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愛は永遠に、終わりなき物語

Author: 吟色
last update Last Updated: 2025-10-13 07:00:00

それから十年が過ぎた。

私とカイルは、静かな日々を過ごしていた。愛の学校は今も繁栄し、毎年多くの卒業生を送り出している。

「リア、手紙が届いてるぞ」

カイルが部屋に入ってきた。

「ルナから?」

「ああ」

私は嬉しくなって、手紙を開いた。

『ママ、パパへ

お元気ですか? 私は相変わらず、世界中を旅しています。

最近、素晴らしいことがありました。南の大陸で、戦争が終わったんです。二つの国が、何十年も争っていたのに。

私たちが、両国の間に入って、愛の大切さを伝えました。最初は誰も聞いてくれなかったけど、諦めませんでした。

そしたら、ある日、両国の王様が話し合いのテーブルについてくれたんです。そして、和平条約が結ばれました。

ママ、これってすごいことですよね? 愛が、戦争を止めたんです。

これも、ママとパパが教えてくれたことのおかげです。ありがとう。

近いうちに、帰ります。会いたい人がいるの。紹介したい人が。

愛を込めて

ルナ』

「戦争を止めたのか」

カイルが驚いた。

「すごいな、ルナは」

「本当ね」

私も誇らしかった。

「私たちを超えていった」

「でも、会いたい人って?」

「さあ」

私は首をかしげた。

「でも、紹介したいって言ってるから、大切な人なのでしょうね」

数週間後、ルナが帰ってきた。

そして、一人の青年を連れていた。

「ママ、パパ、紹介します」

ルナが嬉しそうに言った。

「エリック。私の……恋人です」

恋人。娘に、恋人ができた。

「初めまして」

エリックが礼儀正しくお辞儀をした。

「ルナさんには、いつもお世話になっています」

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