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chapter57

Author: 水沼早紀
last update Last Updated: 2025-07-15 09:13:59

「なにって、明日会議で使う資料だけど?」

「……沙織って、こんな難しそうな企画担当してるんだね」

「そうよ。まあ営業部が協力してくれてるから、大分楽だけどね」

「ふーん……そうなんだ」

 これを読むだけで、頭が痛くなりそうだ。

「後は契約書の作成と、サンプルの作成するだけなんだけどね、これがなかなか難しくてね。うまくいかないのよ」

「そっか。……色々と大変なんだね」

「本当よね。今日も残業しなきゃだし」

「それはお気の毒ね。頑張って」

 沙織は私に「ありがとう。頑張るわ。 あ、これコピーしたら机の上置いといてくれる?」と言ってくる。

「うん、わかった」

 沙織はどこかへと消えていった。

「……ねえ、英二」

 私は英二に話しかける。

「はい?」

「沙織ってなんか変じゃない?」

 私がそう聞くと、英二は「え?なんでですか?」と不思議な顔をする。

「いや、なんとなく様子がおかしいような気がしてさ……」

「そうですかね?いつも通りだと思いますよ?」

「……うーん。やっぱ気のせいなのかな」

 でも私には、沙織が考えてることなんてわかるはずもなくて……。

 沙織が今どんな状況におかされているのかも、気付いていなかった……。

「……でも言われてみれば、そうっすよね」

「え?」

 英二は紙パックのオレンジジュースを飲みながら「なんか沙織先輩、この頃変ですよね?」と私を見る。

「やっぱり?英二もやっぱりそう思う?」

「はい、今日はなんかいつもより元気ないっすよね。いつもはコーヒーを飲んでるのに、今日は全然飲んでなかったっすよ?」

「えっ?本当に?」

「はい」

 コーヒーが大好きな沙織がコーヒーを飲まないなんて、やっぱりおかしい。

 そういえばさっき、お昼もまともに食べてなかったって、同僚の女の子が言ってたな。

 本当に、どうしたんだろう? なんか悩みでも、あるのかな……?

 それともストレスで、体調を崩してるとかなのかな?

 うーん……それはなんか、心配だな。

* * *

「あれ、沙織は?」

 翌日の午前中、営業から戻った私は、沙織の姿がないことに気付いた。

「あ、おかえりなさい、先輩。お疲れ様です」

「ねえ、英二?」

「はい?」

 私は英二に「沙織、出勤してない?」と聞くと、英二は「はい。今日は朝から姿見てないですよ?」と言われた。

「そうなの?」

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