔にする。 そんなアーデンの様子を目の当たりにしたルーカスは面白くなかった。 ヴァージルはとても快活で柔軟性や協調性があり、社交的だ。職業柄なのか話題も豊富だ。ルーカスは自分とは正反対の男だと感じ取る。 そして、ヴァージルが同行者だと言って連れてきた女性にルーカスは覚えがあった。「アボット公爵家の次女のシェイラ嬢か?大きくなったな」「まあ、ルーカスお兄様、年頃の女性に大きくなったはありませんわ。私も18歳になりましたの。綺麗になったとおっしゃってください」 小柄で華奢で守ってあげたくなる
Last Updated: 2026-10-19
Chapter: お飾り妻と日常生活
「旦那様は、まーた今夜も仕事をしているんですか。どれだけここに仕事を持ち込んでいるのですか?」 屋敷の執務室にルーカスの返事をまたずにノックと同時に寝着姿のアーデンは入ってきたかと思うと、腰に手を当ててため息をついた。(旦那様。文官の習慣がしっかり身に染み付いていますよね) アーデンも心当たりがある。 どうしても文官とはというのは根っからの仕事好きが多くワーカホリックになり気味だ。「さっさと寝ますよ。ここでは王城と違って、『24時間働けますか?』と問われることはありませんから」「いや…でもこれだけでも仕上げて…」 アーデンは首を横に振り続ける。 こんなにも旦那様が寝ることを嫌がっているのは、仕事以外にもうひとつ理由があるのだ。 ルーカスとアーデンの夫婦未満の微妙な関係に気づいた侍女長のステラに問答無用で夫婦の寝室を一緒にされてしまったからだ。 間違いなく白い結婚であることはバレている。 ルーカスは、アーデンとひとつのベットで寝ることに相当抵抗があるようで、いつも夜中も仕事をしてベットに来ることはない。 寝る時は執務室のソファだ。 お飾り妻であるアーデンをこんなに警戒しているのは、婚姻届にサインをした日に陛下の要望だけには応えようと子作りの話をしたからなのだろう。 アーデンは大きくため息をついた。「安心してください。ぶ厚い寝着を着ていますから、旦那様を襲うことはありませんし、夫婦間のそのような行為も求めません」「お、襲う…とか」 ルーカスは少しだけ頬を染めて、彫像のように固まりながら綺麗な顔で冷たい冷気を放っているが、最近アーデンはこれに慣れてきた。 冷たい冷気を放っても、ルーカスは意外にもアーデンの話を最後まで聞いてくれる。 今夜もそうだ。冷たい冷気を放ちながら、ルーカスは無言で仕事でめいいっぱい広がった机の上の書類を渋々だが片付けだしている。 アーデンの意見を尊重してくれたりするところがあることがわかってきたのだ。(こういうところは可愛いのよね) この日の夜は初めて、ルーカスとアーデンは同じ寝室を共にしたが、もちろんそれはただ寝るだけだった。 しかし、これをきっかけに王都で働き詰めだったルーカスの不規則な生活が、アーデンによって規則正しい生活を送るように変えられていくことになった。「今年度の領地のこの予算はどうなっ
Last Updated: 2026-08-30
Chapter: 次期宰相候補と外出
 あの、「冷酷・冷淡・冷静の冷〇活用形のような氷の次期宰相候補」で有名な旦那様が、育ての親の前公爵夫妻が亡くなって以来、とうとうはじめて領地に帰ってきた。 彼が到着するとすぐに玄関でルーカス・モルガンを出迎えたアーデンは旦那様の姿は幻であると信じたかったが、涙を流しながら次々にルーカスに話しかけてはしゃぐロッド達の4人を見ていると、間違いなく本物の旦那様なのだと自覚する。 最後に会ったのはあの旦那様の執務室で、結婚届にサインをした日以来だ。 半年ぶりに見る旦那様は相変わらず、彫刻のように美しい。 「旦那様、お帰りなさいませ」 笑顔が引きつっているのがアーデンは自分でわかった。 「急で悪いが、結婚休暇を1か月取得することになった」(いっ…1か月もぉぉぉ。誰が取得を勧めたのよ) アーデンは叫びたくなったが、平静を装う。「そうですか。そういえば文官にはそんな制度がありましたね。承知しました。まだ、昼前ですが今日はいまからどう過ごされますか?」 屋敷を見渡した旦那様は、小さな声でなにかを呟いた。「…ない。あの花を描いた絵がない。ここにあった大きな書棚もない。そうだな。長く帰っていなかったことだし、まずは屋敷中を確認する」 そう言うと、ずかずかと歩いてひとつひとつの部屋の家具や調度品、絵画を確認していく。 執事のロッドが走るように旦那様を追いかけていく。わたしもそのあとを追いかける。「カーテンは全部替えたのだな。この家具は以前より輝いていないか?」 どこになにがあったのか、その優秀な記憶力で全部覚えていたのだろう。旦那様はアーデンが来てから修復した家具などを冷静に全部指摘してくる。「奥様が痛んでいたすべての家具の修復をされました。陽の当たるところにあった絵画などは変色を避けるために飾る場所を変更しております」 ロッドとアーデンでルーカスの問いかけにテキパキと答えていく。 本当はルーカスは、こんな粗探しをするようなことはしたくなかった。 アーデンとお茶をしながら、ゆっくりいままでの報告を聞いて親交を深めたかったが、ただ、アーデンを前にすると妙に緊張して胸がうるさく鳴るので、この胸の高鳴りを抑えるためにも思いついたのが、この屋敷の確認をすることだったのだ。 少しはアーデンと距離を取れると思ったのに、まさかついてくるとは。 緊張で無駄にいろ
Last Updated: 2026-07-20
Chapter: 次期宰相候補の思考
 アーデン・トンプソン嬢を婚姻届けにサインをしてもらうために自分の執務室に呼び出して、あっさりサインをしてもらって以来、わが妻となったトンプソン嬢には少しも会っていない。 結婚とはこういうものなのでいいのだろうか?周りに良いモデルがいないので、夫婦のことは全くわからない。 生母は早くに亡くなり、記憶にもない。 育ての親となった前モルガン公爵夫妻は本当に仲の良い夫婦だった。いつもどこに行くのも夫婦一緒だった。まさか、事故で天国まで一緒に逝ってしまうだなんて。 自分を慈しみ育ててくれた夫妻が同時に亡くなったことは、まだ学生だったルーカス・モルガンには辛過ぎる出来事だった。 今日は陛下を交えた会議だった。 予定していた時間よりも早く終わり、談笑がはじまる和やかな雰囲気となった。「そういえば、ルーカスは新婚だったな。アーデン嬢は元気にしておるか?」 宰相や陛下の側近などがいる中で、陛下が何気なく聞いてきた。「さあ、どうでしょう」 陛下の質問に俺はあっさり返答を返した。 (そんなこと、私が知りたい)「えっ?ルーカスは新婚だったの?いつ結婚したの?君、結婚休暇も取ってないよね?」 上司である宰相が目を丸くして聞いてきた。「はい。半年ほど前に結婚しましたが、結婚届を出しただけですので、誰もご存じではないかと」「はあぁ?君は半年前に結婚していたの?誰と?」 席についている皆の驚きの視線が一斉に私に向けられる。「アーデン嬢って、もしかして「独身女性最後の砦」のアーデン・トンプソン嬢?」 独身の同僚が興奮したかのように大きな声で私に問いかけくる。「「独身女性最後の砦」というのはなんでしょう?それは知らないですが、妻はアーデン・トンプソン嬢です」「まじかよー。少し前から、トンプソン嬢をお見かけしないと思っていたが、ルーカスが原因だったのか!」 何人かが「とうとう結婚してしまったんだ」と呟きながら、はぁとため息をつく。「?」 ルーカスには皆の反応の意味が全くわからない。「ルーカスはその顔だろう。だから、黙っているだけで女性が寄ってくるから興味はなかったと思うけど、トンプソン嬢は「独身女性最後の砦」と言われるぐらい、人気があったんだよ」 隣に座っていた他の同僚が声を抑えて、そっと教えてくれた。「たぶんあいつらは、トンプソン嬢のファンだな」
Last Updated: 2026-07-13
Chapter: お飾り妻は行脚する
 それからは領都エルガイムをはじめ、アーデンは領地を隅々まで訪れ、見て回ることになった。  「領主夫人、よくこんなことを考えつきましたよね」 中年オヤジのダン騎士団長は純粋に感心しているようで、移動中に何度も同じ言葉を繰り返す。 アーデンは荷馬車を操り、整備が遅れている街道をガタゴトと進んでいく。 荷馬車に乗っているのは、ダン騎士団長にオーウェン司祭、あと騎士がもう1人の4人だけの視察だ。 ダン騎士団長とアーデンのふたりは御者台に仲良く並んで座っているが、大きな体躯のダン騎士団長には少し狭いようだ。 荷台にはオーウェン司祭がひどい揺れにも関わらず、気持ち良さそうに惰眠を貪っている。 もうひとりの騎士は、オーウェン司祭の自由奔放ぶりに困り顔だ。 一行は領地にある全ての村々を訪れている最中だ。  アーデンとダン騎士団長のふたりは、騎士団の新たな商売である乗馬訓練を兼ねた運送業に向けての宣伝と運送網兼情報網の構築に向けての土台作りと交渉、オーウェン司祭は各村々にある教会の様子を見るらしく、無理矢理にくっついてきた。「乗馬の訓練を兼ねた運送業だと、一石二鳥だと思わない?だって、ただ馬を走らせているだけというのは、勿体ないと思うのよ」 アーデンは屈託のない笑顔で「わたし、貧乏性だから」と言いながらクスクス笑った。 村々に着くと、最初は村長たちから現場の聞き取りと提案をする。「なるほど。領都の騎士団の方々が、我々が作った農産物を領都エルガイムまで運んでくださるということですね。それはありがたいですね」 アーデンとダン騎士団長の話には、どの村も関心を持って聞いてくれる。 そして口を揃えて、同じ悩み事を口にする。「なにせ、街道があのひどい状態だろう。途中で荷馬車が壊れたり、農産物が傷んだりするのは当たり前。しかも、治安が悪いところでは賊に襲われたりするんだ。それをこれから、騎士団の人間が行き来することになれば、賊も手が出せないから治安が良くなるという期待も出来る。こちらとしては助かるが、しかし値段がどれぐらいか…」 アーデンはこの問いに胸を張って答える。 横にいるダン騎士団長も同じく、初めてアーデンに会った時のような威圧的な態度を出さないように努める。 「この事業は皆さまが納めてくださっている税金も投入する予定ですので、季節による変動
Last Updated: 2026-07-12
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