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第883話

Author: レイシ大好き
日向はこくりと頷いた。

紗雪に見つめられ、今回はもう何も隠さなかった。

「はっきりした証拠は見つからなかったけど......でも、彼と緒莉のやり取りがちょっと妙なんだ」

この言葉を聞いて、京弥の視線が思わず何度も日向に向かう。

その一言で、完全に好奇心を刺激されたのだ。

清那はもう我慢できなかった。

「ちょっと、もったいぶってないで早く言ってよ!」

彼女は焦って、スマホの周りをぐるぐる回っていた。

でも、何が必要で何が不要かは分かっていない。

そんな様子に、日向は心の中で苦笑した。

どうして今まで気づかなかったんだろう。

清那って、こんなに可愛いんだな。

うるさいように見えて、実はとても細やかで。

その一面だけでも、十分に惹かれてしまう。

思わず、彼は手を伸ばし、優しく彼女の柔らかい髪をくしゃりと撫でた。

「ちゃんと見せるから。ほら、落ち着いて」

その瞬間、清那は呆然と立ち尽くした。

目を丸くして顔を上げると、同じく気まずそうに固まっている日向の姿があった。

日向は、彼女の驚いた顔を見た途端、頭が真っ白になる。

しまった、なんでこんなことしたんだ!?

自制するべきだったのに。

けれど清那は、ほんの少し気まずそうにしただけで、すぐに平然を装った。

軽く咳払いをして、視線を逸らす。

「......それより、早く教えてよ」

その言葉に、日向は我に返り、慌てて頷いた。

紗雪と京弥は顔を見合わせる。

ただ一度目を合わせただけで、お互いの気持ちが分かった。

特に紗雪は、本気で気になって仕方がなかった。

清那と日向、この二人ってもしかして......?

今まで全然気づかなかったけど。

考えれば考えるほど、もし二人が一緒になったら、自分はまるで仲人みたいじゃないか。

そう思うと、思わず顔にからかうような笑みが浮かんでしまう。

京弥は、そんな妻の好奇と期待に満ちた顔を見て、肩の力が抜ける。

口元に自然と笑みが広がった。

自分の妻が日向に対して何の未練もないと分かれば、それだけで気分が良くなる。

日向が誰と結婚しようが、紗雪にとってはどうでもいいことなんだ。

そう確信できて、ようやく完全に安心した。

紗雪は好奇心はあるけれど、日向との距離感をわきまえていた。

清那が何も言わなくても、見ていれば分かる。

仮に二
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