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【第2部】 第7話 親友も、やっぱり相変わらず②

last update Last Updated: 2025-09-05 10:01:16

 ちょっとしょんぼりしながら、なんとなくヘンリーのお弁当を覗く。

 え?

 ヘンリーのお弁当も、龍が作ったものではないか!

 まさかの事実に、私は目を見開き、お弁当とヘンリーの顔を交互に見比べる。

 あんなにいつも喧嘩してるのに……作ってあげたんだ。

 っていうか、いつ渡してたの?

 私の知らないうちに――

 二人の関係に、ちょっと衝撃を受けた。

 ぽかんとしていると、今度は貴子が私のお弁当を覗き込んできた。

「いいなあ、龍さんのお弁当〜! 私も一口っと!」

 そう言うと、唐揚げをひょいっと摘み上げる。

「あっ! 何すんのよ!」

 私の怒りは空振り。

 唐揚げは貴子の口の中へ消えた。

「おいひぃ〜。これ、冷凍のじゃないよね?

 龍さん、朝から作ってんの?

 超手間暇かけてさあ……愛だねえ」

 貴子は、幸せそうに目を細めながら、ぶつぶつとつぶやいている。

 私はふくれっ面で彼女を睨んだ。

 ……龍の唐揚げ、好物なのに!

「はい、僕のあげるよ」

 ヘンリーが、そっと自分のお弁当から唐揚げを取り出し、私のお弁当の中に入れてくれる。

「え、いいよ! ヘンリーが食べなよ」

 慌てて返そうとすると、ヘンリーはにっこりと最上級の微笑みを向けてきた。

「ううん、いいんだ。

 僕の幸せは、流華の喜ぶ顔を見ることだから。

 それだけで、もうお腹いっぱいだよ」

 その笑顔に、思わずキュンとした。

 唐揚げとヘンリーの顔を交互に見つめ、ため息をつく。

「……ヘンリー、ありがとう」

 胸の奥がじんわりと熱くなる。

 久しぶりに感じる、彼の優しさとぬくもりに、目頭が熱くなってしまう。

 こういうのも、懐かしい……。

 やっぱり、ヘンリーは優しいね。

 私が微笑むと、ヘンリーも嬉しそうに頷いてくれる。

「う……ここにも愛がっ!」

 貴子が胸を

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