author-banner
黒瀬蓮
Author

Novels by 黒瀬蓮

銀の怪盗は真夜中に覚醒する

銀の怪盗は真夜中に覚醒する

俺の名前は黒川紫音。 ただの高校生――のはずだった。 身に覚えのない腕時計を手にしてから、俺の日常はズレ始める。 消える記憶。 狂い始める時間。 気づけば、俺は”怪盗シルバー”として夜を駆けていた。 俺が盗むのは金じゃない。 誰かが奪われた『大事な何か』だ。 三年前の抜け落ちた記憶。 いつしか、本気を出せなくなっていた俺。 シルバーとして動き始めてから、謎が少しずつ増えていく。 消えた記憶。 解けない違和感。 隠され続けた真実。 すべてが一本の線で繋がるとき、止まっていた俺の時間も動き始める。 困ってる奴は放っておけない。 だけど、この高揚感は、嫌いじゃない。 ……面倒くせぇけどな。
Read
Chapter: 第10話 意図しない変身
 教室を出た。 廊下には、まだ昼休みの賑やかな声が響いている。(……まずいな) この時間に外へ出るのは、さすがに目立つかもしれない。 階段を下りる。昇降口を抜け、校門を出る。 通学路を少し逸れたところで、「ちょっと君……」 声をかけられる。 振り返ると、そこには知らない男が、不審そうに俺を見ていた。「学校は?」「……」 一瞬だけ、言葉に詰まる。「今、授業中じゃないのか?」 視線が、まっすぐ向けられる。(このオッサン、警察か……?やべぇな)「……すんません」 それだけ言って、踵を返した。「ちょ、待ちなさい!」 声が飛ぶ。 その場から逃げ出すように走り出す。(クソッ……!) 心臓が早くなる。視界が揺れる。 曲がり角を曲がり、そのまま、全力で走る。「……はぁっ」 息が上がる。「……ログチー!」 走りながら、腕時計に向かって小声で叫ぶ。「おい、起きろ!」 返事はない。「おいって……!」「……んー?」 間の抜けた声。「おはよー……シルバー」「今それどころじゃねぇんだよ!」 苛立ちが混ざる。「状況見ろ、追われてんだよ!」「えー……?」 寝ぼけたままの声。 その瞬間—— 視界が、揺れた。「……っ?」 身体の感覚が、変わる。 白いジャケット、翻るマント、腰元で、銀のチェーンが揺れる。「は?」 足が止まりかける。「ちょっ……待て!」 周囲の視線が、一気に集まる。「え、なにあれ?」「コスプレ?」「動画撮ろ」 周囲のざわめき。一斉にスマホを向けられる。「……っ!」 反射的にマントで顔を隠し、そのまま走り抜ける。(最悪だ……!) そのまま、人の間をすり抜けるように、視線を振り切り、路地裏に飛び込む。壁にもたれ、荒く息を吐いた。「……はぁっはぁっ」 外のざわめきが、遠くに聞こえる。「お前……!」 腕にしがみついたまま、ウトウトしているログチーに話しかける。「なんで勝手に発動してんだよ!」「え?え?」 ログチーが、ようやく状況を理解し始める。「ちょ、ちょっと待って!これオレじゃないって!」「はぁ!?」「ほんとだって!なんか勝手に——」「いいから戻せ!」 食い気味に言う。「今すぐだ!」「え、えっと……リバート?」「それだ!」「……Revert」 ——何も起
Last Updated: 2026-07-06
Chapter: 第9話 そこにあるはずのないもの
朝。目覚ましの音が鳴り響いている。 身体が重い。眠ったはずなのに、疲れが残っている。うるさい、と思いながら手探りで止める。  時刻は6時55分「全然寝れてねぇな……」 ベッドでそのまま横になりながら、天井を見つめる。昨夜のことが、まだ鮮明に頭の中に残っている。 黒いカード。 触れたときの熱。 鼓動のような感覚。「……夢、じゃないよな?」 小さく呟く。 上体を起こした時、視線がベッドの下に落ちた。黒いカードが、そこにあった。 ゾワッ。 背筋が凍りつくような感覚。そっと手を伸ばし、カードを手に取る。 冷たい。 何の変哲もない、ただのカード。 昨日のような熱は、ない。「……だよな」 軽く息を吐き、カードを机の上に置いた。 ――本当に、ただのカードなんだろうか。 考えを振り払うように立ち上がり、制服に着替えて部屋を出た。◻︎◻︎◻︎「おはよう」 キッチンから母さんの声。「……はよ」 席に座りながら、ふと違和感に気づく。いつも聞こえるはずの湯飲みの音がない。「あれ?……じいちゃんは?」 母さんが振り返る。「珍しく寝てるのよ。いつも早いのにねー」 軽い調子で母さんは答えた。「……まだ寝てるのか」 少し考えてから、立ち上がる。 廊下に出て、じいちゃんの部屋の前で足を止めた。「……じいちゃん?」 返事はない。 ドアを少しだけ開ける。布団の中で、じいちゃんは眠っていた。静かな寝息が聞こえる。「……寝てる、だけか」 一瞬、声をかけて起こそうかと思ったが、やっぱりやめた。静かにドアを閉め、そのまま家を出た。◻︎◻︎◻︎ 通学路—— 朝の空気が冷たい。歩きながら、ふとポケットに手を入れる。何もない。 そう思ったその時、指先に何かが触れる。「……は?」 取り出すと、黒いカード。一瞬、思考が止まる。「……なんでだよ」 机に置いたはずだ。確かに、置いた。 カードをじっと見つめる。 何も変わらない。ただのカードのはずなのに。 次の瞬間、苛立ちが込み上げる。「クソッ、わけわかんねー!」 思わず吐き捨てる。「ログチー、説明しろよ」 返事はない。「……おい」 沈黙。「……寝てんのかよ」 小さくため息をつく。カードをポケットに戻した。◻︎◻︎◻︎教室。「よ、紫音」 大地が手を上げる。
Last Updated: 2026-07-06
Chapter: 第8話 謎のカード
「ちょっと!シルバー!」 「シルバーってばー!!聞いてる?」 耳元で叫ばれて、ハッとする。 目の前には、ログチー。 ぼやけていた意識が、だんだんクリアになる。 「……ん?」 視線を下に向ける。 白いジャケット。夜でもやけに目立つ。ふと、背中側で布がわずかに揺れた。 「……マント?」 思わず、眉をしかめる。 「やっぱり似合うねー!」 ログチーが、けらけらと笑う。 「ちょい盛ってみたー」 「盛るな!」 軽く叩く。 まだ違和感が抜けないまま、さらに視線を下げる。体を動かすたび、銀のチェーンがかすかに鳴る。 「……なんなんだよ、これ」 額に手をやり、やれやれと小さく息を吐く。 (……誰も見てねぇ、よな?) すぐに思考を切り替える。 「……なぁ」 「ん?」 俺は、ログチーを見て呟く。 「……さっきのやつさ、一体どれぐらい戻れるんだ?」 「んー」 ログチーは、手を口元に当てながら、 「……今は1日から、2日くらいかな」 手の指先に、少し力が入る。 「……今は?」 ログチーは、にやっと笑う。 「まだまだってこと。ただし能力が開花すれば……。まあ、今は気にしないで」 その後、ログチーの声が少しだけ落ちる。 「でも、これからどうなるかは、キミ次第だからさ……。上手く言えないけど」 「……なんだそれ」 続けてログチーに尋ねる。 「……なぁ」 「例えば……さ」 「……三年前、とかに戻ることもできるのか?」 無意識に手を力が入る。 「ん?」 ログチーが、きょとんとする。 「三年前?」 「……出来るのかっ?」 自分でも驚くほど声が強張っていた。 思わず、ログチーを力強く掴む。 「むぎゅっ」 「ちょっ——!」 「あ、わりぃ」 すぐに手を離す。 ログチーは、一瞬だけ真顔になる。 「……それは、無理だよ」 「さすがに、そこまでは戻れない……」 「……だよな」 ため息混じりに呟いた。 ログチーが首を傾げる。 「……三年前に何かあるの?」 「……記憶。いや……」 「ただ……聞いてみただけだ」 「ふーん?」 どこか納得していない声。 俺は、ログチーの言葉を遮るように、 「……さっきのやつ」 「もう一回やってみていいか?」 「えっ
Last Updated: 2026-07-06
Chapter: 第7話 白い影の正体
眠れない……。目を閉じても、落ち着かない。 心臓が、やけにうるさい。さっきまでの出来事が、頭から離れない。 「……はぁ」 小さく息を吐く。 天井を見つめたまま、視線だけを動かす。枕元に置いた腕時計に、目をやる。 「……なんなんだよ」 苛立ちを抑えるように、首の後ろを掻く 「ご主人、眠れないの?」 俺は、無言のまま、背を向ける。 「ご主人ってばー!」 少し苛立ちながら言葉を返す。 「……いい加減、その呼び方やめてくんね?」 「んー?」 「……その、ご主人って呼び方」 「なんか、むず痒い」 「んー?」 「じゃあ、やっぱりシルバー?」 「ちげぇわ!」 ため息が漏れる。 「……もう、好きに呼べよ」 「うん!シルバー!やっぱりこっちのがしっくりくるよね」 嬉しそうな声が返ってくる。 「……」 天井を見つめたまま、俺はは小さく息を吐いた。 「……で?」 「ん?」 「さっきの話」 「覚醒って、一体なんなんだよ」 「んー?やっばり気になる?」 「は?当たり前だろ?」 「映画でもあるまいし、はい!覚醒しましたよーって雑な説明されてだな、はいわかりました!納得ー!って言う奴がどこにいる?」 「いるなら、さっさと連れて来い!ここに!」 苛立ちをそのまま言葉に出す。 ログチーが、クスッと笑う。 「キミは相変わらず短気だなぁ」 「相変わらず?」 少し考えてログチーは言う。 「まだ記憶が気になるけど……ま、いっか!」 「体感した方が早いよね?」 「……は?」 言ってることに理解が追いつかず、眉をひそめる。 「ただ、あまりやりすぎちゃうと危険だからちょっとだけ体感してみる?」 「体感って?」 「シルバー、目を閉じて!」 「……なんだよ、突然」 「いいから!頭にイメージしてみて」 「戻りたい時間とか、その日のイメージ、感じたこととか」 「……」 時間とズレ。頭の奥に、あの違和感がよみがえる。うまく言葉にはできない。 でも、あの『ズレた感じ』それを、なぞりながら、俺は目を閉じた。 その瞬間—— 視界が、ぐらりと揺れた。 足元が、不安定になる。身体が、ふわっと浮くような感覚。画面がホワイトアウトし
Last Updated: 2026-07-06
Chapter: 第6話 目の前の、変な奴
「……起きた?いや、お前とは初対面だ!てか俺の名前はシルバーじゃない!!」 夢にしては妙にリアルだ。感覚もあるし……。 ただ、目の前に、『それ』がいる。 手のひらサイズの、黒紫の小さな体。羽根のような耳に、矢印みたいな尻尾。丸い目が、こちらをじっと見ている。 俺は気づくと無意識に手を伸ばしていた。指先でそっと触れる。 (やわらかい……) そのまま、なぞる。小さな体が、ぴくっと揺れた。 「ちょ、くすぐったいって!」 「……っ!?」 反射的に手を離す。 ぽとっ、と落ちる。 「きゅー……」 足元で、小さく丸まる。 俺は少し眉をひそめながら呟いた。 「……本物だったのか」 しゃがみ込んで、手を差し伸べる。 「……わりぃ」 そいつはもぞもぞと俺の身体を登ってくる。俺は、訝しげにそいつを見つめた。 「……問題なさそうだな」 「落とすなんてひどいよ、ご主人!」 そいつは、頬を膨らませてバタバタと、短い手足を動かしている。 「……は?」 「落としたのは悪かったけど、ご主人って何のことだよ?」 そいつが、肩をすくめながら、俺をまっすぐに見つめる。 「そんなの……キミに決まってるじゃないか!」 「……は?」 俺は軽く眉をひそめて、尋ねる。 「てか、何なんだよお前は……」 そいつが、一瞬咳払いをして、目をきらきらさせた。 「オレは、ログチー!キミの相棒さ!」 その瞬間―― 俺の顔から表情が消える。 「……帰れ」 「それはないよ〜、ご主人!」 少し拗ねたように、ぴょんと跳ねる。 「呼んだのはご主人だろ!」 「呼んでねぇし!」 「呼んだって!」 「シルバーって言っただろ!ご主人の呼び名!」 「……っ!?」 言葉が詰まる。確かに言った覚えがある。正直なところ強制的に言わされたが正しいけど。 ログチーが、得意げに言う。 「ついに……覚醒したね」 「待て!この状況!全然追いついてないんだけど?」 「え?そうなの?頭悪すぎない?」 「は?いきなり現れて、はいそうですか?って納得するのかよ!そっちのがおかしいだろ!」 「てか、覚醒ってなんなんだよ」 「まーそれは、おいおいわかるよ」 「お前雑すぎんだろっ!」
Last Updated: 2026-07-06
Chapter: 第5話 頭の中に、響く声
みんなの笑い声が、遠く感じる。 大地も、ノブも、ナオも、さっきの話で、まだ盛り上がっている。 「紫音、どうした?」 いつもと様子が違うことに気づいたのか、大地が首を傾げながら聞いてくる。 「さっきから会話に入ってこないよなぁ?」 ナオも、続けて尋ねてきた。 「……そんなこと、ないだろ」 ノブが顔を覗き込む。 「てかお前、顔色悪くね?」 「腹でも壊したんか?まさか下痢か?」 ナオが続ける。 「イケメンが下痢とか台無しだぞ」 「そこフォローしてやれよ」 ノブが軽く笑う。 「てかさ——」 ノブがニヤっとする。 「帰りゲーセン行かね?」 「いいねー!」 ナオが乗る。 「……わりぃ、今日は帰るわ」 席を立つ。 「あれ?もう帰んのか?」 大地が、意外そうに眉を上げる。 「まあ、……ちょっと用事」 「下痢がヤバいんだとさ」 ノブが茶化す。 「ちげぇから!」 大地は少し笑いながら、 「俺、これから部活だからさ」 「ああ」 「また明日な!」 「ん…」 大地はそのまま体育館へ向かって行く。 ノブとナオも、それぞれ帰る準備を始めた。 教室を出て、廊下を歩く。人の声が、少しずつ遠ざかっていく。 「……」 胸の奥に、何かが引っかかって、取れない感覚。 (……なんで、こんなに気になるんだよ) 足を止める。 考えようとして、やめる。 どんなに考えても、答えは出ず、モヤモヤ感を残したまま家に帰った。 ◻︎◻︎◻︎ 夕方、自宅。靴を脱ぎ、リビングに入る。 「おかえり」 母さんの声。 「……ただいま」 短く返す。 母さんが、首を傾げながら、俺に尋ねる。 「どうしたの?なんか元気ないわね」 「大地くんと喧嘩でもしたの?」 「……してねぇよ」 咄嗟に返す。苛立ちが出たのか、キツく返してしまう。 (母さんが悪いわけじゃないのに……) 母さんは、それ以上、何も聞かなかった。 そのまま、少し俺の様子を見て、キッチンへ戻っていった。 俺は無言のまま、ただそこに座っていた。 夜―― 風呂を出て、タオルで髪を拭きながら、自分の部屋に戻り、そのままドアを閉めた。 ドアにもたれかかったまま、目を瞑る。 どうしても今日の出来事が、頭から離れな
Last Updated: 2026-07-06
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status