満天の星

満天の星

last updateLast Updated : 2025-05-07
By:  紅城真琴Updated just now
Language: Japanese
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竹浦 樹里亜   26歳 救命医 × 高橋 渚     26歳 救命医 出生の秘密を抱えながら医師として働く、樹里亜。 俺様で強気な救命医、渚。同い年で同僚カップルの恋の行方。

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星空の下
「ううー、気持ち悪い」 ムカムカと込み上げてくる吐き気がして、クラクラと目も回ってきた。 ヤバイなあ・・・目の前の景色がゆがんで見える。ドテッ 私は近くのベンチに倒れ込んでしまった。公園は自宅マンションのすぐ前。 もうちょっと頑張れば家なのに・・・もう動けない。今の時間は・・・多分、深夜11時くらい。 きっと、少し休んだら動けるようになるはず。 5分だけ、5分だけ休んで帰ろう。頭の中でそんなことを考えながら、私は持っていたバックを枕にベンチに横になった。 スーッと冷たい風が頬を撫で、公園の草の臭いもなんだか懐かしい。 *** 「樹里亜(ジュリア)、あんまり走らないで」 後ろの方から母の声がする。「だって、大樹(ダイキ)が」 前を走ってる兄を、私は必死に追いかけた。「いいから、戻っていらっしゃい」 妹を抱いた母が私に手招きする。「ほら、流れ星だよ」父の声がして、私も大樹も足を止めて空を見上げた。「うわー、キレーイ」声を上げて、両手を天に突き上げた。 まるで、手が届きそうな星々がそこにはあった。 子供の頃、夏休みはいつも軽井沢の別荘で過ごした。 元々体が丈夫ではなかった母の静養を兼ねて夏休みの始まりと共に別荘に行き、週末に父様がやってくる生活はお手伝いさんもいない家族だけの時間で、とても穏やかで幸せだった。普段は忙しい父も、来るといつも遊んでくれた。 海に行ったり、花火をしたり、天体観測もした。 都会よりも空が綺麗で見渡す限りの星空に、「いい加減に帰りますよ」と母の声がかかるまで、私達は空を見上げていた。 あの頃のまま時間が止まっていたら、どれだけ幸せだったろう。 私も、大樹も、妹の梨華も分け隔てなく遊んだ日々。 あの頃にはもう戻れない。 **
last updateLast Updated : 2025-05-01
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過保護な兄
午前9時。勤務先である竹浦総合病院の救急病棟。「樹里先生。顔色悪いですよ」仲良しの看護師、真衣ちゃんが顔を覗き込む。「へへへ。ちょっと風邪気味でね」何て笑って誤魔化した。私、竹浦樹里亜(タケウラ ジュリア)は駆け出しの救命医。東京の私立大学医学部を卒業後、研修医時代から数えてこの病院の勤務は3年目。「本当に大丈夫ですか?」師長まで、心配そうな顔をする。まあ、それもそのはず。今日は私がドクターヘリの担当なのだ。呼び出しがあればすぐに行かなくてはならないし、飛び立ってしまえば自分の体調不良なんて言っている暇はない。その時、『ドクターヘリ。エンジンスタート』無線機から声が響いた。 まずは屋上ヘリポートへ猛ダッシュ。すると多少の頭痛も走っているうちに気にならなくなる。あっという間に、フライトナースと私を乗せたヘリは飛び立った。すでに装備のチェックはすませているから、患者の状況を確認しながら処置の準備をする。出動要請は交通事故による外傷。山道の国道で車同士の正面衝突。周辺にヘリの降りられそうなところはなく、最寄りの小学校校庭に着陸して現場まで救急車が私達を運ぶ。今回の事故では重傷者1名。軽症者3名。あっという間に現場に到着し、とりあえず応急処置をしてから、軽症者は救急車で近くの病院へ搬送。ヘリには重傷者を乗せて帰ることとなった。次々に入ってくる現場からの情報を確認していくと、どうやら頭部を強く打っている様子だ。『頭部の外傷があるようです。CTの用意と脳外科にコールをお願いします』救急外来へ無線連絡をして、私達を乗せたヘリは病院に向かった。 *** 30分ほどでほぼ県内を横断し、ヘリは病院へ到着。「お疲れ様」脳外科医である私の兄、大樹が待っていてくれた。
last updateLast Updated : 2025-05-02
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俺様な彼氏
自宅に帰り、そのまま寝室のベットに直行。倒れ込むと同時にすぐに眠ってしまったお陰で、夕方には頭痛も発熱も治まった。 午後8時。真っ暗な部屋で、ゴソゴソと起き出して夕食を作る。とは言っても、魚を焼いたり、味噌汁を作ったり。時間があればサラダも作ろうかなと冷蔵庫を覗いていると、ガチャン。玄関が開いた。「ただいま」それは、とても不機嫌そうな声。「お帰りなさい」無理して明るく言ってみたのに、「ちょっと座って」私に視線を送ることもなく、キッチンを通り過ぎてリビングのソファーに座る。「でも今、夕食を作ってるし・・・」「いいから、座って」再び言われ、私は火を止めてリビングへ向かった。「体調は?」えっ、「う、うん。大丈夫」「熱は?」「37度だったかな。本当に大丈夫だから。心配かけてごめんね」素直に謝ったのに、ジーッと私を見つめる視線。「昨日はどこに泊まったの?」「・・・」シーンと静まりかえった部屋。「樹里?」「・・・ごめん」それしか言えない。「樹里っ」低い声で、強い口調。うわー、怒ってる。「樹里、言えよ」そう言われても・・・しばらく、無言が続いた。いくら何でも、公園のベンチで寝てしまったなんて言えない。言えるわけがない。「もういい」彼が携帯を手に立ち上がる。「誰にかけるの?」「脳外の竹浦先生」えええー、大樹?「馬鹿な事しないで。そんな事したら、あなたが困るのよ」私は叫んでしまった。大樹に同棲がバレたら私はすぐに実家に連れ戻されるし、大樹の逆鱗に触れたあなただってどんな目なわされるか、考えただけでも恐ろしい。「あなたは、私との生活が終わっての平気なの?
last updateLast Updated : 2025-05-03
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妹、梨華の家出 ①
「樹里亜、こっちよ」病院の社員食堂で、母が手を振る。はいはい。幾分駆け足になりながら、窓際の席に駆け寄った。「ごめん。お待たせ」急患で、約束の時間を20分ほど遅れてしまった。「いいのよ、仕事でしょ。日替わりのランチを頼んだけど、よかった?」「うん」すでに、テーブルにランチが並んでいる。母と食事なんて、久しぶり。「どうかしたの?」母が急に呼び出すなんて珍しい。「たまたまこっちの方に出かける用事があったから。それに、あなたの顔も久しく見てないし」ウッ、痛い一言。「なかなか帰れなくて、すみません」嫌みっぽく言ってしまった。「別に、仕事だから仕方ないけれど、たまには会いたいわ」おっとり型の母は私の言葉を気にする風もなく言うけれど、逆に私の心が痛んでしまう。私だって、母が嫌いなわけじゃない。でも色々と複雑な事情があるから、なかなか素直にはなれない。「で、家の方は変わりないの?」話の流れを変えてみようと何気なく聞いたのに、突然母が箸を置いた。「何、どうしたの?」何かあるんだなと感じた私は母を見た。「昨日、梨華が酔っ払って帰ってきてね、玄関で大騒ぎしたものだからお父さんが怒って・・・」「それで?」「お父さんは怒鳴り散らすし、梨華は玄関で泣き出すし・・・もう大変だったわ」ははは。思わず笑ってしまった。「笑い事じゃないのよ」「ごめんごめん」でも、いかにも梨華らしいな。「それで、梨華はどうしてるの?」「今日は二日酔いで仕事を休んだわ」はぁー。母さんが溜息をつく。妹の梨華は小さい頃から勉強嫌い、いかにも末っ子のわがまま娘。今春地元の大学を卒業して今はこの病院で父の秘書をしているのだが、新入社員のくせに体調不良を理由にしてちょくちょく欠勤しているらしい。「困ったもの
last updateLast Updated : 2025-05-04
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妹、梨華の家出 ②
「あんた、何してるのよ」その日の夕方、勤務を終えた私は自宅マンションの前で声を上げた。「お帰り」マンションの入り口に立つのは、妹の梨華。「お帰りじゃないわよ。ここで何してるの?」「お姉ちゃんを待っていたに決まってるでしょう」はああ?「梨華、あんた今日は会社休んだんでしょう?それなのに、フラフラ出歩いてどうするのよ」「よく知ってるわね」いかにもイヤそうな顔をした梨華がマンションに向かい、さも当然のように中へ入れろと言っている。「そんな、いきなり来られても・・・」困ったなあと、私は動きを止めた。しかし幸いというか、渚は今夜当直でいない。直接顔を合わせることはないのだが・・・「梨華、ちょっと片付けるから待ってなさい」マンションに入りエレベーターを降りたところで、梨華を止めた。しかし、「いやよ。何で待つの?やましいことでもあるとか?」意地悪な顔。「別に、ないわよ」としか言いようがないけれど・・・仕方ないなあ。ガチャッ。鍵を空けて玄関へ入り、速攻で渚の靴を下駄箱に入れ、駆け足でキッチンリビングをチェック。ヨシッ。大丈夫だろう。本当に、渚がきれい好きでよかった。希望的観測は往々にして覆されるとも知らず、私は梨華を部屋へと通した。「お姉ちゃんらしくない部屋ね」「そう?」シンプルで物が少なくて、私の好みだと思うけれど。「で、ここには誰と住んでるの?」「・・・」驚いて、絶句してしまった。無言のまま、「何でそう思うのよ?」って目で訴えた。「だって、歯ブラシ」そう言うと、浴室の方を指さす梨華。ああ、忘れてた。「一体、どんな人なの?お姉ちゃんが同棲しようと思うくらいだから素敵な人なんでしょうね」興味津々に聞いてくる。うー、一番知られてはいけない人に見
last updateLast Updated : 2025-05-05
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それぞれの個性 ①
翌日、病院に出勤した私は真っ直ぐに大樹の医局を訪ねた。トントン。「どうぞ」声を聞いてからドアを開ける。「おはよう」「ああ、おはよう。朝からどうした?」「あの・・・梨華のことだけど・・・」大樹の顔つきが変わった。ジーッと見つめられると、言葉が続かない。「梨華がどうした?」「実は昨日うちのマンションに来て、泊まっていったの」「何で連絡しないんだ」やはりそうきたか。「ごめん」「父さんも母さんも心配してたんだぞ。昨日のうちに一言言えよ」「だから、ごめん」何で、梨華のせいで私が叱られているんだろう。「まあ、さっき母さんから梨華が帰ってきたって連絡があったけどな」「はあぁ」私はポカンと口を空けてしまった。「あのね大樹。梨華をあまり叱らないで」つい言ってしまった。大樹が梨華や私を心配してくれているのはよく分かっている。ありがたいとも思っているけれど、少し過干渉ぎみ。「いい加減、お前も帰ってこないのか?」また・・・「ごめん」「ごめんばっかりだなあ」「・・・」大樹は肩をポンッと叩いて、「母さんも父さんももう若くはない。お前が嫁に行く前に、もう一度一緒に暮らしたいと思ってるんだ。分かってやれ」ごめん、兄さん。梨華みたいな妹だけでも大変なのに、私みたいな意固地な妹までいて、きっと苦労が絶えないよね。「ごめんなさい」「まあ、急いでもしょうがないから。ちゃんと考えてくれ」いつもの優しい顔になって、大樹が笑った。優しくて、厳しくて、頼れる存在。いつまでたっても、大樹はいい兄さんだ。 *** 考え事をしていた私は、廊下で渚にぶつかりそうになった。「おい、どうした?」「あ、ごめん」
last updateLast Updated : 2025-05-06
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それぞれの個性 ②
プププ プププ昼休みの時間にPHSが鳴った。「はい、救命科竹浦です」「大樹だけど」ああ。「お前、ちょっと時間ある?」「何?」普段から後ろめたい思いがある私は、つい身構えてしまう。「今どこ?」「食堂だけど・・・」「1人?」「うん」一体何なんだ。「行くから、待っててくれ」「えっ、いや。用事があるなら、私が医局へ行くわよ」「いいんだ。俺もちょうど昼食を摂るところだったから」「ああ、そう」と電話を切ったものの、大樹といると目立つのよね 「お待たせ」しばらくして、大樹が現れた。「何?どうしたの?」「うん、母さんの検査結果がよくないんだ」え?「そんなに悪いの?」「緊急ではないけれど、1度入院して治療した方がいいだろう」「そんなに・・・」母さんは再生不良貧血という血液の病気を持っている。重症ではないが、通院と投薬は続けなくてはならない。「ところで、お前は大丈夫なの?」チラッと、大樹が私を見る。うっ、「検査はしてる?」「う、うん」実は私も同じ病気。体調が悪くなると血小板の数値が落ちて、血が止まりにくくなる。「無理するなよ」「うん」そういえば、昔から私と母さんは同じタイミングで寝込むことがよくあった。さすが親子というか・・・血も繋がっていないのに。「帰れないんなら、せめて休みの日には顔を出せ。父さんも母さんも待ってるはずだから」「はい」長男として、兄として、大樹はみんなに気を遣う。いい人過ぎて疲れないんだろうかと、心配にもなる。大事に育ててもらった娘のくせに、私は何できないことが申し訳ない。 その日の午後、私はヘリの担当だった。依
last updateLast Updated : 2025-05-07
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